屈辱の歴史、初の1次L突破へ課題は得点力
アイスホッケー女子の日本代表「スマイルジャパン」は、2月の北京冬季五輪で3大会連続4度目の舞台に挑む。目標は五輪初の1次リーグ突破。これまで豊富な運動量とシュート数で上回りながら、決定力の差が浮き彫りになるケースも多く、課題は得点力となる。
過去を振り返ると、五輪は屈辱の歴史でもある。正式種目となった1998年長野冬季五輪は開催国枠で初出場したが、5戦全敗。初戦でカナダに0―13の大敗を喫し、優勝した米国に0―10。5戦全敗で計2得点、45失点と世界との力の差は歴然としていた。
4大会ぶりの2014年ソチ五輪は、またも5戦全敗の最下位で計6得点、16失点。初戦のスウェーデン戦を0―1で落とし、続くロシア戦も1―2で実力差は縮まったが、最後まで歓喜のスマイルを見せられなかった。
前回の2018年平昌大会は韓国と北朝鮮の合同チーム「コリア」を下し、五輪13戦目にして初勝利を含む2勝を挙げ、8チーム中6位。目標のメダルに届かず、欧州の壁に阻まれて準々決勝進出こそ逃したが、大きな一歩を示した。
期待は「氷上のスナイパー」久保英恵
北京大会は10チームで争われ、日本は1次リーグB組で2月3日にスウェーデン、5日にデンマーク、6日に中国、8日にチェコと対戦。1次リーグA組は5チーム全て、B組は5チーム中上位3チームが決勝トーナメントへ進出する。
日本の得点力で鍵を握る存在は、正確なシュート力とここ一番の勝負強さから「氷上のスナイパー」と呼ばれる39歳のFW久保英恵(西武)だろう。競技生活の集大成と位置づける3度目の五輪で、エースとして日本代表を長年支えてきた経験と実力を見せる覚悟だ。
新型コロナウイルスの影響で異例の夏開催となった2021年の世界選手権(カルガリー)では、「切り札」として投入される場面も増え、限られた出場時間の中で宿敵ドイツ戦での同点ゴールなどチーム2位の大会通算3得点をマーク。過去最高6位に貢献した。
20歳のFW志賀紅音は米国戦でゴールの新星
世代交代も進む「スマイルジャパン」の中で、20歳のFW志賀紅音(トヨタシグナス)は前回の2018年平昌五輪代表落選を糧に成長した期待の新星だ。
2021年世界選手権では、銀メダルの米国から2ゴールを奪うなどチーム最多の4得点。第1ピリオドに速攻からGKの股下を抜き、さらに右サイドからの横パスをスラップショットでゴール左隅に突き刺した。初めての五輪となる北京大会へ「大暴れ」を期している。
「守護神」藤本那菜、主将の大沢ちほも健在
日本の最後尾で「スマイルジャパン」を支えるのは、「守護神」のGK藤本那菜(デンソー北海道)だ。3大会連続となる32歳のベテランは2015年に世界選手権ではベストGK賞を受賞し、日本選手として初の快挙も達成した実力者。シュートコースを防ぐ動き出しの速さを得意とし、前回の平昌大会でも4試合で80本のシュートを防ぎ、日本の五輪初勝利に大きく貢献した。
3大会連続で主将を務めるFW大沢ちほのリーダーシップと運動量も健在だ。平昌大会後は自身も北欧のスウェーデンリーグの強豪ルレオでプレーして海外での経験を重ね、新しい攻撃のアイデアを学んできた。
2021年夏の世界選手権で明確になったスマイルジャパンの課題はシュート決定率。10チーム中8位の7・41%で、得点力不足の課題は残ったままだ。それでも初戦のスウェーデンは欧州の強豪国ながら、付け入る隙はある。ここが五輪での成否を占う大一番になるだろう。
新旧世代が融合し、屈辱の歴史から多くの国際経験を積んでたくましく成長した「スマイルジャパン」。真価を問われる戦いがいよいよ始まる。
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