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筋トレ時に息を止めてはダメ!呼吸法で2倍のトレーニング効果を引き出そう

2021 9/1 06:00近藤広貴
筋トレをする男性,ⒸProstock-studio/Shutterstock.com
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ⒸProstock-studio/Shutterstock.com

筋トレ時に呼吸を意識することでトレーニング効果が倍になる!?

筋トレを行う際に呼吸法を意識したことがあるだろうか。筋トレ時に扱う重量やたんぱく質補給などの知識と比べ呼吸法はマイナーで、特にトレーニング初心者の方は呼吸をそれほど意識したことがないだろう。

高重量を扱う際など、ついつい力んで呼吸を止めてしまいがちになるが、筋トレ中に呼吸を止めることは血圧の急激な上昇など体へ大きな負荷を与えるばかりか、トレーニング効果の低下にもつながる。筋トレ時の呼吸を意識することは、筋肉の発達や筋トレ時の怪我の防止など大きなメリットをもたらすのだ。

東京大学の石井直方教授は筋トレ時の呼吸法を意識することで、最大限の力を発揮することができ、トレーニング効果が高まることを報告している。呼吸を意識したトレーニングは、意識しない場合と比べ2倍以上のトレーニング効果を得ることができるという。

また、筋トレ時の呼吸を意識することで体幹に腹圧をかけることができ体が安定するため、フラつくことなく安全にトレーニングを行うことが可能となるのだ。

呼吸はスティッキングポイントで切り替え、筋収縮時に強く長く吐く

筋トレ時の呼吸法のポイントとしては、基本的に筋肉が伸張する時に息を吸い、筋肉が収縮する時に息を吐くよう心がけたい。また、息を吐く際は体幹に腹圧をかけられるよう強く長く息を吐くようにしよう。

筋トレの際に最も筋繊維がパワーを発揮する場面は、筋肉が伸張から収縮に入れ替わる瞬間である。この最大のパワーが発揮されるポイントを「スティッキングポイント」と呼び、このポイントを境に呼吸の吸う、吐くを切り替える。スクワットや腕立て伏せを例に挙げながら呼吸法を確認したい。

・スクワット
スクワットの場合、直立した状態からしゃがむ動作の際は、脚の筋肉が伸張するため息を吸う。そして、しゃがんだ状態から直立に戻る切り替えがスティッキングポイントとなるため、強く長く息をはきながら元の直立へ戻るようにする。

・腕立て伏せ
腕立て伏せも同様で、腕を曲げる際は上腕三頭筋や大胸筋が伸張するため息を吸う。そして、地面を押して元の体勢に戻る際の切り替えポイントがスティッキングポイントとなるため、強く長く息を吐きながら元の体勢に戻るようにする。

このことは自重でのトレーニングのみならず、ベンチプレスやバーベルスクワットなどウエイトトレーニングでも同じ呼吸法でトレーニングを行うようにしたい。

最大挙上重量を扱う際は「バルサルバ法」で瞬間の筋力を高める

筋トレ時の基本的な呼吸法は、上記のように筋肉の伸張時に息を吸い、スティッキングポイントを境に、筋肉が収縮する際に強く長く息を吐くものとなる。

しかし、自身が1RMしか持ち上げられない最大挙上重量を扱うトレーニングの際には、前述した呼吸法では腹圧の安静性がはかれない可能性がある。その際は、スティッキングポイントで一瞬だけ息を止めて大きな力だす「バルサルバ法」を取り入れると良い。

「バルサルバ法」は、イタリアの解剖学者アントニオ・マリア・バルサルバにちなんで名づけられたもので、日本語で「いきみ」や「怒責」とも訳される。息を止めて力むことにより、瞬間の筋緊張が起こって普段よりも大きな力が発揮でき、重量に対応できるようになるのだ。

しかし、この「バンサルバ法」は安静時の3倍程度まで血圧が上昇するため、高血圧の人は注意したい。筋発達のために高重量を扱うトレーニング上級者用の呼吸法となるため、一般的なトレーニングは、前述の吸って吐く呼吸法で行うとよいだろう。

筋トレの際、ほんの少し呼吸法を意識するだけで安全かつ、より効果的なトレーニングを行うことができる。実践していきたい。

《ライタープロフィール》
近藤広貴
高校時代にボクシングを始め、全国高校総体3位、東農大時代に全日本選手権3位などの成績を残す。競技引退後は早稲田大学大学院にてスポーツ科学を学ぶ。現在は母校の教員としてボクシング部の指導やスポーツに関する研究を行う傍ら、執筆活動を行っている。

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