「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【スポーツ×IT】データスタジアム×SPAIA座談会 スポーツビジネス新時代―データとAIの新しい活用方法―②

2018 4/6 18:00藤本敏史
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(右から)データスタジアム株式会社 取締役 執行役員の松元繁氏、同ベースボール事業部の田上健一氏、グラッドキューブ代表 取締役 CEOの金島弘樹氏ⒸSPAIA


【スポーツ×IT】データスタジアム×SPAIA座談会 スポーツビジネス新時代―データとAIの新しい活用方法―①


座談会参加者

  • データスタジアム株式会社 取締役 執行役員 松元繁氏
  • データスタジアム株式会社 ベースボール事業部 田上健一氏
  • 株式会社グラッドキューブ 代表取締役 CEO 金島弘樹氏



前回に引き続き、「スポーツ×IT」の座談会についてご覧いただく。今回はライトなファン層への具体的な提案、そしてスポーツ界を担う人材について熱く議論を行った。

―私もSPAIAで連載をさせてもらっていますが、画期的なサービスとしてAIによる勝敗予想があります。昨今、プロ野球くじの議論も熱気を帯びていますが、このサービス展開はどのように考えていますか?

金島:元々は、アメリカで流行していたファンタジーベースボールを日本版でできないかと考えたのがきっかけです。データからみるスポーツの楽しさを広めることで、新たなスポーツビジネスの展開を考えていました。プロ野球くじの活用よりも、今後、ファンタジーベースボールのようなデータをファンに楽しんでもらえるサービスが普及した時に参考になるプラットフォームのようなサイトにしていきたいと考えています。

―このようなAIを活用したサービスが普及していく中で、先ほども仰っていましたが、ライト層への普及が課題になってくると思います。データスタジアムさんは具体的にどのようなことをしなければならないと考えていますか?

松元:それが具体的にすぐに思いつけば、苦労はしません。笑
なかなか難しいところです。ファンタジーベースボールなど北米で流行ったサービスがそのまま日本で通用するかと言えば、そうではありません。
真似をするだけでは、難しい。ただ、それがまだ上手くいってないからこそ、ビジネスチャンスもあると思います。現在がまさに日本のスポーツメディアの転換時期だと思います。
 

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ⒸSPAIA


田上:私も入社したばかりなので、まだまだですが、セイバーメトリクスが好きなファンは確実に増えていると思います。また、私としても元選手やスコアラーの経験を活かし、現場目線からファンの方々に楽しんでもらえるサービスなども考えていきたいと思っています。

―現在がまさに転換期であり、重要な部分としては日本人に合わせたサービス提供だと思いますが、どのようなところにチャンスがあると思っていますか?

松元:やはり「見せ方」ではないかなと考えています。アメリカのスポーツ番組やサイトでは本当にデータの見せ方を工夫しています。これはヨーロッパもそうですし、隣国の韓国も頑張っています。弊社も特にサッカーは他社と連携して頑張っていますが、この見せ方をより工夫していく必要があると思います。

田上:現在、野球中継などでトラックマンを活用したボールの回転数のデータを見せることがあると思います。私たち野球関係者は非常に面白いデータだと思うのですが、ライト層の方々にはあまりピンと来ないと思います。むしろ選手のプロフィールなどがあった方が面白いと思います。そういった時にコア層の方々とライト層の方々がそれぞれ選択できるサービスがあればいいと思います。

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ⒸSPAIA


金島:本当に難しいですね。国内の大手企業でもスポーツサイトの展開は一度失敗しています。
でも、お二人の話を伺っていると、まずメディアの見せ方を画期的に変えていかなければならないと思います。このような部分は弊社のような異業種の会社だからこそ、できる強みだと思いますし、全く違ったものに活用していたグラフなどをスポーツに応用しようと試行錯誤しています。ユーザーの方々には楽しみに待ってほしいと思います。
それともう一つがファンの情報リテラシーの力を高めていくことが必要だと思っています。
アメリカは小さな頃からデータと触れ合うことができます。もっと日本でもスポーツとデータが当たり前になるような状況を作らないとファン離れは進んでいくと思います。
私としては将来的にスポーツと数字がわかるようなスクール活動も行っていきたいと考えています。

―私としても教育機関に所属しているので、その議論は非常に興味深いです。 私も授業でデータを扱うときに、スポーツデータを事例にすると学生の理解が良い部分があります。データスタジアムさんではそのような教育分野で考えていることはありますか?

田上:高校野球でもベンチに入れる枠は決まっています。ただ、チームとしてはプレイヤーだけでなく、色々な人たちの協力がないといいチームは作れません。その中で、分析班も重要な部分を占めると思います。アマチュアスポーツでもこれからデータが必要になってくる時代になっており、数字やデータに触れ合える状況を小さい頃から作っておくことはスポーツ界の発展につながると思います。

―最後にそのような未来の若者たちに向けてメッセージとこれからのスポーツ界に向けての提言を頂きたいと思います。

松元:社会の変化にどれだけ対応できるかに尽きると思います。これだけ社会の流れが早い中で、固執するだけでは取り残されて終わってしまいます。その中で、柔軟な発想を持つ若者の力は絶対に必要になってくると思います。ただ、スポーツ界も非常に厳しい状況になっています。この厳しい状況をチャンスだと考えられる人に未来があると思います。

田上:私もこれからの社員ですが、あきらめずに継続していくことが大切だと思います。私の性格上、新しいことにチャレンジするのはむしろやりがいを感じる方です。プロ野球の世界に飛び込んだ時もそうでしたが、ゼロからのチャレンジです。むしろ、スポーツデータを扱うビジネスという意味ではマイナスかもしれません。
ただ、楽しみでもあります。若い人たちにも新しいところに飛び込むのを怖がらずに、チャレンジをどんどんとして欲しいです。

金島:スポーツビジネス界は若者にとって非常に参入障壁が高いと思います。
資金も必要ですし、コネクションも必要ですし、何より規制が非常に多くあります。
だからこそ、もっとこの世界が競争できる環境であれば、市場が拡大する可能性はあると思います。私としては今回の事業を通じて、スポーツビジネス界に提言というよりも、貢献をしていきたいと考えています。だからこそ、「もっと規制を緩和してください」というのがありますね。笑 
これからは試合興業だけでなく、スポーツツーリズムの時代になります。
このような分野に若い人たちがどんどんと参入し、新たなビジネスモデルを確立してほしいですね。