ポイントは1、2コーナーと最後の急坂
12月チャンピオンズCの前哨戦ながら、JBCと日程が重なり、最上位クラスの参戦は例年少ない。ダートのチャンピオンクラスは場所を選ばない。みやこSは地方のダートでは長所を削がれてしまうスピードタイプとJBC出走には賞金が足りない新勢力が顔をそろえる。ここを勝ち、賞金水準が高いダートチャンピオンクラスに挑む馬はどの馬だろうか。
今年の舞台は昨年と同じくスピード志向の京都ダート1800mではなく、阪神ダート1800m。レイアウトは似ているものの、求められる適性は異なり、改めてコースレイアウトを振り返りつつ、2011年以降、阪神ダート1800m、古馬オープン・重賞レース22レースのデータから好走馬の輪郭をつかんでいきたい。
阪神ダート1800mは正面スタンド前の急坂手前からスタート。最初のポジション争いで急坂を通過、特徴として阪神の1、2コーナーは芝もダートもやや急で、ここまで先行争いがもつれると、外を回る馬のロスが大きくなる。反対に内枠の馬は押し込められ、不利を受ける場面も多く、ここをスムーズに回ることがポイントになる。
向正面は緩やかに下り、3、4コーナーはゆったり、後続も追いあげやすいレイアウト。そして最後の直線352m、残り200m地点、高低差1.6mの坂を越える。ここで先行馬の脚が鈍り、二転三転する場面もある。平坦の京都よりも最後の坂を我慢できるパワーが要求されるコースだ。
理想は真ん中より外目からの先行
ではここからは上記データを使って、具体的に予想のヒントになる好走パターンについて考えてみたい。
まず人気別成績をみると、1番人気は【9-4-2-7】勝率40.9%、複勝率68.2%とまずまず。その反面、2番人気【2-4-3-13】勝率9.1%、複勝率40.9%、3番人気【3-3-3-13】勝率13.6%、複勝率40.9%。複勝率は悪くないものの、勝率面で見劣る。1番人気の逆転候補は上位人気とは限らず、6番人気【3-2-3-14】勝率13.6%、複勝率36.4%など中波乱程度は十分あり得るだろう。
コース解説で触れたように1、2コーナーで不利を受けやすい極端な枠の1枠【1-1-3-37】勝率2.4%、複勝率11.9%、8枠【1-3-1-39】勝率2.3%、複勝率11.4%がイマイチ。勝率と複勝率のバランスでみると、真ん中から外より5枠【7-3-2-31】勝率16.3%、複勝率27.9%、6枠【5-3-2-33】勝率11.6%、複勝率23.3%あたりがよさそうだ。
次に位置取り別成績をみると、急坂で厳しくなるのか逃げ馬は【1-3-2-16】勝率4.5%、複勝率27.3%と3着以内に残る可能性はそれなりにありつつも、勝ちきれない。ちなみにこの1勝は11年ジャパンCダートのトランセンド。もう10年も古馬オープン・重賞で逃げ切り勝ちがない。
かといってダート中距離戦らしく中団、後方も苦しく、後方一気も2011年以降では20年アンタレスSウェスタールンドの1勝にとどまる。安定感は先行【15-10-7-48】勝率18.8%、複勝率40%だろう。器用に序盤から流れに乗れ、タイミングよく仕掛けられる、このコースは機動力も必要になる。
狙いは距離短縮組
次に臨戦過程に注目。前走距離からさらに好走戦歴を掘りさげ、データによって浮上する買いたい馬について考えてみたい。
前走が1800mだった馬が【6-10-13-120】勝率4%、複勝率19.5%と2、3着までといったケースが多く、不思議と勝ちきれない。有力候補のメイショウムラクモには気になるデータだ。狙いたいのは前走で1800mより長い距離を走った馬【11-10-6-92】勝率9.2%、複勝率22.7%だろう。それは最後の坂で時計を要した際、しぶとさを発揮できるスタミナが問われることを示す。
では距離短縮組について具体的に着順別成績をみると、長い距離で結果を出せなかった6着以下は【0-1-1-38】と巻き返しは少ない。評価すべきは掲示板以上だ。たとえば1着は【5-3-2-16】勝率19.2%、複勝率38.5%、クリンチャーとスワーヴアラミスが当てはまる3着は【2-0-2-12】勝率12.5%、複勝率25%と長い距離での好走が条件になる。
その前走での位置取り別成績をみると、コース傾向のデータと同じく先行していた馬が【10-5-2-33】勝率20%、複勝率34%と好成績。上記3頭はいずれもこのデータにも合致。クリンチャーは昨年の阪神みやこS覇者、再浮上の可能性は高い。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2000-2004 00年代前半戦』(星海社新書)。
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