北京冬季五輪金メダル最有力候補の平野歩夢
2月の北京冬季五輪は日本スノーボード界が史上初の金メダルを射程圏に捉えている。その中でも必見といえるのは、男子ハーフパイプ(HP)で勝負を分ける新たな超大技、斜め軸に縦3回転、横4回転の「トリプルコーク1440」だろう。
スケートボードでも東京五輪に出場した23歳のパイオニア、平野歩夢(TOKIOインカラミ)が2021年12月に米国で行われた招待大会、デュー・ツアーで実戦で世界初成功。3度目の冬季五輪を金メダル最有力候補として迎える「二刀流」の第一人者は新たな領域への扉を開いた。
ダブルコークとトリプルコークの違い
スノボHPのエアでは横回転に縦2回転を加える技の種類「ダブルコーク」(縦2回転)が知られていたが、「トリプルコーク」(縦3回転)とは縦にさらに1回転する超大技。ダブルコークよりも高さが必要で当然着地もより難しくなる。「1440」とは横の回転数で「360度×4=1440」で4回転を意味する。「1080」なら3回転、「720」なら2回転ということだ。
回転の方向の呼び方もあり、進行方向に対して腹側から回る正スタンスは「フロントサイド」、逆スタンスは「キャブ」。背中側から回る正スタンスは「バックサイド」、逆スタンスは「スイッチバックサイド」と呼ぶ。
2018年平昌冬季五輪では、レジェンドのショーン・ホワイト(米国)と平野歩夢が縦2回転、横4回転する「ダブルコーク1440」と、逆スタンスの「キャブダブルコーク1440」を連続で決めて、歴史に残る一騎打ちを演じた。
採点ルール、独自性や正確性も重要
スノーボードは1998年長野冬季五輪から採用され、HPは半円筒形のコースで最も低い「ボトム」から壁の一番高い飛び出し口「リップ」まで両サイドの高さ約7mの壁を交互に5~6回飛び、繰り出される技の難易度や表現力で競い合う。
採点方法はジャンプの高さや難易度、着地の姿勢、技の構成などが評価対象となる。スケートボードと同様に、ボード(板)をつかむ「グラブ」と呼ばれる動作も大事で、どこをどれぐらいつかむかで得点が違ってくる。
過去の五輪をみると、回転数や技のスタイル(独自性)だけでなく、正確性も重要。ワールドカップ(W杯)の実績などを考慮した「顔」も影響するといわれている。
世界王者、戸塚優斗らも超大技に挑戦
昨季無敗で世界王者になった20歳の戸塚優斗(ヨネックス)も超大技に挑戦する。スケボー挑戦で平野歩夢が不在だった3シーズンの間に大躍進し、昨季は世界選手権や冬季Xゲームなどタイトルを総なめ。回転技の多彩さは群を抜く。戸塚は「トリプルコーク1440」を主要大会でこそ成功していないが、海外遠征では両スタンスで決めている。
成長株の平野流佳(太成学院大)も失敗が大けがにつながる可能性が高い雪上での挑戦には慎重だったが、覚悟を決めて虎視眈々と大技を磨いている。
2015、17、19年と世界選手権3連覇のスコット・ジェームズ(オーストラリア)もひそかに練習しているとの情報も出ている。中国の本番会場は、大きさや空中へ飛び出す斜度などが大技に適した形状とされ、大一番で誰が成功させるか。新時代の華麗なる技の打ち合いに注目が集まりそうだ。
【関連記事】
・鬼塚雅、戸塚優斗ら北京冬季五輪スノーボードのメダル候補たち、「横乗り系」旋風再び?
・スキー・モーグルのルールと歴史、堀島行真と川村あんりが北京五輪でメダル狙う
・スピードスケート高木美帆が5種目出場の北京冬季五輪で狙う女子初の大偉業