「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【スポーツ×IT】第2回 スポーツとIT の可能性と課題-②

2018 5/4 18:00藤本倫史
スマホ,ネットワーク
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日本初開催のFISE

前回、スポーツ用品メーカーを事例を挙げスポーツとITの可能性について言及した。今回は課題をメインに述べていきたい。

先日、FISE広島大会を視察した。FISEとは、エクストリーム・スポーツ国際フェスティバル」を意味するフランス語のFestival International des Extremesを略した名称であり、BMX、スケートボード、ボルダリング、3x3 バスケットボール、パルクール、ブレイクダンス、マウンテン・バイク、水上スノーボード、インラインスケートなど、市街地中心部で行われるアーバンスポーツの祭典である。(FISE広島大会公式HPより)

日本では初めての開催となり、広島県と広島市は日本でのアーバンスポーツの聖地を目指し、合わせて1億円の税金を投入した。日本でも少しずつアーバンスポーツの認知度が高くなり、BMXやボルダリングなどは東京オリンピックから正式に競技として採用されて注目されている。また、アーバンスポーツと音楽や食のジャンルは親和性が高く、同日に有名アーティストのライブや屋台の出店なども実施されていた。

スポーツ×ITの課題

会場内では軽快な音楽が流れ、スケートボートやパルクールなど今まで見たことのないパフォーマンスと迫力に圧倒された。子どもたちの参加も多く、将来性を感じさせるイベントだった。

ただ、会場の入り口でとても残念な光景に出くわした。スマホを片手に大勢の観覧希望者が入口に溜まっていたのだ。この大会は入場無料であったが、事前に個人情報を登録し、入場のためのQRコードを取得しないと入場できないシステムになっていた。日本では紙媒体のチケットが当たり前で、チケットレスの文化はまだ根付いていない。

コストや顧客情報の管理のから見てもチケットレスのメリットはあり、最新技術を使うのも意味がある。(スポンサーに大手通信会社もついており、その意向も強かったのかもしれない)しかし、スポーツイベント開催の目的は顧客満足である。顧客が不快な思いやイベントに対してのイメージ悪化は本末転倒であり、手段と目的が逆になってしまったように感じた。

しかし、そのような魅力がこのような光景や、入場時の不便な印象があると半減してしまう。これこそが、スポーツ×ITの課題であると考えた。原因として、事前の告知不足や会場運営のマネジメント力不足という点もあるが、大きな点として日本人のスポーツ観戦文化やスタイルが大きく影響していることが考えられる。。

課題に対してどう向き合うか

スポーツも技術革新による新しい取り組みが導入されるべきだと思うが、結局は顧客に利用されないと意味がない。球団やスポーツ関連企業が便利だと思っても意味がなく、顧客が便利だと思うことに価値がある。

そのためには、顧客の行動、志向、習慣に沿った上で、顧客が選べる情報やサービスの選択肢を増やさなければならない。コアファン層とライト層の求めるものは違う。スポーツ界はどちらかというと、コアファン層向けに画一的なサービス展開を行ってきたが、これでは多様化するファン層を拡大することができない。そこでITの技術を上手く利用し、ライト層にも選んでもらえるような立場にならなければならない。

一方でそれらを提供する企業側も、自分たちの企業課題を理解した上で、何が必要で、どのような方法や人材で、何を行うのかを選択する。それはチームマネジメントなのか、スマートスタジアムなのか、スポーツの技術向上なのか。それぞれ、球団や企業によって違う。

この選択は、非常に難しいが、これからの時代はスポーツ×ITは重要な分野となる。次回はそれらの課題を踏まえた上で、スポーツ分野のAIの活用と未来について述べる。

次回は将来のビジョンを描くうえでスポーツ×ITの課題となるものについて見ていきたい。

《ライタープロフィール》
藤本 倫史(ふじもと・のりふみ) 福山大学 経済学部 経済学科 講師。広島国際学院大学大学院現代社会学研究科博士前期課程修了。大学院修了後、スポーツマネジメント会社を経て、プランナーとして独立。2013年にNPO法人スポーツコミュニティ広島を設立。現在はプロスポーツクラブの経営やスポーツとまちづくりについて研究を行う。著書として『我らがカープは優勝できる!?』(南々社)など。