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【札幌記念】純白の女王ソダシ、北の大地でさらに進化! ハイレベルな一戦、評価すべき馬とは

2021 8/23 10:27勝木淳
2021年札幌記念のレース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

秋に向けてソダシ、不安なし

札幌記念は夏の終わり、秋の入り口を日高の山々から吹き込む風とともに告げる。秋にかける牝馬2頭、ソダシとラヴズオンリーユーの登場はその象徴だった。デビュー以来はじめて2000mを超える距離に挑んだオークスで初黒星を喫したソダシ。秋の目標はクラシック最終戦の秋華賞。小回り2000mは差し詰め予行演習だろう。

オークスから約2年の時を経て、GⅠ勝ちを香港で記録したラヴズオンリーユーは春のドバイで、先日、英国インターナショナルSを圧勝したミシュリフの3着。この秋は11月にデルマー競馬場で行われるブリーダーズCフィリー&メアターフが最大目標。5歳牝馬、もしかすると国内で走るのは最後になるかもしれない。それぞれが実りある秋に向け、北の大地から動き出した。

レースは戦前の予想通り、七夕賞を勝ったトーラスジェミニがハナを奪い、ソダシが大外枠から番手につける。ソダシは、オークスで露呈した序盤の緩い流れへの対応をなんとかクリア。オークスは自身としては詰まった間隔で精神的な余裕がなかった。間隔さえとり、ゆとりを保てれば中距離も大丈夫だろう。前半1000m通過は極端に遅くはない59.9。ソダシにとって走りやすかった。

先行勢優位を悟ったブラストワンピースが3コーナー手前で大外をまくる。この地点、残り800mからラップは一気に上昇。11.8-11.8-11.7-11.9は本当に力がある馬でないと乗り越えられない。元々は小回りで荒っぽいレースが得意なブラストワンピースのまくりに対して、ソダシはそれを行かせるのではなく、受けて立った。あえてレースラップを早めにあげて抵抗、まくりを突っぱねてみせた。

1年前、札幌2歳Sでオークスを勝ったユーバーレーベンのまくりをはねつけた姿が重なる。レベルの高い持続力勝負こそ、ソダシの父クロフネ最大の武器。これがクロフネ産駒芝2000m以上の重賞初勝利。ソダシは進化したクロフネ産駒といっていい。秋に向けて距離への不安はなくなった。同世代では頭ひとつ以上抜けている。

GⅠ馬の叩き合いに割って入ったマイネルウィルトス

早めにペースがあがる競馬はラヴズオンリーユーにとっても得意なパターンだった。父ディープインパクト・母の父ストームキャットの真骨頂は一瞬の切れより、ハイレベルな持続力。勝てるパターンではあった。

川田将雅騎手は発馬直後からずっと外目を意識した。馬群に入れるつもりはなく、いかに負担を少なく勝負できるかを考えていただろう。ブラストワンピースがまくったタイミングで内から外に出てきたサトノセシルとの間で狭くなり、勝負所も大外。上記のハイラップを大外から攻めて2着確保は力の証。秋に向けて消耗しない競馬で結果を出す、川田騎手は課せられたミッションはクリアした。米国では自力で勝ちに行く競馬ができるはずだ。

主役の牝馬2頭の次に来たのはペルシアンナイト。昨年の札幌記念2着馬が意地を見せた。こちらは横山武史騎手が馬の持ち味を巧みに引き出した。最初の正面直線ではゆったり運び、ラヴズオンリーユーの背後。そこからインコースに潜り、コーナーリングでポジションをうまく逆転させた。発馬直後のまま後ろにいては苦しかっただろう。

父ハービンジャーらしく、コーナーで加速する競馬は得意。ブラストワンピースとソダシの攻防はこの馬に味方した。札幌のゆったりしたコーナーはインから攻めて、直線で進路を作る、これが必勝パターン。今年も札幌で絶好調モードの武史騎手らしい攻め方が、ペルシアンナイトの得意パターンにかみ合った。しかし、それだけ上手くいった結果ではある。これをして実績馬の復活と考えるのは早い。次は舞台と騎手次第だろう。

これら実績馬を相手にマイネルウィルトス4着は光る。断念はしたものの、凱旋門賞に登録したラフィアンの期待馬。後半のラップが厳しいハイレベル戦で最後にブラストワンピースを捕らえた。持久力戦に強く、スタミナは相当なものがある。反面、中距離戦の軽い競馬では苦しいだろう。

凱旋門賞はさすがに……とは思うが、もっと長い距離に挑戦する、もしくはレベルの高い厳しい流れになった際には前で一頭だけ粘るというシーンもあるかもしれない。馬場が悪化したときなど舞台設定によっては大穴として警戒したいところだ。

ステイフーリッシュとバイオスパークの2頭が残念ながら競走中止。手ばなしにいい競馬だったとは言えないところだが、前後半1000mは59.9-59.6、勝ち時計1.59.5は「限りなくGⅠに近いGⅡ」といわれる札幌記念らしい格調高い競馬だった。秋はすぐそこだ。

2021年札幌記念のレース展開図,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。



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