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【スプリンターズS】秋GⅠ開幕を告げる短距離決戦の歴史 ジャンダルムに親子制覇託す2002年覇者ビリーヴ

2021 9/28 06:00緒方きしん
スプリンターズS過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

いよいよ秋GⅠが開幕

神戸新聞杯でダービー馬シャフリヤール、オールカマーで大阪杯勝ち馬レイパパレがどちらも4着と敗北。中京・中山の日曜メインでいずれも2番人気→5番人気による決着が見られる週末となった。

いよいよ秋GⅠ開幕の時を迎えた。第一戦は、快速馬が火花を散らすスプリント戦・スプリンターズS。今年は春のスプリントGⅠ高松宮記念の1、2着馬であるダノンスマッシュとレシステンシアが参戦する。さらには3歳馬ピクシーナイト・メイケイエール、今年になってスプリントに転向した良血馬ジャンダルムなど、多彩な面々が揃った。

1967年創設という長い歴史を持つスプリンターズS。90年代は年末のGⅠとして親しまれたが、今ではすっかり秋の短距離王決定戦として定着した。過去にはサクラバクシンオーやタイキシャトル、デュランダルやロードカナロアなど、その当時を代表する快速王が勝利してきた一戦。昨年の覇者グランアレグリアはこの次走マイルCSも勝利し、JRA賞最優秀短距離馬に選出された。今回はスプリンターズSの歴史を振り返る。

1番人気は好成績。しかし荒れる一戦

スプリンターズS過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年で1番人気は3勝2着1回3着1回。2020年グランアレグリア、2018年ファインニードル、2017年レッドファルクスといった馬が人気に応えてきた。さらにさかのぼると2013年ロードカナロア(単勝1.3倍)、1997年タイキシャトル(単勝1.9倍)、1994年サクラバクシンオー(単勝1.6倍)といった名スプリンターが圧倒的な1番人気に推され、勝利している。

一方で、2016年に単勝1.8倍と人気を集めながらも12着に沈んだビッグアーサーをはじめ、2014年ハクサンムーン(単勝2.8倍、13着)、2001年ゼンノエルシド(単勝2.8倍、10着)など、1番人気が大敗するパターンも見られ、明暗が分かれている。上述のタイキシャトルも連覇をかけた1998年には単勝1.1倍で3着に敗れている。

また、1番人気こそそれなりに勝率が高いものの、馬券圏内全てが上位人気馬で決まるというパターンはそれほど多くはなく、2番人気-3番人気-1番人気で決着した2019年はむしろレアケースと言える。昨年は10番人気アウィルアウェイ、2016年には9番人気ソルヴェイグが3着に好走。2018年には2着が11番人気ラブカンプー、3着が13番人気ラインスピリットという結果となり、2頭のワイドは万馬券となった。

伏兵が勝利したケースとしては、スプリンターズSが従来の12月開催から秋開催へと移行した初年度、2000年のダイタクヤマト。こちらは単勝257.5倍の超大穴馬だったが、アグネスワールドやブラックホークらを相手に押し切り勝ちを収めた。

親子制覇を狙うジャンダルム

今年は2002年のスプリンターズS勝ち馬、ビリーヴを母に持つジャンダルムが出走する。ビリーヴは古馬になって才能が開花。夏に条件戦を連勝すると9月にセントウルSを勝利、そのまま4連勝でスプリンターズSを制した快速牝馬だった。翌年も高松宮記念や函館スプリントSを制覇する活躍を続け、連覇を目指したスプリンターズSではデュランダルの驚異的な末脚に差され2着となったものの、同年のJRA賞最優秀4歳以上牝馬に選出された。

引退後、ビリーヴは渡米。KingmamboやA.P. Indy、Medaglia d'Oro、Smart Strike、Kitten's Joyといったアメリカの一流種牡馬と配合された。Kingmamboとの間に生まれたファリダットは安田記念で3着、阪神Cや京阪杯などで2着など活躍。Medaglia d'Oroとの産駒フィドゥーシアはOP競走2勝、アイビスSDで2着など実績を残すと繁殖牝馬として渡米し、Gun Runnerとの間に生まれたグランアプロウソが今年デビュー戦で勝利を収めている。まさに、ロマン溢れる牝系として広がっている最中だ。

2017年デイリー杯2歳Sで、ビリーヴ産駒として待望の重賞制覇を果たしたジャンダルム。勢いそのままにホープフルSに挑んだが、そこではタイムフライヤーの末脚に屈して2着に敗れた。翌年には皐月賞やダービー等にも挑戦したものの、GⅠタイトルには手が届いていない。今回は、2018年以来となるGⅠ出走。スプリント戦で開花しつつある6歳馬が、スプリンターズS親子制覇を目指す。

牝馬の活躍も多い

スプリンターズSではビリーヴの他にも、グランアレグリアやストレイトガール、カレンチャン、スリープレスナイト、アストンマーチャンなど様々の牝馬が勝利を収めてきた歴史がある。1992年にはダイタクヘリオスやサクラバクシンオー、ヤマニンゼファーといった強豪を相手にニシノフラワーが華麗に差し切り勝ちを収めた。

今年もレシステンシア、モズスーパーフレア、メイケイエールといった牝馬が注目を集める。本来であれば、先日の北九州記念で熊本県産馬として初めて重賞を制したヨカヨカもここに名を連ねるはずだった。しかしヨカヨカは左第1指節種子骨々折で競走能力を喪失。無念の引退となった。

果たして、ヨカヨカの分まで快走を見せる牝馬は出てくるのだろうか。母として第二の馬生を歩むヨカヨカが、今後どのようなロマン溢れる牝系を築き上げてくれるかに思いを馳せつつ、秋のスプリント戦を楽しみたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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