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【小倉大賞典】目指せ、小倉二冠! アリーヴォを勝利に導いた和生騎手の頭脳プレーとは

2022 2/21 11:13勝木淳
2022年小倉大賞典のレース結果,ⒸSPAIA

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馬場読み不能な状態

小倉の開催は冬と夏と極端な季節にしか開催がない。コースレイアウトは2コーナーを頂点にゴールに向かって緩かにくだる、スピードを出しやすい構造。雨さえなければ、いつでも高速トラックである。しかし日本海に面する小倉の冬は悪天候が多い。西回りに寒気が入り込むと、雪すら降るほど。今年の開催も降雪による開催中止がちらつく日もあった。そして悪天候によって馬場は刻々と変化する。小倉攻略には馬場読みが欠かせない。

前週日曜日、前日土曜日と道悪。小倉大賞典当日の芝は6レースまで重、8Rからやや重。インが悪いだけではなく、真ん中も次第に悪化、もう通るところがなくなるほど。ここまでくると馬場読みに意味がないようにすら感じられた。

ランブリングアレーを利用した巧みな競馬

レースはノルカソルカがハナに行き、トップウイナー、ジェネラーレウーノが追う展開。ノルカソルカは距離ロスを承知で内ラチから離れ、馬場の真ん中を選んだ。こうなれば自然と時計を要する。前半1000m1.01.0は馬場を考えれば遅くはない。さらにそのラップは12.3-12.1-12.7-12.2-11.7。好位勢のプレッシャーもあり、向正面前半で加速する不安定さ。ダートに良績があるトップウイナーがインを突き、先頭に立つなか、後続はみんな馬場の大外を目指した。

勝ったアリーヴォは大外枠から終始中団外目を追走、目の前のランブリングアレーの手応えがよく、仕掛けのタイミングをそこに合わせ、4コーナーではランブリングアレーの動きに乗じて馬場の大外へ持ち出す。あとは交わすだけというスキのない完璧なレース運びだった。これだけ馬場のコンディションが悪く、ペースがローカル重賞らしく変則的になると、シンプルな手数で攻めるのが定石。横山和生騎手、クレバーな騎乗だった。

これでアリーヴォは小倉5戦5勝。2年前の冬に未勝利脱出、昨夏は芝2000mで良馬場1.57.5、不良2.05.1で勝利と、小倉なら馬場状態を問わない。同一年小倉三冠を達成したメイショウカイドウがよぎる。現在は北九州記念が芝1200m戦になってしまい、三冠はぐっと難しくなったものの、この勝利で小倉記念を勝ち、二冠を手にしてほしい。小倉は冬と夏しか開催がない。だからこそ地元を愛するヒーローがほしい。

競馬は決めつけると負ける

2着ランブリングアレーは惜しかった。重賞を勝った昨年中山牝馬Sは不良馬場で最後の200m14.4もかかる、極限状態の競馬。それを差し切ったしぶとさが小倉の馬場にマッチした。終始、アリーヴォに狙われる展開ながら、堂々と先に動いて一旦は抜け出した。今回は相手が悪かった。6歳牝馬、クラブの規定があり、次走はあるか分からないが、実質トップハンデに並ぶ55.5キロでの好走は充実の証。中山牝馬S出走なら連続好走もありそうだ。

3着は2年前の覇者でトップハンデ57.5キロを背負ったカデナ。道中後方追走から直線に向くまで動かず、直線一本に賭けた。小倉の短い直線、大外を追い込むその脚は見事で、改めて小回り適性の高さを証明。前走ダートで追い込んで5着も合わせ、こちらも充実を感じさせる。引き続き軽視はできない。

アリーヴォの勝利で22年JRA重賞1番人気連敗記録が18で止まった。前日土曜の2重賞でも勝てなかった1番人気だが、それをまさか小倉大賞典が止めるとは思わなかった。4重賞でもっとも波乱濃厚と目されたレースを1番人気が勝つ。連敗は19に伸びると確信して馬券を買った身としては、マジかと。そんな感想だった。まさに競馬は気まぐれ。決めつけると負ける。

2022年小倉大賞典のレース展開,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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