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【キーンランドC】悩ましいメイケイエールの取捨選択 連軸に最適な馬は?

2021 8/22 17:16勝木淳
キーンランドCインフォグラフィック,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

今年も波乱を視野に

スプリント界も他のカテゴリーと同じく、極力レース数を絞り、ゆったりと出走間隔をとって本番を迎える時代になった。秋の大一番スプリンターズS、有力ステップレースのセントウルSは本番まで中2週しかない。それを考えると、キーンランドCは中4週と理想的。北海道で調整する利点も含め、ここから本番に向かう馬は18、19年ダノンスマッシュ、19年タワーオブロンドンなど多い。

競馬のサイクルは我々の日常よりもスピード感がある。早くも秋への手がかりになりそうなキーンランドCについて過去10年間のデータをもとに探ってみたい。


過去10年キーンランドC人気別成績,ⒸSPAIA


夏の短距離路線というと波乱を期待したくなるものだが、このレースは1番人気【3-4-1-2】勝率30%、複勝率80%と堅い。先述の通り、サマースプリントシリーズを狙う馬と秋を展望する馬が交錯するレースであり、別定戦のため斤量差も小さく、まず実績馬が強い。ただし、今年はスプリンターズSを展望するようなGⅠ実績馬が手薄。上位人気は3歳メイケイエール、レイハリアが予想されるが、これで決まりといえるだけの馬はいない。

そうはいいつつ、10番人気以下は【1-0-0-62】。17年12番人気で勝ったエポワスしか好走はない。ちなみに、この年の1番人気は3歳モンドキャンノ。実績馬不在の混戦模様は今年の図式と似てなくもない。複勝率でみれば、2~9番人気は、7番人気【0-0-0-10】、8番人気【1-0-0-9】(1着は15年ウキヨノカゼ)を除くとほぼ横並び。今年はやや波乱を頭に入れ、視野を広くとりたいところだ。


過去10年キーンランドC年齢別成績,ⒸSPAIA


17年に9歳エポワスが勝利したものの、7歳以上は【1-1-1-26】とベテラン勢は基本的には厳しい。GⅠ実績馬セイウンコウセイは8歳。つねに重賞で勝ち馬から1秒以内にくる堅実さは買えるが……。一方、メイケイエールやレイハリアの3歳も【1-2-0-19】勝率4.5%、複勝率13.6%とイマイチ。16年2番人気1着ブランボヌールは当時、桜花賞8着、NHKマイルC6着からここに駒を進めた。桜花賞18着だったメイケイエールとの比較は難しいが、キャラクターとしては似てなくもない。

となると、主要世代は4歳【4-4-4-21】勝率12.1%、複勝率36.4%、5歳【4-2-4-31】勝率9.8%、複勝率24.4%のふた世代。実績馬では阪急杯2着の5歳ミッキーブリランテ、昨年の勝ち馬エイティーンガールなどが該当する。


過去10年キーンランドC枠別成績,ⒸSPAIA


札幌芝1200mといえば枠順の有利不利はなさそうな舞台だが、このレースでは7枠【3-1-3-13】、8枠【1-2-2-15】など外枠の成績がいい。反対に1枠【1-0-0-16】、2枠【1-0-2-14】、3枠【0-1-0-18】と内枠は苦戦。札幌芝1200mは最初のコーナーまでが函館より短く、ペースが上がりにくい。ハイペースになりにくい1200m戦は馬群がバラけず、ひと塊になって進む場合が多い。そのストレスがこの傾向に反映している。外枠に入った馬の評価はあげておきたい。


頼れるのはミッキーブリランテ

さらにここからは前走データから好走パターンについてより詳しく掘りさげたい。


過去10年キーンランドC前走クラス別成績,ⒸSPAIA


実績馬がそれなりに好走するという傾向とともに、前走3勝クラスの上がり馬が【1-2-1-5】勝率11.1%、複勝率44.4%と目立つ。ただ好走した馬はすべて前走が北海道シリーズの3勝クラスだった。この点は気に留めておきたい。

数字として目立つのは前走GⅢ【6-4-4-47】勝率9.8%、複勝率23%。まずはここを詳しくみると、当然ながら好走は前走サマースプリントシリーズの函館SS【4-2-2-24】、アイビスSD【2-0-1-16】、CBC賞【0-2-0-5】が大半。今年のメンバーでは上位着順含め多数参戦予定の函館SSがカギを握る。


過去10年キーンランドC前走函館SS組着順別成績,ⒸSPAIA


函館SSでの着順別成績をみると、3着以内が【3-2-2-7】、4着以下【0-0-0-16】とくっきり。ちなみに残る1勝は19年函館SS取消だったダノンスマッシュ。今年の登録馬では3着だったミッキーブリランテだけが当てはまる。3歳馬危うしとみるならば、この馬が軸向きではなかろうか。


過去10年キーンランドC前走GⅠ組レース別成績,ⒸSPAIA


では実績馬が当てはまる前走GⅠ【1-2-2-8】勝率7.7%、複勝率38.5%についてレース別成績をみる。先述のブランボヌールが該当するNHKマイルC【1-0-0-3】が3歳限定戦では唯一。前走が桜花賞だった馬はキーンランドCが重賞になって15年間で、たった1頭。07年桜花賞18着ニシノチャーミー(9着)しかいない。メイケイエールの桜花賞での内容から、間隔が開くこと、400mの距離短縮は悪くはなさそうだが……。


過去10年キーンランドC前走マイルGⅠ組脚質別成績,ⒸSPAIA


もうちょっと粘って、前走がマイルGⅠだった馬の位置取りをみると、メイケイエールが当てはまる先行【1-0-0-3】を含め中団ぐらいまでで競馬をした馬に良績が集まる。スプリントへの路線変更は悪くはないが、一発で解答を出せるか不透明だ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。


キーンランドCインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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