3月31日、両国国技館で日本初開催
3月31日にいよいよ日本大会を開催する格闘技団体「ONE CHAMPIONSHIP」。運営会社代表に就任した秦”アンディ”英之氏に国内格闘技市場をどのように盛り上げていくのか構想を聞いた。
――2019年3月31日の日本初開催となる「ONE CHAMPIONSHIP」(以下、ONE)大会プロジェクトへ向けて秦代表のこれまでの取り組みについて、お聞かせ願えますか?
秦代表(以下、秦):正式には2019年2月に就任なので、つい最近になるのですが、昨年8月の段階でこの構想はある程度固まっていて、ファウンダーのチャトリ(チャトリ・シットヨートン会長兼CEO)が、もともと格闘家であり日本とタイのハーフであることから、日本での開催には非常に前向きに考えておりました。
それに賛同する形で、今回、この大役を受けることにしました。
よって大きなテーマから申しますと、アジアを発祥としたスポーツ団体であり、
且つ日本では根強く人気のある格闘技であり、武道の精神を取り入れている我々としては、日本で開催することは非常に意味のあることだと考えております。
日本で開催したいという強い思いはありまして、今回、武道精神を考えたときに国技である相撲の聖地・国技館で開催するのも、そういった思いから選びました。
――直接、チャトリCEOから両国国技館が良いとの方針だったのですか?
秦:決まった経緯としては、おそらく候補地として何箇所かあったと思うのですが、
はじめて日本で開催するのならば、歴史の重みのある会場でという強い気持ちがありましたね。
――会場の設営についてはどういった演出やラッピングを考えていますか?
日本向けに何か新しい工夫をされたりするのでしょうか?
秦:基本はこれまでの大会と変わらずケージを中心に花道を作るスタイルですね。
ONEの場合はフォーマットが決まっているので、それを日本でお披露目できるということですね。
――日本人の参戦決定は青木選手を中心に、長谷川賢選手に若松佑弥選手などが確定。
その他で、秋山成勲選手の参戦はどうなんでしょうか?
秦:今後、追加カードの発表はあるのですが、現段階では(秋山選手の件は)発表はないですね。
ただ、プラスアルファでONEのそうそうたるメンバーが出場してもらえるように調整はしています。
――秋山選手のSNSなどを拝見すると、やたら練習量が増えていますし、試合前の追い込み練習に見えたので、もしかすると電撃参戦もあるかなと思ったのですが、次の日本開催のタイミングまで持ち越しですね。
秦:はは…そうですね。少し言い換えると、現段階では秋山選手の参戦はないとだけ申し上げておきます。
格闘家の育成から供給まで行う「エコシステム」
――日本は総合格闘技の団体が数多ある中で、あえて日本の窓口のトップに就任となれば、他の総合格闘技団体からの風当たりも強いと思うのですが、そのあたりはどう考えましたか?
秦:前職はスポーツ・マーケティングリサーチ会社の最大手にいたので、
幅広く業態・業界の競技を見させていただいて、ONEはスポーツビジネスの最先端を行ってると思うんですね。
そして非常に複合的に運営されています。
スポーツビジネス視点で非常に魅力的です。
それに、今の日本の総合格闘技市場をより大きくするために、自分にやれることが絶対にあると感じましたね。
日本の格闘技がいろんな時代を経て、
多くの団体があって動いている中で産業自体の構図そのものが、エコシステムって我々は呼んでいるのですが、
育成から供給まで回っていく理想の形が、まだまだ断片的であると思っています。
格闘技界のみならず日本のスポーツ界は世界に比べて、まだまだ課題が多いです。
そこでスポーツの先端を行っているONEを日本に継承することで、日本全体の格闘技を盛り立てるスキームってできないのかなと思って行動しています。
日本の格闘技界の現場では様々あると思いますが、それを乗り越えるだけの可能性はあると思っています。
――具体的には、どういった取り組みになるのでしょうか?
秦:アマチュアとプロの資金源の問題であったり、興行を開催する難しさだったり、
既存であるものは大事に使いながら、海外からの良いものや新たな風を取り入れる状況を考えたいですね。
また例えばですけど、スポーツイベントの企業スポンサーの絡み方とか、
企業がスポーツを活かす方法が、ONEや欧米の考え方にフィットしています。
よって、ONEのスポンサーにはDisneyや、Budweiser(ビール企業)、世界で通用する企業が協力してくれています。
そういった企業と、日本でもフィットする関係を構築したいですね。
既にアジアで考えるとONEには日本企業もスポンサードしているんですね。
ソニー、Cannon、資生堂、Kawasaki、Honda、TOYOTAといった企業がアジアでは、当たり前に協力体制にいます。
こういった企業が日本でも応援してくれる仕組みが、
もっとあってもいいんじゃないかなって思っていますので、そこを進めていきたいですね。
先ほど申しましたスポーツ・エコシステムを構築して、興行を成功して儲けたからいいではなくて、底辺を育成しないといけない。
そうしていけば、企業も絶対に応援してくれますね。
――スポーツとして日本格闘技の価値を上げる取り組みですね。非常に期待が高まります。
秦:育成レベルの選手から、世界に通用するプロレベルまでピラミッドをしっかりと創り上げていくことが大切ですね。
ONEが日本格闘技を牛耳ったりするのではなくて、重要なのはエコシステム。
日本の格闘技全体が明るい状態にあるのが好ましいですね。
まずはとっかかりとして、新空手さんとの提携、総合格闘技の修斗さんとの提携、
エコシステムが循環するように考えに賛同していただける方々をこれからも増やしていきたいですね。
まずは国技館を満員にしたい
――大会の前々日29日に格闘技関連のイベントを開催と聞きましたが、それについては?
秦:スポーツカンファレンスの業界をあげてやるんですけど、これはニールセンという会社と組んでパレスホテルに集まっていただいて、日本の格闘技とスポーツを熱く語ろうと思っています。
これもエコシステムのノウハウをみんなで共有しましょうよって取り組みでもありますね。
ONEが独り歩きしていくのではなくて、業界に刺激を与える取り組みになるのがすごく大事ですよね。
今日できること、明日できること、明後日できること、フェイズは変わっていきますので、
色んな相関を作っていきたいですね。
――1月末にRIZINの榊原代表がメディアからの質問で、ONEが日本開催となれば何か協力体制はあるのかとの質問を投げかけて、堀口選手がONEに参戦してデメトリアス・ジョンソン選手とリベンジマッチを実現させたり、
循環が生まれたらいいとの発言がありましたが、それについて秦代表個人としては、どう考えていますか?
秦:今の特命はONEが両国国技館大会を経て日本に定着してくれることが最優先ですね。よって、最終的には、市場拡大に繋がり、成長に繋がることへの循環が生まれることは良いことですが、現段階ではONEの定着を最優先にしていきたいと思います。
――どのぐらいの集客をまずは見越しているのでしょうか?
秦:キャパが6800人なので、それを満員にするのがまずは目標です。そしてしっかりしたものを提供していきたいですね。
今回もチャンピオンクラスを出し惜しみなくカードを発表しておりますので、是非とも会場へ足を運んでいただいて、ONEを楽しんでいただけたらと思います。

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秦”アンディ”英之 2013年にニールセンスポーツ代表取締役に就任。
スポーツスポンサーシップに対する投資価値を同社独自の方法で評価・測定し、日本のスポーツマーケティング・リサーチ市場を開拓。
各スポーツ団体・スポンサー企業・代理店等、国内スポーツマーケティング市場におけるコンサルティング事業の展開。前職では米国ソニーに転籍し、FIFA(国際サッカー連盟)とのトップパートナーシップにおけるマーケティングに携わり、ワールドカップをはじめとした数々のFIFA大会におけるグローバル戦略を構築。
そのノウハウを活かして、2019年2月よりONE CHAMPIONSHIPの日本法人代表に就任。