コース紹介
今週は中山芝2000mで牡馬クラシック第一冠目・皐月賞が行われる。今年は2歳GⅠの覇者が不在で大混戦の様相を呈している。京成杯を圧勝したソールオリエンス、近年好調の共同通信杯の覇者ファントムシーフ、3連勝でスプリングSを制した無敗馬ベラジオオペラらが中心のメンバー構成だ。
当該コースの重賞は6レース。GⅠでは皐月賞の他にホープフルS、GⅡでは皐月賞トライアルの弥生賞、GⅢでは中山金杯や京成杯、紫苑Sが開催される。そんなコースの特徴を過去5年のデータを参考に検証していこう。(使用するデータは2018年4月14日~2023年4月9日)
まずはコース紹介。ホームストレッチの右端からスタートし、1コーナーまで約405mの直線が続く。その後は2コーナーの中間まで坂を上り、向正面の直線は平坦。3~4コーナーにかけて緩やかに坂を下る。最後の直線は310mと非常に短く、ゴール前には高低差約2.2mの急坂が待ち受けている。立ち回りの巧さが求められるコース形態だ。
地力が問われる内枠
<中山芝2000m・過去5年の枠別成績>
1枠【22-27-31-272】勝率6.3%/連対率13.9%/複勝率22.7%
2枠【18-23-32-297】勝率4.9%/連対率11.1%/複勝率19.7%
3枠【21-26-24-313】勝率5.5%/連対率12.2%/複勝率18.5%
4枠【40-31-23-307】勝率10.0%/連対率17.7%/複勝率23.4%
5枠【32-30-31-323】勝率7.7%/連対率14.9%/複勝率22.4%
6枠【39-33-31-336】勝率8.9%/連対率16.4%/複勝率23.5%
7枠【33-42-38-387】勝率6.6%/連対率15.0%/複勝率22.6%
8枠【39-32-34-432】勝率7.3%/連対率13.2%/複勝率19.6%
枠別成績では、4~8枠の成績が横並びである一方、内枠である1~3枠の不振が目立つ。この傾向は皐月賞でも同様であり、昨年も後の菊花賞馬アスクビクターモアやダービーで1番人気に支持されたダノンベルーガが、内枠から最後の直線で伸びない内を通り、馬券外に敗れている。当日のトラックバイアス次第でこの傾向は変わる可能性があるが、過去5年、1~3枠で馬券に絡んだのは僅か3頭のみ(21年2枠3番ステラヴェローチェ、20年1枠1番コントレイル、19年2枠4番ダノンキングリー)。内枠からの好走には、確かな地力が求められる。
<中山芝2000m・過去5年の脚質別成績>
逃げ【35-25-26-168】勝率13.8%/連対率23.6%/複勝率33.9%
先行【114-115-103-531】勝率13.2%/連対率26.5%/複勝率38.5%
差し【76-84-87-990】勝率6.1%/連対率12.9%/複勝率20.0%
追込【9-9-22-950】勝率0.9%/連対率1.8%/複勝率4.0%
脚質別成績では、短い直線も影響してか逃げ・先行有利の傾向。OP以上に限ると、逃げ【1-6-3-26】勝率2.8%、先行【21-16-14-77】同16.4%、差し【12-11-12-124】同7.5%、追込【1-1-5-139】同0.7%と逃げの優位は消え、圧倒的に先行有利となる。また、上がり3F最速の成績は【102-47-34-113】で勝率34.5%、単勝回収率236%を記録。この条件では追込以外の全ての脚質で単勝回収率が280%を超えており、脚質に固執することなく、素直に良い末脚を使える馬を狙うのが得策だ。
躍動する横山兄弟
<中山芝2000m・過去5年の種牡馬別成績>
ハービンジャー【16-12-16-136】勝率8.9%/連対率15.6%/複勝率24.4%
ドゥラメンテ【7-9-10-63】勝率7.9%/連対率18.0%/複勝率29.2%
デクラレーションオブウォー【2-2-1-2】勝率28.6%/連対率57.1%/複勝率71.4%
種牡馬別成績では、ハービンジャーが16勝を挙げており、今年の皐月賞に産駒を送り出している種牡馬の中ではトップ。なかでも、逃げが単回収率241%、差しが同130%とプラス域をマークする一方、先行は同64%で妙味度が低い。今回は先行策で共同通信杯を制したファントムシーフやワンダイレクトが該当する。
タッチウッドの父ドゥラメンテは、ハービンジャーを上回る連対率、複勝率を記録。単回収率も170%と妙味十分だ。逃げ馬に限ると【2-2-0-4】勝率25.0%、単回収率340%とさらに成績が跳ね上がる。これまでの2戦全てで逃げを打っているタッチウッドにとって、このデータは追い風だ。先週のリバティアイランドに続いて2週連続クラシック制覇の偉業なるか。
サンプルが少ないものの、デクラレーションオブウォーは勝率28.6%、単回収率225%をマーク。このコースとの相性は最高だ。今回は同コースで2戦2着2回と安定感抜群のトップナイフが該当。今回こそ悲願の1着を勝ち獲ることができるか注目だ。
その他、ソールオリエンスの父キタサンブラックは【1-1-0-24】で勝率3.8%と苦戦中。馬券に絡んだのは昨年の皐月賞2着のイクイノックス、そして京成杯のソールオリエンス自身のみだ。また、ベラジオオペラら3頭出しのロードカナロアは【10-7-6-55】で勝率12.8%、単回収率68%とまずまずの成績だ。
<中山芝2000m・過去5年の騎手別成績>
ルメール【28-16-14-44】勝率27.5%/連対率43.1%/複勝率56.9%
横山武史【19-14-12-74】勝率16.0%/連対率27.7%/複勝率37.8%
横山和生【7-5-3-48】勝率11.1%/連対率19.0%/複勝率23.8%
騎手別成績では、ルメール騎手が2位の横山武史騎手に9勝の大差をつけてトップを独走中。平均1.6番人気という事情があるにしろ、勝率27.5%、連対率43.1%と驚異の安定感だ。さらに先行策をとった場合は【16-9-4-13】で勝率38.1%、単回収率107%と妙味も出てくる。今回はファントムシーフに騎乗する。
ソールオリエンスに騎乗する横山武史騎手は、過去2年で同コースでのGⅠ・2勝と実績十分で、計19勝を挙げている。前目で競馬を進めた場合、逃げでは【3-1-2-4】勝率30.0%、単回収率324%、先行では【11-8-7-24】勝率22.0%、単回収率104%と好成績。しかし後方から進めた場合、差しでは【4-5-3-28】勝率10.0%、単回収率42%、追込では【1-0-0-17】勝率5.6%、単回収率22%と、勝率、単回収率ともにガクッと落ちる。極上の切れ味を武器とするソールオリエンスを上手く導けるか、一抹の不安が残る。
妙味度では、横山武史騎手の兄・横山和生騎手も面白い。このコースでの単回収率は154%と、皐月賞への出走が確定している騎手の中ではトップ。前目で競馬を進めた場合、逃げでは単回収率301%、先行では同293%と妙味は十分だ。今回は先行してスプリングS2着だったホウオウビスケッツに騎乗。穴を狙う場合は魅力的な存在だ。
その他、単勝回収率100%以上の騎手は、ワンダイレクト騎乗の藤岡祐介騎手(単回収率139%)、ベラジオオペラ騎乗の田辺裕信騎手(同127%)、マイネルラウレア騎乗の戸崎圭太騎手(同107%)がいる。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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