もはや定番! ダービー馬の始動戦
菊花賞トライアルが神戸新聞杯とセントライト記念の2レースになって21年。神戸新聞杯が関西圏唯一のトライアルレースになってから、ダービー馬は、キングカメハメハ、ディープインパクト、ディープスカイ、オルフェーヴル、ワンアンドオンリー、レイデオロ、ワグネリアン、コントレイルの8勝。このあと菊花賞に向かわない場合でも、世代限定戦を秋の始動戦に選択するケースは多い。
今年のダービー馬シャフリヤールも秋は古馬と戦う道を選ぶ公算が高いものの、ここを使うことになった。昨年のコントレイルのように圧倒的な強さで始動戦を飾るだろうか。今年の舞台も昨年と同じく中京芝2200m。ここではダービーとの関係に注目し、過去10年間のデータを調べていく。
1番人気は【8-1-0-1】勝率80%、複勝率90%と驚異的。着外1回は18年4着エポカドーロ。春は皐月賞1着、日本ダービー2着だった。3番人気以内【10-6-5-9】、基本的には非常に堅く、絞って買うべきレース。せいぜい6~8番人気の伏兵が2、3着に入る程度だ。
前走クラスに注目すると、当然ながら前走GⅠ組が【9-6-3-31】勝率18.4%、複勝率36.7%と圧倒的。夏の上がり馬は通用しにくく、前走条件戦は【1-3-3-58】。春の実績馬が断然優勢である。
タイム差なしのダービー馬シャフリヤール
今年は日本ダービー出走馬が大半を占めるメンバー構成なので、やはりそれらの取捨選択がカギを握る。ここからはさらに詳しく調べてみよう。
過去10年、前走日本ダービー1着だった馬は【5-0-0-0】とパーフェクト。ダービー馬は休み明けでも世代限定戦では負けない。シャフリヤールには非常に心強いデータだ。また確率を着順別でみると、5着以内と6着以下の間に断崖が見える。今年は3着ステラヴェローチェが出走予定。2着エフフォーリアは天皇賞(秋)直行予定、4着グレートマジシャン、5着サトノレイナスは休養中。シャフリヤールとステラヴェローチェ1点に絞ってもいいぐらいだ。
シャフリヤールは神戸新聞杯こそ突破しそうな情勢だが、問題はこの後だろう。00年以降、日本ダービーをタイム差なしで勝った馬はアグネスフライト、エイシンフラッシュ、ディープブリランテ、マカヒキ、ロジャーバローズの5頭。その次走は【1-2-0-1】(ロジャーバローズは1走もせずに引退)。勝利を飾ったのはマカヒキのニエル賞のみ。加えてその後、勝利を挙げた馬はエイシンフラッシュしかいない。
大接戦で日本ダービーを制した馬は苦戦するというデータがある。もちろん、シャフリヤールはデビュー以来、常に接戦を制してダービー馬の座を射止めた勝負強い馬。接戦に強いという長所が、タイム差なしのデータを越えることはある。さらに古馬になって復活したエイシンフラッシュはシャフリヤールと同じ藤原英昭厩舎の管理馬。ノウハウは十分すぎるほど蓄積されている。神戸新聞杯含め、タイム差なしで勝ったシャフリヤールのその後にも注目したい。
さて話を神戸新聞杯の傾向に戻そう。前走日本ダービー組の位置取り別成績を出すと、先行【2-1-0-4】勝率28.6%、複勝率42.9%、中団【6-3-0-10】勝率31.6%、複勝率47.4%が好走ゾーン。後方【0-2-2-10】複勝率28.6%も悪くないが、先行、中団が優勢だ。シャフリヤール、ワンダフルタウンが中団、後方だったステラヴェローチェはやや不利か。
日本ダービー組以外はあまり芳しくないが、前走GⅢが【0-1-2-7】複勝率30%、このうち前走がラジオNIKKEI賞だった馬【0-1-2-5】。ここを着順別にみると、1着【0-0-2-0】、6~9着【0-1-0-1】から好走馬が出ている。しかし、出走想定されていたタイソウが故障で回避となったため、今年は該当馬なし。やはり今年はシャフリヤールとダービー組の組み合わせがベストだろう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1990-1994 90年代前半戦』(星海社新書)。
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