例年Bコースも今年は昨年同様Aコースを使用
大阪杯が行われる阪神芝2000mは、内回りの4角過ぎからスタートし、1角までの距離は約325m。スタート直後に登り坂があること、1角までの距離が短いことからペースが落ち着きやすい傾向がある。また、例年はAコース→Bコースで行われるため、内枠の先行馬が残ることが多かったが、今年は昨年同様に2回阪神からAコースが使用される。
2回阪神から芝のレースが総じて少ないこともあり、先週時点では内側にいくらか傷みがある程度。しかし、ひと雨降れば昨年同様に外差し馬場になる可能性もある。昨年は大阪杯当日、レース前半は最内~内も伸びていたが、ゲリラ豪雨に襲われ、大阪杯が行われる頃には外差し馬場に変化していた。今年も日曜日の午後から雨が降る可能性もあり、注意したい。
能力値1~5位の紹介

【能力値1位 エフフォーリア】
デビューから7戦6勝、2着1回のほぼパーフェクトな成績。唯一2着に敗れた日本ダービーも、1番枠から好位の内を狙って勝ちにいく競馬。最短距離の競馬で道中ポジションダウンする形になり、最後の直線で外目に出し、ラスト300m過ぎでは一旦先頭の競馬。これが裏目に出て最後に差されたが、勝ちに等しい内容だった。また、この日は馬場の内側が悪化しており、外のほうが伸びる傾向でもあった。
昨秋はさらに驚かされる走りを披露。休養明けでありながら天皇賞(秋)では古馬最強クラスを撃破し、自己最高指数を記録。並みの馬なら休養明けで自己新の走りをしてしまうと疲れが残り、その次走で凡退することが多いもの。鞍上の横山武史騎手が今回「有馬記念のときはあまり状態が良くなく6、7割のデキ」とコメントしていたように、実際に前走時はデキ落ちしていたと見ている。しかし、タフな馬場でパンサラッサがハイペースの大逃げを打ったなか、中団の中目でじっと我慢し、脚をタメる競馬をしたことで、展開に恵まれ有馬記念でも好走することができた。
今回エフフォーリアは休養明け緒戦。おそらく万全とまではいかないだろう。かつて安定感抜群で最強級の強さを誇ったテイエムオペラオーでさえ、有馬記念を優勝した翌年の休養明け緒戦の大阪杯では4着に敗れている。有馬記念で差し競馬をした馬が次走で距離短縮のレースに出走すると、どうしてもレースの流れに乗るのに苦労してしまうもの。
前記のテイエムオペラオーは格下馬相手に、負けられないとばかりに捲り気味に上がって失速したもの。エフフォーリアに騎乗する横山武史騎手は、本人も自覚があるようだが、先週の高松宮記念のレシステンシアのように仕掛けが速いときがある。ただこの馬は本来なら負けても仕方がないようなところを、ほぼクリアしてきた怪物。ここも底知れぬ能力であっさりクリアしてしまう可能性は十分だ。
【能力値2位 ジャックドール】
7走前、休養明け緒戦となった昨春の阪神芝2000mの未勝利戦では、前半は逃げ馬の外2番手を追走していたものの、向正面序盤で手応え良く先頭に立ち、破格の好指数で勝利した馬。その次走のプリンシパルSではさすがに疲れが残ってしまったようで結果を出せなかった。
しかし、その後しっかり休ませて疲労が抜けると、高い潜在能力が覚醒。1勝クラス、2勝クラス、3勝クラスを突破。その3戦全て1クラス以上上の水準にあたる指数を記録しての楽勝だった。前走の金鯱賞はレコード勝ちで好指数を記録、これで5連勝。勢いは止まらない。前走からさらに上昇するなら、エフフォーリア撃破も難しいことではないだろう。
ただ前走はかなり高レベルな走りだっただけに、普通に考えれば多少なりとも疲れは残りそうなもの。今回は4番枠と逃げるには都合のいい枠を引いたが、楽観視して良い状況ではないだろう。今回のジャックドールは馬場や展開、相手関係ではなく、自らの能力の天井がどこにあるかで着順が決まると見る。サイレンススズカのような領域に踏み込めるか、それとも壁に当たるか、注目したい。
【能力値3位 ヒシイグアス】
一昨年秋の休養明け緒戦となった3勝クラス、ウェルカムSを正攻法の競馬でなかなかの好指数で勝利して成長をアピール。その後、中山金杯、中山記念を連勝し軌道に乗った馬。長期休養明けとなった昨秋の天皇賞(秋)では能力全開とはならなかったが、ひと叩きされた前走の香港Cでは、やや出負けし最後方付近からの競馬となったが、捲り馬の出現により途中で一気にペースアップ。展開に恵まれた面はあるが、中山記念と同指数を記録し見事に2着となった。
今回はそれ以来になる休養明けの一戦で、状況は昨年の天皇賞(秋)に似ている。おそらく始動戦の意味合いが強い。よって今回はそこまで楽観視できないと見るが、想定を超える成長力でアッと言わせるか。
【能力値4位 レイパパレ】
重馬場で行われた昨春の大阪杯では、肉を切らせて骨を断つ、ハイペースの逃げを演出。最後の直線で馬場の良い外に出し、好指数で圧勝した馬。当時は6戦6勝で一体どこまで強くなるのかと思わせた。
その次走の宝塚記念は3着に敗れた。しかし、ハイレベルなレースをし疲れが残っていた可能性もあり、なおかつスローペースで逃げ馬が2着に粘る展開だったので仕方のない面もあった。しかし、昨秋以降の走りはペースが厳しかったり、不利があったとは言え、期待外れな走りが続いた。
前走の金鯱賞では2着に好走、やや復活の兆しを見せた。レース間隔を開けたのが良かったようで、香港遠征で能力を出し切れず、エネルギーも溜まっていたのだろう。昨年の大阪杯の走りが再現できれば、簡単にエフフォーリアを撃破できる能力の持ち主。しかし、この馬はここまでの成績を見ると、使い込んで良化するタイプではなさそうだ。能力も高く、馬場が悪化すればプラスだが、信頼はできない。
【能力値5位 キングオブコージ】
かつて破竹の4連勝で目黒記念を優勝した馬。その後は故障もあってやや成績が落ちたが、前走のAJCCでは見事に復活の勝利を決めたように高い能力を持っている。しかし前走はオーソクレースが向正面で早めに動いたことで、一気にペースが上がり、逃げ、先行馬に厳しいレースとなった。それを最後方からの競馬で、展開と外差し馬場が向いての優勝だったことは確かだ。
ただ前走のキングオブコージはスタートで出遅れるロスがあり、記録した指数も目黒記念勝利時ほどではないが、まだ今回に向けてお釣りを残している可能性もある。今回は伏兵扱いで、プレッシャーも少ない立ち位置、無欲の差しには警戒しておきたい。
穴馬はスタミナ豊富なレッドジェネシス
レッドジェネシスは昨春の京都新聞杯では、長く良い脚を使いスタミナの豊富さを見せて優勝。次走の日本ダービーでは京都新聞杯で自己最高指数を記録した後の疲労残りの一戦。しかも出遅れ最後方から内々を回る競馬。馬場の内側が悪化していたこともあり、11着に敗れた。
しかし、昨秋の神戸新聞杯では後方3番手でレースを進め、3~4角で馬場の悪い内から前との差を詰める競馬。最後の直線も内を捌いて進路を作り、一旦先頭に立っての2着。ダービー馬シャフリヤールに先着し、菊花賞では1番人気に支持された。高い素質は秘めている馬と言えるだろう。
前走の京都記念は菊花賞で後方からレースを進めた直後の一戦で、出脚が悪く、レースの流れに乗れず、ここでも最後方から。またレース自体が前と内の決着となったため、結果は大敗。
今回は前走を使われたことで前向きさも出てくるだろうし、前走は完全に能力を出し切れておらず、体調面が順当に上向いてくるはずだ。潜在的に持っているスタミナを生かせる、馬場、展開になれば一気の食い込みも期待できる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)エフフォーリアの前走指数「-29」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.9秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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