当日の波乱の空気を払拭
16-6-5-7番人気、WIN5対象レースが初っ端から荒れ模様、残り9票で迎えたヴィクトリアマイルは単勝1.3倍の圧倒的1番人気グランアレグリアが出走。波乱の空気を見事に一蹴してみせた。WIN5は最終的には的中2票、配当は3億591万1340円。グランアレグリアを買い目に入れていなかったものが7票あった。
グランアレグリアは藤沢和雄調教師が昨年から示唆していたように、5歳シーズンは中距離戦を照準に定め、初戦は芝2000mの大阪杯。距離もコーナー4回というコース形態も初、重馬場も高松宮記念2着以来という厳しい状況下で4着敗退。敗因は距離、コース形態、馬場とあらゆるものが複合的に作用したものだった。不運としか言いようがない。
その大阪杯から中5週、今度は慣れた東京競馬場、それもマイル戦。雨も心配するほどではなく良馬場と、グランアレグリアにとってすべてが好転した。ツキに見放されることでリズムを崩しかねなかったが、波乱の空気と一緒に、そのイヤな雰囲気も見事に払いのけた。グランアレグリアには実力とともに運もある。これだけ条件が味方すれば、GⅠとはいえ、牝馬限定戦では負けるわけがない。最後の直線では懸命に走るライバルを横目に、段違いにいい手応えで突き抜けた。
隊列すんなり、スローペースに
大外枠に回ったレシステンシアはスプリント戦で控える競馬をした直後であり、武豊騎手は無理に逃げるようなことはない。そうであっても、クリスティ、イベリス、ディアンドル、スマイルカナと先行型がそれなりにそろい、ミドルペース以上ではないかと予想された。実際はクリスティがハナへ行き、行く意志はあったイベリスが外からきたスマイルカナ、レシステンシアの動きに封じられ、行けなかった。ディアンドルは速くなると踏んで、一歩引いた。
こうして隊列はすんなり決まり、前半800m46.0。昨年の同区間は45.6。今年は緩い流れで馬群は一団で進んだ。道中の押しくらまんじゅうで力を出せなかった馬もいただろう。
後半800mは11.6-11.2-10.9-11.3と33秒台前半以上の決め脚がなければ対抗できない流れになった。グランアレグリアはレシステンシア、ディアンドル、シゲルピンクダイヤらが叩き合った残り400~200m10.9を、中団から外目を通って余裕の手応えで抜けた。最後の200mも11.3というラップを楽に対応してしまった。
残り600mの3区間、グランアレグリアはおそらくすべて10秒台だったのではなかろうか。上がり600mは次位ダノンファンタジー33.0に0.4差つける32.6。スローペースにもかかわらず、4馬身差という大きな着差をつけた。昨年のアーモンドアイと同じく役者が違った。天候はなんとも言えないが、コーナーが少ない東京芝2000mならば、十分距離は克服できるだろう。最後200mのラップから距離延長で失速する場面は想像できない。安田記念連覇も目指してほしいが、アーモンドアイと同じく天皇賞(秋)を目標に逆算してもらいたい。
2着以下の評価は慎重に
WIN5残り9票のうち3票あったランブリングアレーが10番人気2着。グランアレグリアが完全に抜けてしまったので、叫ぶ場面はなかったかもしれないが、大健闘。しかし、グランアレグリア以外の好走馬は慎重に取り扱いたい。
ランブリングアレーは中距離のハイペースや道悪など、最後に時計を要する競馬が得意なので、スローペースの高速決着で差してきたのは注目。必ずしも適条件ではない状況での好走は、それだけ馬が絶好調だったということ。その分、ダメージも大きそうで、間隔を詰めてきたら警戒したほうがいい。本質はパワー型なので、ヴィクトリアマイルと似た条件での出走ならば嫌ってもいい。
3着は5番人気マジックキャッスル。昨年のオークスや前走阪神牝馬Sのように最後の進路取りに苦労しがちな馬。今回も最内枠でさばきが課題だったが、最後の直線は目の前にいたレシステンシアが内へ行き、スムーズにさばけた。緩急が少ないマイル戦では弾けきれないところがあり、理想は中距離戦だろう。今回は上手くいったが、進路取りに苦労する馬ではあるので、枠順や展開などしっかり見極めたい。
4着14番人気ディアンドルは最悪な馬場状態だった福島牝馬Sと同じく追ってからしぶとかった。充実期にある。先手を奪えず、他馬のペースでも競馬ができた点は収穫だろう。ただ、このレースは前半が緩いスローペースであり、好位から流れ込んだ競馬を着順や着差比較から過大評価されるようなら立ち止まって考えたい。先手を奪える展開がベストだろう。
2番人気レシステンシアは6着。枠順や臨戦過程から控える競馬は予測できたが、やはりその形でマイル戦だと良さが出ない印象。抜け出しかかったものの、なかなか抜け出せなかった。もっと速いペースでバテ比べのような競馬がよさそう。2歳の阪神JF以来、勝ったのは阪急杯しかなく、やや過大評価されがち。今後も人気になる馬なので、疑ってかかってもいいかもしれない。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。

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