「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

パリ五輪で佐藤大宗が銀メダル獲得した近代五種の“凄さ”を解説、ロス五輪から「SASUKE」導入で底辺拡大?

2024 8/25 06:00SPAIA編集部
佐藤大宗,Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

1912年ストックホルム五輪から続く「キング・オブ・スポーツ」

パリオリンピックの近代五種で佐藤大宗が銀メダルを獲得した。「キング・オブ・スポーツ」と呼ばれる歴史のある競技で日本選手がメダルを獲得するのは初めての快挙。金メダルはエジプトのアハマド・エルジョンディー、銅メダルはイタリアのジョルジョ・マランだった。

佐藤大宗の銀メダルがどれだけ凄いことなのか理解するために、まずは近代五種について説明しなければならない。近代オリンピックの父・クーベルタン男爵が古代ギリシアで行われていた五種競技(やり投げ、円盤投げ、走り幅跳び、短距離走、レスリング)からヒントを得て考案。1912年のストックホルムオリンピックから実施されている。

当初は射撃、フェンシング、水泳、馬術、ランニングの5種目だったが、2009年から競技時間を短縮するため射撃とランニングを組み合わせた「レーザーラン」とフェンシング、水泳、馬術に変更された。

いずれにしても万能性が必要な複合競技で、その過酷さは計り知れない。日本では競技人口が少なく馴染みが薄いが、ヨーロッパでは「スポーツの華」と称され、根強い人気を誇っている。

入賞すらなかった日本勢で史上初のメダル

ヴェルサイユ宮殿で行われたパリオリンピック決勝。佐藤は馬術で2位と好スタートを切ると、続くフェンシングは1勝1敗、水泳(200メートル自由形)は12位だったが、3種目を終えた時点で4位につけた。

そして、射撃とランニングを交互に行うレーザーランで正確な射撃と安定した走りを見せ、2位フィニッシュ。見事に銀メダルに輝いた。

自衛隊体育学校に所属する佐藤は東京オリンピックの出場を逃して引退も考えたが、現役続行を決意。フェンシング男子エペ団体メンバーと練習を積んで課題のフェンシングを強化した。

ストックホルム大会で初めて実施されてから112年。これまで入賞すらなかった日本勢で史上初のメダルは、歴史を変える偉業と言っても過言ではないのだ。

馬術からオブスタクルに変更

佐藤の快挙で脚光を浴びそうな近代五種は、次回の2028年ロサンゼルスオリンピックで、従来の馬術がオブスタクルに変更される。オブスタクルとは、日本のテレビ番組「SASUKE」をイメージさせる障害物レースで、日本でも競技人口の増加につながる可能性がある。

変更の背景には、東京オリンピックでドイツ代表のコーチが、思うように動かない馬を叩くシーンが中継映像に映し出され、問題になったことがある。馬術競技は選手が一緒にトレーニングしてきた馬を持ち込んで行うが、近代五種の馬術は開催国が用意した馬を借りて行うため、人馬の呼吸が合わないこともあるという。

さらに近代五種の競技自体の人気低迷もあってオブスタクルへの変更が決まったが、伝統を重んじる選手や関係者からの異論も出ている。

とはいえ、オブスタクルは世界的に広がりを見せており、日本でも徳島県吉野川市に国内初の公認コースが完成。ロサンゼルスオリンピックに向け、盛り上がっていきそうだ。形を変えながらも近代五種は「キング・オブ・スポーツ」であり続けるか。今後の成り行きが注目される。

【関連記事】
51歳レジェンドに無課金、初老…パリオリンピックで輝くおじさんたち
驚異の射撃精度で弾穴を撃ち抜いて弾痕見つからず 1912年ストックホルム大会【オリンピック珍事件】
日本の歴代夏季・冬季五輪獲得メダル数大会別一覧、パリオリンピックで海外大会最多記録更新