多彩な面々のユニコーンS
新馬戦も始まり、素質馬が続々とデビュー。土曜日には白毛馬・ハイアムズビーチがデビュー勝利をあげた。さらに札幌ではカイカノキセキが2歳コースレコードを更新。さらにはシルバーステート産駒やリオンディーズ産駒が勝利をあげている。
ハイアムズビーチは新種牡馬ドレフォンの産駒で、新興勢力の種牡馬たちが勢いに乗っている。そんな中で、日曜日の2重賞はどちらもディープインパクトの孫が勝利。こちらも世代交代を感じる結果となった。
さて、今週はユニコーンS。かつては『4歳ダート三冠シリーズ』の一角を形成した、3歳ダートの出世レースである。昨年はやはり新興勢力の種牡馬であるAmerican Pharoahの産駒、カフェファラオが勝利。今年に入ってからフェブラリーSも制するなど、ダート界を牽引する1頭となった。多くの名馬を輩出してきた重要な一戦だけに、今週も見逃せないレースとなる。
今年も先人たちに追いつけ追い越せと、多彩なメンバーが集結。サウジダービーを制したピンクカメハメハをはじめ、端午Sや青竜S、昇竜S、ヒヤシンスSなどの勝ち馬が火花を散らす。今後訪れる、タレント揃いと名高い今年の地方3歳勢との対決に向けても、中央ダート戦線の勢力図を明らかにしていきたい。
人気馬が安定して勝利
ここ5年間、ユニコーンS勝ち馬は全て3番人気以内という安定感。最後に4番人気以下が勝利したのは2006年ナイキアースワークと、15年ほど遡る必要がある。
1996年の創設以降、条件や開催時期の変更などがありながらも、ここまで二桁人気馬が勝利したことはない。比較的平穏な決着が多い重賞と言える。
ただし、3着以内という観点では話は別。1着は1番人気カフェファラオ、2着は3番人気デュードヴァンだった昨年も、3着には11番人気のケンシンコウ食い込んで、ケンシンコウが絡んだワイドが32.1倍・41.0倍となった。2018年も3着は7番人気馬であり、2015年には9番人気馬ノボバカラが2着に食い込んでいる。この5年間では、上位3頭が1〜3人気で占められたのは2016年のみ。穴党の方は、ワイドで軽く穴狙いをするのも面白いかもしれない。
また、後々振り返ると「この馬が1番人気ではなかったのか」と驚くようなオッズであることも多い。ゴールドドリームもノンコノユメもサンライズノヴァも、このレースでは2番人気での勝利だったし、アグネスデジタルは4番人気だった。もちろん、カネヒキリが単勝1.1倍の圧倒的人気で勝利したように、早くから素質を見せつけていた馬が人気に応えた例もある。
これまでの実績に加えて、素質まで見切った上で本命馬を探したいところ。これから続いていくダートグレード競走などを前に、応援する馬を定めておくのも一興ではないだろうか。
歴代勝ち馬にはタイキシャトル・アグネスデジタルも
今もなお出世レースであるユニコーンS。2015年以降、昨年の勝ち馬であるカフェファラオまで、全てがその後GⅠ級競走を制している。特に2018年の勝ち馬ルヴァンスレーヴは、このユニコーンSを最後に、残りの現役生活は全てGⅠ級競走への出走だった。
ルヴァンスレーヴは同年にJDD・南部杯・チャンピオンズCを制覇。JRA最優秀ダートホースならびにNARグランプリダートグレード競走特別賞に選出された。
一方、ダート戦ではなく芝での活躍を見せた馬たちもいる。例えばタイキシャトル。1997年はワシントンカラーやオースミジェット、テイエムメガトン、サプライズパワーといった素質馬が揃っていたが、タイキシャトルは2着に2馬身半差をつけて快勝。
しかしその後は芝レースに専念し、歴史的名スプリンターとして名を馳せた。フランスGⅠを含む芝GⅠ・3連勝を成し遂げたタイキシャトルは、同年の年度代表馬にも選出された。
さらにその3年後、2000年のユニコーンSを制したアグネスデジタル。こちらもプリエミネンスやレギュラーメンバーらが集う好メンバーだったが、やはり2着に2馬身半の差をつけて勝利をおさめた。アグネスデジタルは同年に芝のマイルCSを制すると、翌年には国内外でダート・芝のGⅠ級競走を制覇。まさにその足がかりとなった中央重賞初制覇だった。
上記2頭は、種牡馬としても活躍し、最近はメディアでも取り上げられることが多い、記憶にも記録にも残る名馬となった。
ペルーサ産駒ラペルーズは地方帰り
前述の通り、今年のユニコーンSには多彩な面々が揃った。サウジダービーを制したピンクカメハメハは、なんとこれが国内では初めてのダート戦。ペルーサ産駒のラペルーズも、リステッド競走であるヒヤシンスSを制しているため注目が集まる。
ラペルーズは昨年夏〜冬まで、ホッカイドウ競馬に所属していたという経歴の持ち主。もしも地方から中央移籍後にユニコーンSを制したら、レース史上初の快挙となる。父から出遅れ癖まで受け継いでいるものの、このレースで父に重賞タイトルをプレゼントしたいところだろう。
過去を遡ると、地方所属のままユニコーンSを制した馬も1頭いる。それが、船橋所属・ヒミツヘイキである。2002年の同レースを7番人気ながら勝利する、まさに『秘密兵器』のような走りを披露した。同じレースにはアサクサデンエン・イングランディーレ・クーリンガーといった馬が出ていた中で、価値のある勝利を手にした。
海外帰りか、地方帰りか、中央ダート王道を進んできた馬か。今年の3歳ダート路線で、一歩抜け出す馬を探したい。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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