トヨタが1994年以来の快挙達成!
1973年に創設されたスプリントラリーの最高峰WRC(世界ラリー選手権)。この世界一を争う舞台で日本メーカーが再び栄冠に輝いた。10月27日に行われたWRC第13戦ラリースペイン最終日でトヨタのオィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組が総合2位でフィニッシュし、1994以来のドライバーズチャンピオンを獲得した。
最終日は2位に3.5秒差の3位に位置していたタナックは、その差を5.8秒差まで広げられるも、ボーナスポイントがかかる最終SS(パワーステージ)で圧巻の走りを見せ、総合2位に浮上。ボーナスポイントも5ポイント獲得し、最終戦を待たずしてドライバーズチャンピオンを決めた。
実はこのスペインでは、タナックに本来の速さは感じられなかった。ランキング争いで優位に立っているタナックは2位を狙う必要がなく、3位キープで十分だった。しかもポイントが与えられるパワーステージは距離が短く、2位との5.8秒という差をパワーステージで逆転するのは至難の技だった。
だが、タナックは今年一と言っても良い走りをここで披露し、2位の選手を逆転。ここ一番でリスクを冒し、見事結果を出したのだ。自身初の、そしてトヨタ復帰後初のドライバーズチャンピオンを自らの手でつかみ取ったタナックの走りは王者に相応しい完璧な走りであった。
2004年から2018年までわずか2人しかチャンピオンが誕生していないWRC。セバスチャン・ローブ、セバスチャン・オジエの絶対王者が君臨したWRCにおいて久々の新王者誕生となった。そしてエストニア出身のタナックはエストニア人初のWRCチャンピオンとなり、この歴史的快挙に母国のケルスティ・カリユライド大統領もコメントを発表するなど、国中が祝賀ムードに包まれているようだ。
2冠を目指し最終戦へ
トヨタは2017年、18年ぶりにWRCに復活した。チーム代表にはWRC4連覇を達成したレジェンド、トミ・マキネンが就任、ドライバーには最年少優勝記録保持者のヤリ・マティ・ラトバラとインターコンチネンタル・ラリー・チャレンジなどのチャンピオン、ユホ・ハンニネンと万全の体制で初年度を迎えた。
エース、ラトバラは開幕戦のモンテカルロでいきなり2位に入り、第2戦スウェーデンで優勝を果たしデビューから強烈なインパクトを与えた。第9戦フィンランドではサードドライバーとして参戦したエサペッカ・ラッピが優勝し、初年度で2勝を挙げ、トヨタはWRCを盛り上げる存在となった。
昨シーズンはラトバラ、ラッピに加え、Mスポーツからオイット・タナックが移籍し、さらに強力なラインナップで参戦。この年は絶対王者であるセバスチャン・オジエとテイリー・ヌービル、そしてタナックの三つ巴となった。3人で争われたチャンピオン争いはタナックがオジエと同じくシーズン4勝を挙げるも、ここ一番でのトラブルもありチャンピオンになることができなかった。しかし、タナック、ラトバラ、ラッピの3人でポイントを積み重ね、マニファクチャラーズチャンピオンを獲得した。
世界一のメーカー、チームの称号を手に入れたトヨタ。残すはドライバーズチャンピオンだけ、そう意気込んで臨んだ今シーズンはタナックがチャンピオンを獲得した。今年はマニファクチャラーズではヒュンダイに18ポイント差をつけられているが、まだ最終戦まで頂点に立つ望みはある。参戦3年目でWRC完全制覇達成となるのか、目が離せない。
2020年は日本にWRCがやってくる!
トヨタがWRCで活躍する中、9月27日にWRC世界ラリー選手権の2020年開催スケジュールが発表された。ついに『Rally Japan(ラリー・ジャパン)』がリスト入りし、2010年以来のWRCが日本で開催されることが決まった。
日本では2004年から北海道を舞台にラリー・ジャパンとして開催されてきたが、2010年を最後に日本での開催が途絶えていたのだ。しかし、2017年にトヨタがワークスチームとしてWRC参戦を再開し、前述の通り活躍を見せた。これにより国内のラリー人気が再燃し、ラリー・ジャパン復活開催を望む声も大きくなった。
2018年1月にはWRC日本ラウンド招致準備委員会が発足。愛知県と岐阜県で2019年開催を目標に活動が進められてきたが、カレンダー入りとはならなかった。だが、招致準備委員会は誘致活動を積極的に継続し、2020年の開催にこぎ着けた。
発表されたスケジュールによれば、ラリー・ジャパンは2020年11月19~22日にシリーズ最終戦となる第14戦が開催される。今年は最終戦前にチャンピオンが決まってしまったが、WRCは最終戦での決着が多く、日本でワールドチャンピオン決定の瞬間が見られるかもしれない。一体どのようなドラマが繰り広げられるのだろうか。今から楽しみで仕方がない。
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