リオ五輪の閉会式。日本によるセレモニーまでの振り返り
リオオリンピックの締めくくりとなる閉会式が、8月21日にマラカナンスタジアムで行われた。閉会式は演出が施されたカウントダウンに始まり、野鳥の姿に扮したダンサーが織りなす人文字、ブラジルサンバ界の巨匠マルチーニョ・ダ・ヴィラによる歌唱、合唱隊によるブラジル国家斉唱と大会のハイライト紹介、選手の入場、花火の打ち上げと続いていく。
オリンピック旗の引継ぎ式は男子マラソンの表彰式を終えた後に行われ、降納されたオリンピック旗がリオデジャネイロ市長のエドゥアルド・パエス氏からオリンピック委員会会長のトーマス・バッハ氏へ、そして東京都知事である小池百合子氏に渡される。
オリンピック旗の引継ぎを終えると、日本国歌の斉唱があり、ここから日本によるセレモニーが本格的にスタートした。
マラカナンのフィールドに描かれた神秘の日の丸と感謝の言葉
『君が代』が流れる中、スタジアムのフィールド全体が日の丸の赤と白に彩られた。このシーンに感動した日本人は少なくないだろう。また、アレンジされた『君が代』を高く評価する日本人の声も多数あがったようだ。
照明の色が変わるとフィールドに描かれた日の丸の中央に「RIO」の文字が出現。それらは「ARIGATO」と「OBRIGADO」に含まれたR・I・Oの文字だった。やがて「THANK YOU」や「MERCI」など世界中の「ありがとう」の言葉がフィールドに映し出される。
これは、今回のオリンピックを開催したリオデジャネイロへの感謝、東京が次期オリンピックの開催地に選ばれたことへの感謝、そして東日本大震災で世界中から支援をいただいたことへの感謝が込められている。
最後に「FROM JAPAN」と表示されたこれらの文字は、東日本大震災で被災した学校の生徒ら総勢1万人による人文字だ。
映像には次世代を担う若者たちと、世界に誇るキャラクターたちが登場
フィールドによる演出の次は映像パートがスタート。「WARMING UP! TOKYO 2020」をテーマに東京の数々の景色が、ジャズアレンジされた椎名林檎さんの『ちちんぷいぷい』をBGMにして流れていく。
渋谷のスクランブル交差点に始まり東京タワー、スカイツリー、その向こうに見える富士山、東京ゲートブリッジに都庁、浅草寺や歌舞伎座などの名所とともに、次世代を担う若手アスリート達が出演している。
また、日本が世界に誇るアニメ『キャプテン翼』や『ドラえもん』、世界に認知されているコンピューターゲーム『パックマン』、サンリオを代表するキャラクターの「ハローキティ」も登場、観客を魅了する映像が次々と出現す。
伝統だけではない、今の日本の魅力を十分に伝えるこの映像は、椎名林檎さんの夫で映像ディレクターの児玉裕一氏が「LOVE SPORT」をコンセプトに監督したものだ。
セレモニーの主役は、安倍首相が扮する「安倍マリオ」?
BGMがH ZETTRIOの楽曲へと続いていく中、映像が暗い水面を映し出す。そこに登場したのは、オリンピックで数々の功績を残した北島康介さん。
水に浮かぶ赤い日の丸のボールを拾い投げると、高橋尚子さんがそれを受け取る。さらに日の丸のボールはキャプテン翼から村田諒太選手へと渡り、最後に安倍首相が受け取る。
「リオに間に合わない」と焦る安倍首相は、ゲームキャラクターのマリオに変身、日の丸ボールを手に走り出す。そして渋谷のスクランブル交差点で、ドラえもんがポケットから取り出した土管をくぐると、地球の反対側にあるリオまであっという間に到着する、という演出だ。
マラカナンのフィールドに現れた土管を騒然と見守る観衆、カウントダウンに合わせて土管から出てきたのは、マリオの服を着た安部首相だ。手に掲げた日の丸ボールが明るく光り、ダンスパフォーマンスがスタートする。
演出を手掛けたクリエイターたちが表現したかったもの
この約10分間に渡るセレモニーには、先述の椎名林檎さんや児玉裕一氏、H ZETTRIOのほか、編曲や楽曲提供に携わった三宅純氏や村田陽一氏、中田ヤスタカ氏といったクリエイターが関わっていて、演出面や振り付けなどを担当したMIKIKOさんの資料提供と合わせての試行錯誤が繰り返された。
国際的イベントで日本が披露してきた「和」のテイストをあえて抑え、現代日本を象徴する規律や精密性といった演出を前面に押し出す形式がその結晶となっている。映像にもCGやバーチャル効果、細かな訴求効果、大胆かつ繊細な人々の動きなどに、彼らの表現力が反映されている。
テクノロジーの分野をリードする日本の技術を随所に織り交ぜながら、心に響くメッセージ性も伴ったセレモニーにより「東京オリンピックを楽しみにしたい」と世界中から思っていただけたのではないだろうか。
まとめ
国内外で発信されるネットの反応を見ても、リオ五輪の閉会式で日本が行ったセレモニーには好意的な文章が並んでいる。
もちろん一部には批判的な意見もあるが、セレモニーを通じて展開された芸術性や楽しさ、技術力、そして日本が伝えたかったことを、世界の多くの方々に発信できたようだ。
いよいよ4年後に迫った東京オリンピック。リオから託されたバトンをしっかりとつないでいくために、日本全体で協力していきたい。