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【フェアリーS】終わってみれば2勝馬のワンツー! キタウイングはラチ沿いを滑走、いざ桜の大舞台へ

2023 1/10 10:40勝木淳
2023年フェアリーSのレース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

終わってみれば実績最上位キタウイング

5日間で開催4日と正月早々、忙しい中央競馬は変則日程の影響か、波乱決着も多くコース傾向もつかみにくく難解だった。その最終日フェアリーSはこの3年スマイルカナ、ファインルージュが桜花賞3着、敗れたスターズオンアースは牝馬三冠1、1、3着と近年、クラシック展望に欠かせなくなった。

一方、ほぼ毎年1勝馬の組み合わせで波乱傾向が強い。ふたを開けてみれば今年も1~3番人気は1勝馬。2勝馬はミシシッピテソーロの4番人気が最高で、重賞ウイナーのキタウイングは11番人気。他馬より1キロ増、前走GⅠで14着では低評価も致し方なし。そもそも新潟2歳Sは連闘での勝利。当時、レースレベルは高く評価されていなかった。また新潟2歳Sを勝った牝馬はその後、不振に陥ってしまうという歴史もあり心象がよくない。キタウイングは見事にそのイメージを覆した。

同時にイメージで語る安易さを反省させられる。新潟2歳Sからは3着シーウィザードが次走OP芙蓉S1着、4着バグラダスは次走1勝クラスで2勝目をあげ、6着グラニットはサウジアラビアRC2着と好走馬が続出。当時はそこまで強調できるメンバーではなかったが、その後、活躍する馬が多く、ここに注目すればよかったと終わってから嘆く。

また阪神JFは前後半45.2-47.9と落差があるハイペースを内枠から先行策をとったキタウイングには辛い展開であり、敗因は明確だった。14着はノーカウントでよかったのかと、寒空を見上げた。多頭数のGⅠで内枠から競馬した経験は今回のイン強襲につながったといえる。

タフさが売りのリーベストラウム牝系

キタウイングの母キタノリツメイの母はリーベストラウム。ミルファームにとって運命の馬だ。1歳秋に競りで購入後、3勝をあげ繁殖入り後はストーミーシー、トキメキなどOP馬を出した。この日も中京メイン淀短距離Sでトキメキが13番人気3着、中山最終にはカヨウネンカが出走と3日競馬最終日はリーベストラウム牝系が席巻した。

キタウイングはその牝系の代表格として桜花賞へ駒を進める。鞍上は昨夏ミルファームのビリーバーでアイビスSDを勝った軍団主戦の杉原誠人騎手。急遽、連闘で出走した新潟2歳Sは当日ビリーバーでキーンランドC参戦が決まっており、乗り替わりになったが、今回は手綱が戻ってきた機会を逃しはしなかった。ぜひとも人馬ともに堂々と桜花賞へ向かってほしい。リーベストラウムの系統はストーミーシー、トキメキなど本当にタフ。あえてトライアルを経由してもきっとへこたれない。むしろ使って上向く可能性さえある。今後の動向に注目しよう。たとえ人気が落ちても気にしない。

肝心のレースは前後半46.3-48.0のハイペース。キタウイングは後方2番手を進み、残り600m標識でインに突っ込む形で進出し、最後までインを突き抜けた。ハイペースのため、前で粘る馬がいなかったので、きれいに抜けられたのは展開の助けだが、4コーナー出口から差を詰める脚力は見所があった。

互角だったメイクアスナッチ、巻き返し必至のスピードオブライト

2着メイクアスナッチも7番人気の2勝馬。1200、1400m連勝、それも先行、逃げとスピード色あるプロフィールが嫌われたか。今回は後方待機から外を通って差し込み、イメージを一新した。キタウイングとはコース取りの差が出た。

3着スピードオブライトは1勝馬だが、前走京王杯2歳S3着の実績馬だった。こちらはプロフィール通りスピードを活かした競馬を見せた。発馬直後はハナに立ったが、マイレーヌに競り掛けられ、一旦引く形に。ハイペースを最後まで我慢するしぶとさを発揮した。賞金加算はできなかったが、アネモネSあたりなら権利をとれそうだ。

1番人気11着ヒップホップソウルは馬群に入り、他馬と接触、行きたがり、消耗してしまった。2番人気10着ディナトセレーネは先行策。最後の直線はスピードオブライトに並ぼうとするも坂で止まってしまい、ハイペースがこたえた。

2023年フェアリーSのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

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