34歳の名キッカー、今季限りで引退
ラグビーの元日本代表FB五郎丸歩(ヤマハ発動機)が来年1月に開幕する今季のトップリーグ(TL)を最後に現役を引退することになった。自身のインスタグラムでも「今シーズンを最後に引退を決意しました。ラストシーズン自分らしく!!」と報告している。
2015年ワールドカップ(W杯)イングランド大会初戦の南アフリカ戦で1トライを含む24得点をマークし、世界を驚かせた歴史的勝利の立役者。キックの際に両手を体の前で合わせる独特の「五郎丸ポーズ」でも国内外で大フィーバーを巻き起こし、一躍時の人となった。
日本代表通算711得点は歴代最多。日本が史上初の8強入りを果たした昨年のW杯日本大会では代表に選ばれなかったが、34歳でジャージーを脱ぐ名キッカーの偉大な足跡は輝かしいデータが示している。
2位の広瀬佳司に大差の1位
福岡県出身で3歳からラグビーを始め、佐賀工高―早大を経てヤマハ発動機に入団。185センチ、100キロの大型FBとして3年連続花園8強の高校時代から注目され、早大では3度の全国大学選手権優勝に貢献した。
日本代表では初キャップの2005年4月のウルグアイ戦から通算57キャップ。W杯イングランド大会では全4試合に先発し、歴史的3勝に導いた。
「ブライトンの奇跡」と呼ばれた大金星を挙げた南アフリカ戦はコンバージョンキックを3本中2本、PGは6本中5本成功させ、1トライを含めて24得点。W杯1大会58得点も歴代1位の輝かしい成績だ。
正確なキックを武器に積み重ねた日本代表通算711得点は、422得点で2位の広瀬佳司(元トヨタ自動車)に大差を付けており、その数字の大きさが歴代トップの価値を物語る。
トップリーグでも歴代トップの1254得点
TLでも2011年に初の得点王となり、通算1254得点は歴代トップ。2位はニコラス・ライアン(元サントリー)で1188得点だ。
2020年2月のNTTドコモ戦でマークした11本のコンバージョンキックはTLで1試合最多タイ記録。2010年9月のNEC戦で記録した1試合最多8PGも歴代1位タイだ。
五郎丸ポーズの原点はウィルキンソン氏
流行語大賞にノミネートされて銅像にもなり、一躍有名になった「五郎丸ポーズ」の原点は、2014年に引退した元イングランド代表のキックの名手、SOジョニー・ウィルキンソン氏。2003年W杯決勝で母国を初の王者に導くDGを決めた「世界一の司令塔」に影響を受けている。憧れのスターが来日した際、ラグビー教室でその一挙一投足に注目した。
利き足に左右の違いはあるが、そこから自らの「代名詞」といわれるまで改良を重ねたという。勝負を決める重大な局面でもキックの安定性を高めるため、日本代表ではメンタル・コーチと共に蹴るまでの動作全てを一定のルーティンとして覚え込ませた。キックの精度だけでなく、その飛距離も五郎丸ならではの武器だった。
ラストシーズンは悲願のチーム初優勝へ
輝きを放ったW杯後は海外に活躍の場を求め、2016年2月からはスーパーラグビーのレッズ(オーストラリア)でプレー。2016年6月にはフランス1部リーグの強豪トゥーロンに移籍し、その翌年にヤマハ発動機に復帰した。
新型コロナウイルスの影響で予定通りTLの全日程が開催されるか不透明な状況を踏まえ、開幕前に引退の意向を明らかにした。昨季は予定の15試合を消化できず、不完全燃焼で思い残すこともあったのだろう。
来年1月16日の開幕戦は神戸製鋼とのカードが組まれている。泣いても笑っても最後のシーズン。人気と実力を兼ね備えた五郎丸にはチームを悲願の初優勝に導くという大きな仕事が最後に残っている。
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