「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【スポーツ×IT】第3回 スポーツとAIはどこまで進化するのか?②

2018 5/18 18:00藤本倫史
AI,ⒸShutterstock.com
このエントリーをはてなブックマークに追加

日本のスポーツサイトが浸透しなかった理由

今回はスポーツメディア×AIについて述べていきたい。
今回私が、このようなコラムを本サイトで連載したいと考えた理由の一つとして、AIを活用したコンテンツは他のサイトと差別化されており、先進的な取り組みを行っていると感じたからだ。

前回、競技面でのAI活用について述べたが、日本はスポーツメディアへのAI導入が進んでおらず、特にスポーツサイトを運営することが困難な状況になっている。
スポーツマネジメントスクールを主催していた広瀬一郎氏が、2000年に㈱スポーツナビゲーションを立ち上げ、スポーツサイト「スポーツナビ」を開設した。
しかし、2002年には、ヤフーへ売却され、そのヤフーも定着までに苦労した。これは日本特有の「地上波放送でスポーツを無料で見る文化」が根強く残っているからだ。

視聴者が少なくなったとはいえ、未だ地上波放送のスポーツ枠は人気があり、特に各競技の日本代表戦は充実し視聴率も高い。そのため、有料放送やネットでの課金視聴が浸透し辛く新しい情報提供サービスも参入が困難となっている。

スポーツデータを深堀し楽しむ習慣がないことも課題になっており、これについては本サイトの運営会社代表の金島氏もインタビューで指摘している。将来的に利用者にはファンタジーベースボールのような感覚でSPAIAを楽しんでほしいと、金島氏は提言する。

ファンタジーベースボールとは

ファンタジーベースボールとは、プロ野球シュミレーションゲームの一種である。1970年代に野球の統計を広めたビル・ジェイムスのようなデータの扱いを得意とする野球ファンから少しずつ広まり、1980年代にアメリカ全土でプレーされるようになった。
自分たちでチームや選手の成績を分析し、仮想チームを作り、実際の成績を重ね合わせて、リアルタイムで進行させる、リアルバーチャルゲームを創り出した。

開始当初は紙と電卓で行われていた計算だが、1990年代にはPCとインターネットの普及により一気に民間に浸透し、今では2000万人以上の利用者がいると言われている。
アメリカのスポーツ専門チャンネルでは、ファンタジーベースボールのCMが数多く放映されている。日本でもこのブームに乗り、1995年にファンタジーベースボールジャパンが設立され、サービスも開始されたが定着しなかった。

また、スポーツナビも2001年にサービスを始めたが2年間で休止するなど、日本国内での運営に成功した企業はまだない。日本ではプロ野球、Jリーグ、Bリーグなど多くのプロスポーツが誕生しているが、そのコンテンツを上手く活かしきれていないのが現状だ。

スポーツ文化の醸成が新たな可能性を生む

これは、スポーツを多方面から楽しむことができない日本の現状とも重なる。昨今日本では、ビジネスやまちづくりの視点からスポーツは重要な分野だと言われ、成長産業だと注目されている。そのような視点からではなく、スポーツを「文化」としてみることが必要ではないか。
単にスポーツが娯楽の一種であるという認識を、常に身近で多くの可能性を生んでくれるものだと認識し直せば、スポーツの世界は更に広がる。

単純に観戦するだけでなく様々な角度からスポーツを見ることが重要であり、そのために必要なツールがAIである。今後VRやARと連携しながらAIは、新たなスポーツコンテンツに欠かせない存在となり、新たなスポーツ産業やメディアの拡大と進化につながるだろう。そのための前提条件として、スポーツ文化の醸成が重要になってくる。

私もライターの1人として微力ながらも、この分野の取材を続けることで国内スポーツの発展に寄与したいと考えている。

次回はそのメディアの分野、「スポーツ×メディア」について述べていきたい。

《ライタープロフィール》
藤本 倫史(ふじもと・のりふみ) 福山大学 経済学部 経済学科 講師。広島国際学院大学大学院現代社会学研究科博士前期課程修了。大学院修了後、スポーツマネジメント会社を経て、プランナーとして独立。2013年にNPO法人スポーツコミュニティ広島を設立。現在はプロスポーツクラブの経営やスポーツとまちづくりについて研究を行う。著書として『我らがカープは優勝できる!?』(南々社)など。