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歴代最多の15人選出、ラグビー日本代表に海外出身選手が多い理由とは?

2019 9/6 11:00田村崇仁
日本代表のリーチ・マイケル主将Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

W杯代表31人のうち歴代最多15人

9月20日に開幕するラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会に出場する日本代表31人のメンバーが決まった。今回選出された選手のうち、海外出身の選手は15人と歴代最多になった。なぜ日本代表なのに海外の選手がここまで多いのか?そんな素朴な疑問を抱く人も少なくないが、理由はラグビー界の他競技とは異なる独特のルールにある。

外国出身選手ⒸSPAIA

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3年継続居住で代表資格

国際色豊かで「史上最強」とも呼び声が高い日本代表のスローガンは「ワンチーム」。多国籍軍団で結束力をチームの柱に掲げている。ラグビー界で昔から条件を満たせば国籍を必ずしも必要としない考え方は「所属協会主義」(地域主義)とも呼ばれる。例えば日本の代表としてプレーする資格を得るには①日本で選手本人が生まれた②日本で両親や祖父母の1人が生まれている③3年継続して日本に居住④通算10年の日本居住―のいずれかを満たせば許可されるというものだ。

ラグビーは歴史的に「国や地域との縁」も大切にしており、競技発祥地の英国人が植民地の代表でプレーできるようにしたこともこのルールの背景にあるとされている。

ただし賛否両論があった③の期間については、国際統括団体のワールドラグビー(WR)が2017年に規定変更を発表。2020年12月31日から60カ月に延長される。

6カ国から15人

今回の日本代表はニュージーランド、トンガ、南アフリカ、サモア、韓国、オーストラリアの6カ国から15人に及ぶ。

ニュージーランド人のジョセフ・ヘッドコーチ自身が選手時代に日本代表としてW杯に出場した経験を持ち、北海道・札幌山の手高に交換留学で来日したリーチ・マイケル主将(東芝)をはじめ、学生時代から来日している「日本育ち」も多く、日本での生活を気に入って国籍を取得している選手も少なくない。

プロップのバル・アサエリ愛(パナソニック)は埼玉・正智深谷高、埼玉工大からパナソニック入りし、躍進を遂げた。山梨学院大出身のラファエレ・ティモシー(神戸製鋼)、レメキ・ロマノラバ(ホンダ)らも代表例。流ちょうな日本語で通訳としての顔ものぞかせる。

先駆けはラトウらトンガ勢

1980年代に大東文化大が、南太平洋に浮かぶトンガから留学生を受け入れたのが外国出身選手の日本代表入りの先駆けだった。当時はそろばんを学ぶという理由で来日。その中心だったラトウ・ウィリアム志南利は日本代表の主力に成長して活躍した。

W杯は1987年の第1回から第3回大会まで出場。現代表のナンバー8、マフィ(NTTコミュニケーションズ)もトンガ出身のレジェンドの魂を受け継ぎ、変わらぬ闘志で日本代表の誇りを胸に挑む。

南ア出身の代表も

4年前のW杯にて、日本が大金星を挙げた南アフリカ戦は「スポーツ史上最大の番狂わせ」とも言われ、世界を驚かせた。

今やその強豪国からも日本代表入りしている。南アフリカ出身のフランカー、ピーター・ラブスカフニ(クボタ)は2016年からクボタ入りし、スーパーラグビーのサンウルブズでの活躍を経て今年7月に代表デビュー。母国から金星を奪った日本に心を奪われたという1人だ。豊富な運動量と強力なタックルを武器に、日本でもすぐに頭角を現し、高いリーダーシップも評価される。

ロック、ビンピー・ファンデルバルト(NTTドコモ)も南アフリカ出身。2013年夏、NTTドコモに加入。いつしか日本代表への思いが芽生えた。ラグビー強国、南ア仕込みのフィジカルの強さを攻守で発揮する。

外国出身選手は、特に海外の強豪との体格差が影響するFWで欠かせない戦力になりつつある。ラインアウトで捕球役のジャンパーを務めるロックは全員が外国出身選手。前回のW杯では南アフリカを破った際に日本代表の中で10人だった外国出身選手の多さが話題になり、フルバックの五郎丸歩(ヤマハ発動機)がツイッターで「彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間」と発信して理解を求めた。グローバル化時代でさらに多様化が進むチームは今回も一丸となり、初の8強入りを目指す。

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