「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【神戸新聞杯】あまたの名馬が通った神戸新聞杯の歴史 悲運の素質馬・リアファル

2021 9/21 06:00緒方きしん
神戸新聞杯過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

ディープ、キンカメ、オルフェ……名馬も通った伝統の一戦

3歳の『三冠』最後の残り一つをかけた戦いが本格化してきた。牝馬三冠は紫苑S・ローズSが終了。ローズSは超良血馬のアンドヴァラナウトが制して、秋華賞に向けた最後の切符を掴み取った。セントライト記念ではアサマノイタズラが勝利をあげている。

さて、もうひとつの菊花賞トライアル・神戸新聞杯。菊花賞に向けた有力な一戦であることは疑いようもない。今年も少頭数ながらレベルの高いメンバーが揃った。ダービー馬シャフリヤールに、青葉賞勝ち馬ワンダフルタウン、京都新聞杯勝ち馬レッドジェネシスが挑戦。さらには皐月賞・ダービーで3着のステラヴェローチェらも出走を予定している。

1953年に創設された歴史ある一戦。ディープインパクトにキングカメハメハ、オルフェーヴルにエピファネイア──過去に本レースを制覇した名馬は、数えきれないほど多い。昨年はコントレイルがここの勝利をステップに、菊花賞を制した。今回は神戸新聞杯の歴史を振り返る。

1番人気は絶大な安定感

神戸新聞杯2016~2020年の優勝馬,ⒸSPAIA



ここ5年、1番人気は5戦4勝。コントレイル1.1倍、サートゥルナーリア1.4倍、レイデオロ2.2倍、サトノダイヤモンド1.2倍と、それぞれが大きな支持を集め、それに応えてきた。唯一1番人気が敗れた2018年も、皐月賞馬エポカドーロとダービー馬ワグネリアンが人気を分け合い、最終的に単勝オッズ的は2.7倍と並んだ上での、2番人気ワグネリアンの勝利だった。

また、上述の2018年でもワグネリアンが勝利しているように、神戸新聞杯ではダービー馬が滅法強い。ダービー馬が勝利していない年も、2019年はロジャーバローズがダービー後に引退、2016年はマカヒキが凱旋門賞挑戦で渡仏していたなど理由が別にある。最後に神戸新聞杯でダービー馬が敗れたのは2010年。2番人気ローズキングダムが、ダービー馬エイシンフラッシュをクビ差凌いだレースだった。

馬券的にはあまり大荒れしないため穴党にとっては様子見となることも多い一戦。特に2019年と2017年は1番人気→2番人気→3番人気で決着している。とはいえ、2020年に14番人気ロバートソンキー(単勝112.7倍)が3着に食い込んだように、少ないながらも伏兵が食い込むことはもちろんある。

悲運の素質馬、リアファル

神戸新聞杯を制した馬で異色の存在と言えば、リアファルが挙げられるだろう。リアファルはデビューから6戦連続でダートを走った馬。その中でも伏竜S・兵庫CSで2着、鳳雛Sで3着など善戦していた。しかし7月に入って初芝で勝利すると、そのままの勢いで神戸新聞杯に出走。リアルスティールらを相手に逃げ切り勝利した。

リアファルはその後、菊花賞でも1番人気に推され、3着と好走。その後は怪我により能力の全てを出しきれずに無念の引退となったが、確かな実力を持つ名馬だった。彼のポテンシャルは、JDD馬クリソライト・宝塚記念勝ち馬マリアライト・最優秀ダートホース(2019年)クリソベリルといった優秀なきょうだいからも伺える。それだけに、故障が悔やまれた。

また、今年は昨年に続き中京での神戸新聞杯。2006年や1994年、91年、90年、さらには79年にも中京での神戸新聞杯が開催されたが、その当時は今とは違い2000m戦だった。79年の神戸新聞杯で3着だったアグネスレディーはその後に牝系を広げる活躍を見せ、孫世代ではアグネスタキオンも輩出。2008年にはそのアグネスタキオン産駒ディープスカイがここを制して、アグネスレディーの借りを返した。

上がり馬は台頭するのか?

神戸新聞杯といえば、3着馬にもご注目いただきたい。ワールドプレミアやトーホウジャッカル、ビッグウィーク、オウケンブルースリ、ソングオブウインドといった馬たちが、神戸新聞杯3着から菊花賞を制している。彼らの多くは上がり馬として、ここではじめて重賞参戦・一線級との激突を果たした馬だった。

今年の登録馬だとイクスプロージョンが、5月に未勝利戦を制したように上がり馬らしさがある。四代母は名牝バレークイーン。この一族は、リンカーンが4着、ヴィクトリーが3着、アンライバルドが4着など、神戸新聞杯で何かと悔しい思いをしていることが多い。昨年は菊花賞2着馬アリストテレスを輩出したが、こちらはトライアル未出走。果たしてイクスプロージョンはどこまで上位を狙えるだろうか。

また、ここ6年で4勝のルメール騎手は、重賞未勝利のキングストンボーイに騎乗する。こちらは先日急逝したドゥラメンテの産駒。怪我により菊花賞に参戦できなかった二冠馬ドゥラメンテの獲れなかったタイトルを手にすることはできるだろうか。菊の舞台に向けて、こちらも順調な滑り出しを目指したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。



《関連記事》
【神戸新聞杯】前走ダービー組が圧倒的! シャフリヤールとステラヴェローチェの1点でよし?
【オールカマー】複数データに一致、連軸不動レイパパレ! 相手もクラブ馬?
「関東馬の復権」「G1のルメール・川田・福永理論」 2021年上半期のG1をデータで振り返る