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【クイーンS】先行有利の馬場が作った後半1000mのロングスパート 器用さ全開のテルツェットが連覇達成!

2022 8/1 11:05勝木淳
クイーンS、レース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

逃げ、先行優位のトラックバイアス

桜花賞2着と世代実績上位のウォーターナビレラが本州に比べて涼しい北海道から始動。クイーンSはウォーターナビレラと古馬勢との力関係がレースの焦点だった。距離は違えど、桜花賞3着ナムラクレアが50キロという軽量だったとはいえ、函館SSを快勝。斤量52キロのウォーターナビレラはレースセンスが高く、安定して走るタイプ。崩れる場面を想像するのは難しい。10着という結果をどう受け取るか。秋に向けて陣営もファンも悩むところではないか。

前日土曜の札幌芝は1枠が4勝、日曜も逃げ、先行勢に優位な馬場状態。そんなトラックバイアスがレース展開に影響した。逃げ候補は内枠に入ったローザノワール。Vマイル4着、行けばしぶとさを発揮するが、ダッシュ力が弱く、ハナを切るまでに時間を要するタイプ。この日も田中勝春騎手が押してハナに立った。

オークスで出遅れたウォーターナビレラはすっかり立ち直り、好発を決めローザノワールを待つ余裕があった。間に入ったメイショウミモザが2番手をとり、ウォーターナビレラは外の3番手。隊列は比較的すんなり決まった。

前半800mは12.7-12.2-12.4-12.1、49.4。加速するのに時間がかかるローザノワールは、後ろにいる馬から逃れるようにガンガン飛ばす馬ではなく、逃げたレースはせいぜい平均ペース、多くはスローペースに持ち込む。ハナにさえ行けばリラックスできるタイプだ。

すんなり隊列が決まったことで、ペースを落としすぎたと感じたのか、ここからゴールまで11.8-11.4-11.6-11.6-12.0。1000m通過1.01.2という記録以上に早めにじわじわと加速するタフな流れだった。逃げ、先行圧倒的優位な馬場で実績ある逃げ馬と1番人気馬が好位にいる形。ローザノワールはこれを意識したか、残り1000mからリズムを少しずつ変えた。その結果、後ろに脚を使わせる形になった。

器用な立ち回りが光ったテルツェット

ウォーターナビレラはこのラップに脚を使わされる形になり、かつ4コーナーはメイショウミモザがいたためその外目を進み、さらに脚を使った。

1着テルツェットは枠なりに内ラチ沿いを追走。1コーナーで外から押し込められ、頭をあげる場面もあったが、レース慣れした歴戦の古馬、リズムをすぐに整えた。勝負所までずっとラチ沿いにぴったり。やはり池添謙一騎手は勝負強い。経済コースを通ったことで、ジリジリと脚を使わされる厳しい流れを乗り切った。これでクイーンSは函館、札幌と場所を変えながら連覇。ときに大外一気の豪快な競馬もあるが、クイーンSではいずれも器用な立ち回りを見せての勝利。内回りは合う。

2着サトノセシルは昨年格上挑戦で8番人気3着。今年もまったく同じ状況で好走したことから、この条件はぴったりだ。テルツェットと同じく1コーナーで不利を受けながらも中団追走。脚を使わせる流れにうまく対応した。昨年より積極的に3、4コーナーで外目を押し上げていった分、2着だった。最内の狭いところをテルツェットに抜け出されては運がなかったとしかいえない。小回りもいいが、こちらは東京の高速馬場にも対応できる。まだまだチャンスはありそうだ。

3着ローザノワールはスローの逃げが多いが、もっと脚を使わせる持久戦にしても面白そうだ。ただし、いかんせんダッシュ力が甘いので、組み合わせや枠順などに左右される。単騎で行けると踏めば、今後も狙っていきたい。

4着ルビーカサブランカは2着サトノセシルと同じような位置から進めたが、3、4コーナーの立ち回りの差が出たか。もう少し直線が長いコースでじわじわと加速するレースで見直したい。

2022年クイーンS、レース通過順,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


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