最初のコーナーまで、色々あった
札幌2歳ステークスは、古くはジャングルポケットやアドマイヤムーンを、最近ではジオグリフやソダシを輩出した夏競馬屈指の出世レース。それと同時に、枠順が極めて重要なレースという性格も併せ持つ。札幌の連続開催6週目で内が傷んだ馬場と、最初のコーナーまでが近い1800mという設定。そして、走るのはまだこの時期の2歳馬。皆が皆、馬群の中で利口にレースができるわけではない。外枠が有利で、内枠は立ち回りが難しい。
そんな傾向もあってか、今年のレースは最初のコーナーまでにいろいろなことが起きた。
札幌での直近10回【0-0-2-8】の1枠からスタートしたダイヤモンドハンズはゲートが速くなかったこともあり、福永祐一騎手はじっと後ろに下げて馬場のいい外へエスコート。シャンドゥレールはアオるようなスタートでもっと出遅れ、ダイヤモンドハンズよりさらに外へ出していく。ブラストウェーブもやや出負け、川田将雅騎手は挽回していく選択をとったが、初角に入るあたりでは頭を上げてヒートアップするようなそぶりを見せた。
先行争いの方も、枠なりに出ていくアースビート、レッドソリッドの2頭にフェアエールングが外から注文をつけていく。フェアエールングがハナを取り切ってようやく決着がついたのは1~2コーナー中間あたり。ただでさえ難しい内枠勢は、この動きに押し込められるようにして、より難しい競馬となった。
ここまでの悶着を尻目に、外枠から実に自然な形で中団の外めにつけたのがドゥーラとドゥアイズ。終始、馬場のいいところを回って手応えよく、直線の入り口では先にドゥアイズが抜け出すと、これをピッタリ追いかけていたドゥーラが差し切って1馬身差をつけた。
3着はダイヤモンドハンズが入ったものの、4着ジョウショーホープは大外8枠14番。例年以上に枠順の差が結果に大きく影響したようだ。
牝馬ワンツーの意味
勝ったドゥーラはその名から連想される通りドゥラメンテ産駒。ドゥラメンテ牝馬といえば今年の春二冠を制したスターズオンアースがいるが、新馬戦は脚力を見せながらも敗れ、レースを走るごとに少しずつ競馬が上手になっていくという面は似ている。
内容自体は枠順に恵まれた印象があり、時計面にも昨年・一昨年ほどのインパクトは正直感じなかった。ただし、2000年以降、札幌2歳Sで連対した牝馬は(昨年までで)9頭おり、そのうち上がり最速をマークしていた馬はアヴェンチュラ、レッドリヴェール、ユーバーレーベンの3頭全てGⅠ馬。上がり最速でこのレースを勝ったという事実は大きい。
2着ドゥアイズも牝馬で、今年は牝馬によるワンツー決着。コスモス賞も2着、2馬身差の完敗という内容だったが、重賞でも着順が変わらなかった。そのコスモス賞を勝ったモリアーナも牝馬。間接的に、モリアーナも重賞級ということになりそうだ。
思えば、函館2歳Sのブトンドール、新潟2歳Sのキタウイングも牝馬。新馬戦で上がり31.4秒の史上最速タイ記録を出し、一躍「時の馬」となったリバティアイランドも牝馬だ。今年は牝馬の豊作年。ドゥーラやドゥアイズがGⅠ制覇に向けて倒さねばならない強敵はまだまだいる。
広いコース向きのダイヤモンドハンズ
ところで、個人的には前評判からノーザンF・社台F系の新馬戦勝ち馬が1番人気になるとばかり思っていたのだが、フタを開けてみれば締め切り直前でドゥーラが買いこまれて単勝1番人気に浮上したので驚いた。最後に、こうして2~4番人気になった3頭それぞれの内容を振り返ろう。
3着ダイヤモンドハンズ。前述のとおり1枠が厳しく、下げて外に回った福永騎手の苦心が見られた。新馬戦同様、追い出してからトップスピードに乗るまでにやや時間がかかり、コーナーでは少し外に膨れていた。それでも上がり最速タイで3着まで来たように能力はあるが、不器用で広いコース向き。もっとも、それも戦前から言われていたことだが。やはり本領発揮は東京での中長距離戦だろう。
5着ブラストウェーブ。新馬戦は6頭立ての2番手抜け出し、今回は打って変わって馬群の中での競馬。初角で行きたがり、4角では外の馬に馬体を当てて道をこじあけるような形。いい経験になったのではないだろうか。まずは秋、リステッドやGⅢでの活躍に期待だ。
2番人気で7着のシャンドゥレールは、前肢を上げるようなスタートで出遅れて最後方から。3角手前から少しずつ位置を上げていき、手応えはよく見えたが、いざ追い出されると舌を出しながら走っていまひとつファイトできず。鞍上のコメントにもあったように、まだまだ幼い。重賞で戦うには気性面での成長が必要だ。

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