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【オールカマー】複数データに一致、連軸不動レイパパレ! 相手もクラブ馬?

2021 9/20 16:53勝木淳
オールカマーインフォグラフィック,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

伝統のGⅡらしく上位人気は堅実

サラブレッドやアラブといった品種、中央地方の所属を問わず、あらゆる馬に門戸を広げるレースといったコンセプトからオールカマーと命名されて60年以上が経った。第1回勝者メイヂヒカリのオーナーは、明治座を経営していた新田新作氏。力道山のタニマチとしても有名な人物で、役者がそろうオールカマーにふさわしい勝者だった。

天皇賞(秋)のステップレースとして定着してからは勝ち馬にオグリキャップ、ビワハヤヒデ、サクラローレルといった時代を作った名馬が並び、マツリダゴッホの3連覇など記憶に残る場面も多い。ところが、昨今の出走レースを絞るトレンドのあおりを受け、昨年はGⅠ馬不在の9頭立てと寂しいメンバーだった。今年はその反動なのか、GⅠ馬が複数エントリー、重賞勝ち馬がズラリと並ぶ好メンバーになりそうだ。ここは華やかなレースを期待したい。レース傾向について過去10年間(14年は新潟)のデータを使用して探っていく。


過去10年オールカマー人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【3-2-1-4】勝率30%、複勝率60%、勝率はやや頼りない印象だが、休み明けの実績馬が仕上がり途上の状態で出走、わずかに及ばないといったケースが目立つ。それでも大きく崩れず、着外に敗れた4頭のうちGⅠ馬は19年レイデオロのみ、残る3頭は夏の上がり馬だった。今年はレイパパレがスタンバイ。適性を考えても、馬券圏外は考えにくい。

3番人気以内は【6-7-5-12】、2・3番人気いずれも複勝率は60%で同率。今年もレイパパレ、グローリーヴェイズ、ウインマリリンなど上位人気候補は強力、3頭とも崩れる場面はないだろう。連下の伏兵はおおよそ7番人気以内、極端な波乱は狙いにくい。


過去10年オールカマー年齢別成績,ⒸSPAIA


上位人気が堅実というデータを裏づけるように主力世代の4歳【3-5-4-14】勝率11.5%、複勝率46.2%、5歳【5-3-5-34】勝率10.6%、複勝率27.7%が大半を占める。あって6歳【2-2-0-23】勝率7.4%、複勝率14.8%まで。なお、6歳の好走4頭は3番人気以内だった。


過去10年オールカマークラブ馬主別成績,ⒸSPAIA


直近4年でキャロットF3勝、社台RH1勝とこのレース、クラブ馬の活躍が目立つ。もっとも、社台、ノーザン系のクラブ馬はどのレースも強いが。内訳をみるとキャロットF【3-1-0-4】勝率37.5%、複勝率50%、社台RH【1-0-2-2】勝率20%、複勝率60%とこの2クラブが抜けている。今年はキャロットFからレイパパレ、社台RHからランブリングアレー、ステイフーリッシュらが出走予定。なおグローリーヴェイズらのシルクR【0-0-0-2】、ウインマリリン、ウインキートスのウイン【0-0-0-1】、どちらも意外に出走数が少ない。


軸はやっぱりレイパパレ

次に前走成績から個別具体的に好走パターンについて掘り下げてみたい。


過去10年オールカマー前走クラス別成績,ⒸSPAIA


とにかく前走GⅠが【7-6-2-17】勝率21.9%、複勝率46.9%と圧倒的。この10年、GⅠ馬不在の年はあっても、前走GⅠ組がいない年はなかった。今年も海外組を含め5頭が出走予定。ここの取捨選択がカギを握る。


過去10年オールカマー前走GⅠ組レース別成績,ⒸSPAIA


まずは内訳を。レース別成績を出すと、レイパパレ、アドマイヤアルバの宝塚記念は【4-2-2-5】勝率30.8%、複勝率61.5%とやはり有力。この2頭についてさらにデータで選別しよう。


過去10年オールカマー前走宝塚記念組着順別成績,ⒸSPAIA


宝塚記念での着順別成績をみると、レイパパレの3着は【1-0-0-0】。15年1着ショウナンパンドラはレイパパレと同じ4歳牝馬だった。当然ながら好走馬が強く、凡走馬の巻き返しは6~9着【2-1-0-1】まで。10着以下は【0-0-0-2】。12着アドマイヤアルバは厳しいか。


過去10年オールカマー前走宝塚記念組脚質別成績,ⒸSPAIA


データを複数チェックすると、信ぴょう性は高まる。宝塚記念での位置取り別成績を出すと、レイパパレが該当する先行は【1-1-1-2】勝率20%、複勝率60%。人気別でも触れたように余力残しで取りこぼすケースはあるだろうが、このデータからも崩れるとは考えにくい。レイパパレ軸は攻め方としては理にかなっている。

一方でグローリーヴェイズのクイーンエリザベス2世C(QE2C)は【0-1-0-1】。18年アルアイン3番人気2着、19年ウインブライト2番人気9着。アルアインはQE2C5着、ウインブライトは1着だった。2着だったグローリーヴェイズはどうだろうか。サンプルが少なくなんともいえない。5カ月ぶりの実戦なので、状態の見極めをしっかりしたいところだ。


過去10年オールカマー前走宝塚記念組脚質別成績,ⒸSPAIA


最後は複勝率19.2%の前走GⅡ組について。ここはゴールドギアが当てはまる前走目黒記念【0-0-2-4】複勝率33.3%。ウインキートス、ステイフーリッシュの札幌記念【0-0-1-10】複勝率9.1%。ステイフーリッシュは札幌記念では心房細動のため競走中止したが、現役屈指の2200m巧者。後ろ髪を引かれつつも、やはり間隔が詰まる札幌記念組は手を出しづらい。買うならゴールドギアだろう。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1990-1994 90年代前半戦』(星海社新書)。


オールカマーインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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