不気味な6歳勢
昨年の安田記念でアーモンドアイに先着して以来、グランアレグリアはマイルGⅠ3連勝中。もはやこの距離で負ける予感がない。そんな心理があるからか、今年の安田記念も登録数は15頭。アーモンドアイがいた昨年とは異なり、グランアレグリア一強という図式になるが、果たして結果はその通りになるだろうか。ここでは過去10年分のデータを基に安田記念の好走パターンを考える。
98年タイキシャトルの勝利後、09年ウオッカまで安田記念は1番人気が勝てない時代があった。その間、馬券圏内に入った馬も99年グラスワンダー2着、03年3着ローエングリンの2頭しかおらず、安田記念は波乱含みのGⅠだった。荒れると直感的にイメージするのはベテランの証だろうか。
直近2年はアーモンドアイが1番人気に支持され、3、2着。大きくは崩れなかったようにここ10年で1番人気は【3-2-2-3】勝率30%、複勝率70%と堅実。馬券圏外だったのは11年アパパネ6着、12年サダムパテック9着、17年イスラボニータ8着の3頭。ヴィクトリアマイルでブエナビスタに先着したアパパネがいるのは気になるが……。
2番人気以下は9番人気まで勝ち馬がポツポツと出現。また10番人気以下から4頭も3着馬が出現しており、馬券は丁寧に組み立てたい。
今年はNHKマイルCを勝ったシュネルマイスターが登録。3歳馬の安田記念挑戦は14年ミッキーアイル2番人気16着以来。その成績は【1-0-0-2】。過去には11年9番人気1着リアルインパクトがいる。同馬はNHKマイルC3着だった。
3歳を除き、古馬の勝率では4歳【4-2-2-27】勝率11.4%、複勝率22.9%がトップ。スピードとスタミナどちらも必要な東京マイルでは4歳が勝ち切る傾向。サリオスら4歳勢が逆転候補だろうか。グランアレグリアの5歳は【2-5-3-42】勝率3.8%、複勝率19.2%。2、3着までといった傾向には注意だ。不思議なことに6歳が【3-2-4-37】勝率6.5%、複勝率19.6%と5歳よりいい。ベテランが侮れず、今年は19年勝ち馬インディチャンプ、金鯱賞で大金星をあげたギベオン、19年天皇賞(秋)2着ダノンプレミアムなど実績馬がそろう。
グランアレグリアに厳しいデータはあるが…
ここからは具体的に前走成績から安田記念好走パターンについて考えてみよう。まずは前走クラス別成績から。
今年の登録馬に該当するなかで確率が高いのは前走GⅢ【2-0-0-10】勝率16.7%。勝った2頭はいずれもダービー卿CTからここに挑んだ。2着カテドラルと6着トーラスジェミニが候補になるが、同レースから好走した2頭は前走1、2着だった。評価するならカテドラルに絞ってよさそう。注目はグランアレグリアなど有力馬が該当する前走GⅠ【4-5-2-46】だろう。
前走GⅠ組のレース別成績を出すと、高松宮記念【2-0-0-5】勝率28.6%、NHKマイルC【1-0-0-2】勝率33.3%、ヴィクトリアマイル【0-3-0-12】複勝率20%あたりが主要なライン。グランアレグリアが当てはまるVマイル経由が勝っていない。前記のアパパネなど凡走も多く、2着にきた3頭は18、19年アエロリット、20年アーモンドアイ。Vマイルから安田記念となると、出走間隔は中2週と詰まる。格も舞台も同じだが、牝馬限定戦から牡馬相手になり、相手関係が強化される。この厳しい状況を女王は打破できるか。
Vマイルの着順別成績を出すと、グランアレグリアの1着は【0-1-0-2】。自身が昨年負かしたアーモンドアイ2着がある。しかし冷静に考えて、アーモンドアイにとってのグランアレグリアのような強敵が今年のグランアレグリアにいるだろうか。
別角度からVマイルでの位置取り別成績を調べる。アーモンドアイも含め、Vマイルから好走する馬のVマイルでの位置取りは逃げ【0-1-0-0】、先行【0-2-0-5】と前受けしていた馬に限られる。中団だった馬は【0-0-0-4】、後方【0-0-0-3】。4コーナー10番手だったグランアレグリアはここに引っかかる。そうは言いつつ、繰り返しになるが、だからといってグランアレグリアを逆転できる強力候補が見当たらず、あっさりこのデータも覆されそうな予感がある。
全8勝すべて東京のダイワキャグニー
ではグランアレグリア以外に好走パターンに合致する馬はいるだろうか。まずはGⅠ組で成績がいい高松宮記念【2-0-0-5】について。
ここ2年、安田記念で1、3着のインディチャンプについて高松宮記念での位置取り別成績で考える。同馬は高松宮記念では4コーナー9番手から差してきて3着。中団だった馬は【2-0-0-2】。好走2頭(13年ロードカナロア、20年グランアレグリア)いずれもここに当てはまる。巻き返しがあってもいい。
このほか、今年目立つのはラウダシオンなどステップレースの京王杯SC、マイラーズCを使った馬、前走GⅡ組【3-5-8-70】だ。
ざっくりGⅡ組の着順別成績を出すと、前走でGⅡを勝った馬は【0-1-2-13】、2着だった馬【0-2-0-10】、3着だった馬【0-1-2-12】と安田記念でそこそこ走る馬は出るが、勝った馬はいない。京王杯SCを勝ったラウダシオン、マイラーズCを勝ったケイデンスコールはデータからは連下評価となる。
GⅡ組の好走パターンは4着【2-0-1-5】勝率25%、複勝率37.5%だ。ここに該当するのがマイラーズC4着だったダイワキャグニー。ベテランの7歳セン馬にグランアレグリア逆転を託すのは厳しいが、元来東京は8勝すべてをあげた得意舞台。不慣れな阪神でGⅡ4着はまだまだやれる証。好走しても不思議と人気にならないタイプで妙味はありそうだ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。
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