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【安田記念】1番人気は5連敗中、グランアレグリア牝馬連覇の快挙なるか 春のマイル王決定戦の注目ポイント

2021 6/1 06:00緒方きしん
2021年安田記念ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

絶対女王か、刺客か

ダービーは大激戦の末、シャフリヤールが勝利。福永騎手はこの4年でダービー3勝と、まさに「ダービー男」と言って良い戦績を残している。ワグネリアンで制したダービーが、福永騎手を更なる高みへと導いたのだろう。スローペースを極限まで見切った名騎乗だった。

春先とは一転して、1番人気には苦難が続いている。ソダシに続き、人気の無敗馬が敗れる展開となった。ただ、ハナ差に泣いた横山武史騎手はいずれこの雪辱を果たしてくれることだろう。

さて、今週は安田記念。ディフェンディングチャンピオンのグランアレグリアが参戦し、こちらも見逃せない一戦となる。さらには一昨年の覇者・インディチャンプ、デビュー以来掲示板を外していないサリオス、年明けから覚醒したケイデンスコールなど、実績馬や素質馬が参戦。

スプリント〜マイル路線では「絶対女王」と言って良いグランアレグリアに様々な馬が挑む、楽しみな安田記念となった。ここ数年は馬券的にも「オイシイ」結果になることが多いレースであり、穴党にとっては盛り上がる一戦だろう。3年連続で外国馬の参戦はないが、昨今の事情を踏まえると仕方ないだろう。

オッズ的には圧倒的なグランアレグリアだが、ここ数年の傾向からすると集中する人気に危うさを感じないわけでもない。当然、出走する全ての馬にチャンスがある。アーモンドアイが連敗したレースを制するのは、どの馬だろうか?

ここ数年は1番人気が苦戦

安田記念過去5年間の優勝馬ⒸSPAIA



ここ5年間、1番人気馬は未勝利。2013年から、ロードカナロア→ジャスタウェイ→モーリスと3年連続で1番人気が勝利していたが、そのモーリスが連覇を狙った2016年に8番人気ロゴタイプが優勝して以来、1番人気の苦戦が続いている。ここ2年は歴史的名牝であるアーモンドアイが1番人気を背負ったが、3着→2着と、勝利には手が届かなかった。

今年は、そのアーモンドアイを破ったインディチャンプ・グランアレグリアが揃って出走。2019年は4番人気・単勝19.2倍のインディチャンプと3番人気・単勝12.5倍のアエロリットが、1番人気・単勝1.7倍アーモンドアイの猛追を振り切った。2020年は3番人気・単勝12.0倍のグランアレグリアが直線で1番人気・単勝1.3倍のアーモンドアイを突き放した。勝ち馬は2頭とも、その年のJRA最優秀短距離馬に選出。その2頭が今年も再度激突する。

一方、2017年は7番人気のサトノアラジンと8番人気のロゴタイプによるワンツーで、馬連は万馬券となった。2018年・2016年も馬単は万馬券となっている。ちなみにブラックホーク・ブレイクタイムがワンツーを決めた2001年は、馬連1206.0倍と『十万馬券』が飛び出した。

また、1990年以降、安田記念を連覇した馬はヤマニンゼファー・ウオッカの2頭のみ。今年その権利を唯一有しているグランアレグリアがその2頭に肩を並べるかにも、注目が集まる。

3歳馬による安田記念挑戦の歴史

今年は、2014年以来となる3歳馬の安田記念挑戦がある。それがNHKマイルC覇者・シュネルマイスターだ。2000m戦の弥生賞こそ2着に敗れているものの、それ以外は3戦全勝と、世代屈指のマイラーと言える。

ここ3戦コンビを組んでいたルメール騎手はグランアレグリアとのコンビが決まっているため今回は鞍上が変わるが、それでも安田記念に挑戦するという陣営の姿勢に敬意を表したい。

安田記念に挑戦した3歳馬は、2000年以降5頭。2000年イーグルカフェが13着、2004年メイショウボーラーが11着、2013年エーシントップが17着、2014年ミッキーアイルが16着と大苦戦する中、2011年のリアルインパクトは9番人気ながら1着と大金星をあげている。また、1997年にはスピードワールドが3番人気3着と好走した。

ミッキーアイルは未勝利戦からNHKマイルCまで5連勝でGⅠ馬に上りつめた、当時において新進気鋭のマイラーだった。

NHKマイルCでは単勝1.9倍の圧倒的人気に応え、安田記念でも2番人気に推されていた。レースでは得意の逃げを披露するも、不良馬場も響いたか直線で大失速し、優勝したジャスタウェイに2秒差をつけられた。その2年後にはJRA最優秀短距離馬に輝く実力派にも、3歳での安田記念挑戦はあまりにも分厚い壁だった。

一方リアルインパクトは、牡馬として初めて父ディープインパクトにGⅠタイトルをもたらした。新馬戦勝利後は、朝日杯FSで2着・NHKマイルCで3着など好走しているものの、勝ち星はなし。通算2勝目が、古馬相手の大金星だった。リアルインパクトはその後、5歳、6歳でも重賞を制覇。さらに渡豪し、7歳でオーストラリアGⅠを制覇している。

引退後は種牡馬としても活躍。多くはない産駒から順調に勝ち上がり馬を輩出し、種付け料も向上、人気種牡馬となった。その初年度産駒であり代表産駒でもあるのが、今回有力馬の1頭でもあるラウダシオン。そちらの走りにも、注目したい。

牝馬による安田記念「連覇」なるか?

安田記念の創設は1951年。当時は「安田賞」の名前で開催されていた。初めて連覇を達成したのは、第2回・第3回の覇者である、牝馬のスウヰイスー。その後は10年以上に渡り牡馬の勝利が続いたが、1965年のパナソニツク、1969年のハードウエイなど牝馬も勝利して意地を見せた。

1982年にスイートネイティブが勝利してからはまた牡馬の勝利が続いたが、1991年にダイイチルビー、1994年にノースフライトが勝利。そしてまた、2008年のウオッカ勝利まで牡馬の勝利が続いた。

──牝馬が強い時代になったと言われて久しい。しかし、マイルの安田記念は牡馬の勝利が多いのも事実。昨年グランアレグリアが勝利したのは、ウオッカ以来11年ぶりの牝馬による白星で、アーモンドアイ撃破だけではなく「牝馬による安田記念制覇」という点でも快挙だったと言える。逆に言えば、それだけ価値のある難しい勝利だったということだ。

今年のグランアレグリアは圧倒的な人気を集めるが、歴史的快挙の真っ只中にあるということは心に留めておきたい。今年はどの馬が、上半期のマイル王者となるのだろうか。3歳馬か、牝馬か、それともベテラン牡馬が意地を見せるのか。約1分半のドラマが、幕を開ける。

《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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