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ラグビー日本代表はなぜHC決定に時間を要したのか ジョセフ氏続投、体制には課題も

2019 11/22 11:00藤井一
ラグビー日本代表HC ジェイミー・ジョセフⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

正式決定は11月16日 期間は4年

すでに多くのメディアで報道されているが、ジェイミー・ジョセフ日本代表HCの続投が決まった。11月16日付けで決定と日本協会から発表。期間は2020年1月1日~2023年12月31日までだ。

ジョセフHCの続投は間違いないと言われながら、10月22日になって突然、まだ正式にオファーはしていないことが表面化、雰囲気は一転「続投暗雲か!?」に変わり、日本協会は10月24日、ヘッドコーチ選考委員会で正式にジョセフ氏に続投要請を決定、11月16日、ようやく決まったというわけだ。

アイルランドとスコットランドを撃破し日本を全勝でベスト8に導いたジョセフ氏の評価はうなぎのぼり。母国ニュージーランドやオーストラリアからもラブコールがあったジョセフ氏は、今や世界のラグビー界でも時の人。日本代表HC続投が決まったことでニュージーランドでは落胆の声が上がっているという報道もある。

ワールドカップ8強の日本が今後クリアしなければならない課題は山積

ワールドカップ(以下RWC)ベスト8進出という日本ラグビー史の金字塔といっていい成績を残した日本代表。準々決勝で南アフリカに敗れて1か月、RWC終了から半月以上が経った今となってもテレビからラグビー関連の話題が尽きることはない。

まさに話題沸騰の日本ラグビー界である。この状況は、1968年にオールブラックス・ジュニアを敵地で破り、1971年にイングランドと秩父宮で3-6とノートライゲームの死闘を演じた頃から日本ラグビーを見始め、1995年RWCでニュージーランドに145点取られて惨敗した鮮明な記憶も残っている一人としては正に隔世の感があり、うれしい限りだが、どこか信じ難いところもある。

来年の今頃「去年の今頃はみんなラグビーで盛り上がっていたけれど、あれは何だったんだろう?」などということになってはいけない。そのためにやらなければならないことは山ほどある。

ハデな言動の日本協会清宮克幸副会長は、プロリーグ構想を日々、さまざまな形でアピールしている。来年もラグビーが日本国内で存在感を示すために必要なことの一つが国内リーグの充実であることは間違いない。そのために清宮副会長は、日々、全力で走り回っているわけだが、日本代表のHCが誰になるかはやはり最重要課題だった。

ジョセフHC続投の紆余曲折はなぜ起きたのか

日本協会森重隆会長はジョセフ氏について「2016年9月HC就任からわずか3年間で日本代表を世界レベルにまで強化してくれた手腕を高く評価している」と語っているし、それは、無論、間違った視点ではない。それならなぜジョセフHC続投正式決定までに時間を要したのだろう。

改めて考えたい。RWC前、ジョセフHCを多くのメディアはほんとうに評価していたのだろうか?7~8月にかけて開催されたパシフィックネーションズカップこそ全勝優勝したが、対戦相手はすべてティア2の国であり、直前の南アフリカとの壮行試合は完敗した。それでもジョセフ擁護派もいるにはいたが、「これでアイルランド、スコットランドに勝てるのか?」と思っていた人は口には出さなくとも多数派だったはずだ。

ちょうどその時期、日本協会は次期HC候補に、昨季トヨタ自動車HCを務めた元南アフリカ代表HCでもあるジェイク・ホワイト氏を始めとする数人をリストアップしていた。

2015年のRWC、オーストラリア人のエディ・ジョーンズHCは日本を南アフリカ撃破を始め、世界と戦える集団にした。その後、今回のRWCまで日本はニュージーランド人のジョセフHCに強化を委ねた。

日本協会は今回のRWCでの結果はどうあれ今度は南半球のもう一つの強豪国である南アフリカ人HCを起用しようとしたのではないか。オーストラリア流、ニュージーランド流に続いて、南アフリカ流も日本のラグビーに取り入れるという発想だ。

ましてホワイト氏はジョーンズ氏もジョセフ氏もなしえなかった2007年のRWC南アフリカ優勝時のHCという実績を持つ。清宮副会長はRWC前から「ジョセフHC続投」を主張していたが、ホワイトHCという発想自体が間違っていたとは言い切れない。だが、RWCで日本が予想を上まわる進撃を見せたことで「ジョセフHC続投絶対!」へと巷の空気が一変したというのが本当のところではないか。

ジョセフHCだけではない大事な首脳陣

とにもかくにも、次期HC不在だけは避けたい。ジョセフHCの続投決定はめでたいことである。

ただ、ジョセフHCだけでいいのだろうか。トニー・ブラウンアタックコーチ、スコット・ハンセンディフェンスコーチ、さらにスクラムは長谷川慎コーチもいての日本代表だったことを忘れてはいけない。

ジョセフHC続投疑問視派はおそらくその点も気にしたに違いない。幸い、ブラウンコーチは「ジェイミーとともに行動する」と語り、内定していたハイランダーズのコーチ就任を辞退したと聞く。また、長谷川コーチはヤマハ発動機でコーチを続けながら今後も日本代表のスクラムを見ることになるだろうが、ハンセンコーチは、クルセイダーズのアシスタントコーチに就任。それが覆ったという話は届いていない。アイルランド、スコットランドのアタックを止め続けた日本のディフェンスがさらなる進歩を遂げるためにもディフェンスコーチ探しは喫緊の課題である。