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【アルテミスS】総合力勝負でサークルオブライフ 価値ある時計と流れ、負けて強しベルクレスタ

2021 11/1 10:53勝木淳
2021年アルテミスSのレース結果,ⒸSPAIA

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平均ラップに引き込まれたベルクレスタ

16年リスグラシュー、17年ラッキーライラック、そして昨年のソダシと、阪神JFから桜花賞へ、牝馬王道路線の起点になりつつあるアルテミスS。舞台はスピードと持続力を問われる、いわば総合力が必要な東京芝1600m。とはいえ、2歳秋の競馬らしく序盤は緩い流れが定番。ソダシが勝った昨年も前後半800m48.6-46.3で走破時計は1.34.9。さすがに底力勝負にまではなりにくい。

今年のサークルオブライフの走破時計は1.34.0と速い。これは馬場状態もあるが、前後半800m47.2-46.8とアルテミスSにしてはイーブンペースに近いラップ構成が影響したものだった。

先手を奪った伏兵のボンクラージュが行き、好位にいたシゲルイワイザケ、ベルクレスタが控えたことで、離し気味の逃げに持ち込んだ。ボンクラージュのペースは例年より厳しく、シゲルイワイザケ、ベルクレスタ以下は平均より遅めのペースで進む。

これでボンクラージュが早々にバテれば、実質はスローと考えてもいいが、後半800m12.0-11.6-11.5-11.7のうち、3、4コーナーから直線序盤の残り400m地点(12.0-11.6)までボンクラージュが引っ張ったので、好位にいたシゲルイワイザケとベルクレスタはボンクラージュを自力で捕まえなければいけなくなった。

序盤のスローから残り800mで平均寄りのラップに引き込まれたため、2着ベルクレスタも3着シゲルイワイザケも最後は底力を問われることになった。とかくベルクレスタはシゲルイワイザケを交わし、一旦は敢然と先頭へ。これで後続を封じれば超A級評価まであった。勝ったサークルオブライフにクビ差捕まったのは残念だったが、堂々たる競馬で2着確保は力の証。東京マイルで平均ペースを好位から抜け出した内容は負けて強しだ。

デムーロ騎手らしいシンプルな競馬

1着サークルオブライフは勝った前走よりスタートが向上したことで、スムーズに控え、少頭数も手伝い、インコースに上手く潜り込んだ。シンティレーションの背後で折り合いをつけ、4コーナーで勢いをつけながら、ヴァンルーラーを弾き気味に外へ進出、抜群の手応えで直線に向いた。あとは先に抜け出したベルクレスタを目がけ、追うのみ。デムーロ騎手らしいシンプルな競馬だった。

流れがハマった面もあるものの、最後の600mはメンバー中唯一の33秒台(33.5)。次位ベルクレスタに0.5差と末脚の破壊力は最上位だった。

母シーブリーズライフ(その父アドマイヤジャパン)は現役時代1200、1400mで活躍したスピードタイプ。目立った産駒はこれまでいなかったが、その母プレシャスライフからは今年の菊花賞に出走したヴェローチェオロが出た。同馬の父はゴールドシップ。サークルオブライフの父はエピファネイア、スピード色が濃いプレシャスライフの系統はスタミナ色の強い血統との相性がよく、サークルオブライフも3戦目に東京マイルの平均ペースをこなしたことで、将来的にはマイル以上でも戦える見込みができた。

エピファネイア産駒のオープン馬はすべて血統表にサンデーサイレンスの4×3を持つ。デアリングタクト、エフフォーリア、アリストテレス、オーソクレース、クラヴェル。そしてサークルオブラフは6頭目のオープン馬になった。しばらくはトレンドになるだろう。

3着は8番人気シゲルイワイザケ。こちらもサンデーサイレンスの4×3を持つエピファネイア産駒。3戦連続騎乗の福永祐一騎手が切れ味不足を補うために今回も積極策で活路を見出した。結果的にちょっと厳しい流れになってしまい、3着だったが、こちらも内容の濃い競馬。この先、重賞では展開を味方につけなければ難しいが、自己条件なら自力勝負で2勝目をあげられそうだ。

1番人気で5着に敗れたフォラブリューテはスタートで左右から挟まれ、位置を下げざるを得ず、序盤でリズムを崩したのは痛かった。キャリア1戦での重賞挑戦で流れに乗れなかった。7着ミント、8着ロムネヤも同じくキャリア1戦。特にロムネヤは最後尾からの競馬を余儀なくされ、力を出し切れなかった。キャリア1戦組をデビュー戦とは異なる競馬になった今回の敗戦で見限るのは早計だろう。


2021年アルテミスSのレース結果,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2000-2004 00年代前半戦』(星海社新書)。



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