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【日経賞】クビ差勝利は快勝の証、タイトルホルダー揺るぎなし!

2022 3/28 10:35勝木淳
2022年日経賞のレース結果,ⒸSPAIA

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有馬記念と日経賞の違い

列島が春の嵐に見舞われたこの日、もっとも雨の影響を受けなかったのが中山だった。芝は依然として先行有利。菊花賞馬タイトルホルダーにこれ以上ない舞台設定。それだけに2着ボッケリーニとのクビ差に物足りなさを覚えたという向きもあるが、果たしてどうとらえればいいのか。

中山芝2500mの重賞は日経賞と有馬記念のふたつ。この舞台はカメレオンのようなコース。中盤までの流れで問われる適性が変化する。有馬記念はパンサラッサが逃げた昨年のように近年は前半活気ある流れになることが多く、最後はスタミナを問われる傾向になり、昨年2着ディープボンドのような速い脚がないステイヤータイプが活躍できる。当然、有馬記念が緩い流れになれば、結果も大きく変わる。

日経賞は実績馬の始動戦といった性格が強く、前半から突っ込んだペースになりにくく、後半600m勝負になる。そうなると瞬発力勝負に対応できる中距離型が台頭する。かつてグラスワンダーやマンハッタンカフェが有馬記念優勝後、日経賞で凡走したのは休み明けだったことに加え、こういったレースの質の違いも影響した。日経賞は長距離型より中距離型。まずそれをタイトルホルダーが勝ったことを評価したい。

瞬発力勝負で勝利したタイトルホルダー

もっともタイトルホルダーは逃げ馬。自分で主導権をとり、ペースを作ることができる。菊花賞は1.00.0-1.05.4-59.2というメリハリある流れで逃げ切り。前半1000mを飛ばし、後ろを引き離した。有馬記念はパンサラッサの流れに乗ったが、今回は先手をとれる組み合わせ。持久力戦に持ち込む公算が高かった。

だが、有馬記念後にトモを痛めるアクシデント。態勢をととのえ、日経賞に出走してきたが、目標はあくまで天皇賞(春)。順調ではなかった立ち上がりと先を考えれば、飛ばして自ら消耗する競馬は避けたいところ。日経賞はそういった意図を感じる走りだった。自ら先手をとり、前半1000mは推定1.03.6。1、2コーナー付近で13.4-13.4を刻み、菊花賞のように後続を離さず、引きつけた逃げをあえて選択した。

菊花賞が頭にあるので、タイトルホルダーに途中で競りかける馬はいない。淡々とした日経賞らしい流れになり、後半1000mは12.3-12.0-11.7-11.2-11.8、59.0。上がり600m34.7は中山では高速上がりに近い部類。4コーナーで先行集団にいないと馬券圏内に入れない。

当然、タイトルホルダーをマークしていたボッケリーニ、ヒートオンビート、クレッシェンドラヴら中距離型もさほど消耗しない。勝ち馬はそれを残り400~200m11.2で突き放しに行き、最後11.8でまとめ、封じた。最後に12秒台まで落ち込まないあたりがGⅠ馬。ボッケリーニとのクビ差は超スローだったことを考えれば当然といえば当然のこと。これで突き放したら怪物クラス。むしろ相手の土俵で相撲をとったぐらいの感覚で、長距離でのボッケリーニとの差は着差以上にあった。相手がさらに上がる次はおそらく日経賞のような緩い競馬はしない。今度は前半から突っ込んで、スタミナを削りにいくだろう。

油断できない大敗馬

2着ボッケリーニは2500mでの好走に価値を見出したい。長距離は任せろとまでは言えないが、必ずしも2000mにこだわらなくていい。2200mも面白い。3着ヒートオンビートとは4コーナーでの位置取りの差もあった。こちらはインを抜けてきた。スローペースになれば、距離ロスは最後の着順にダイレクトに響く。その点は恵まれたといえる。

3着ヒートオンビートは中山金杯に続いて連続3着。小回りは得意ではなそうで、ベストは広いコース。これで2500mは2、3着。2000mよりは競馬がしやすそうで、さらに力をつけた今なら目黒記念で狙いたい。

アサマノイタズラやウインキートス、ディバインフォースは緩い流れを後方待機、正直、この時点でチャンスがなかった。やはり自力で動けるようになりたい。ただ、GⅠで底力を問う流れになると、スタミナを生かし、好走することもある。こういったタイプが前哨戦で大敗を喫しても、安易に見離せない。

2022年日経賞のレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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