芝っぽい血統が好走する舞台
ダート中距離路線の上半期大一番は6月30日大井の帝王賞。5月5日にかしわ記念はあるが、JRAから帝王賞へのステップレースとして、平安Sには例年、これから最上位クラスに挑む挑戦者が集う。かしわ記念を船橋のカジノフォンテンがJRA勢を一蹴、ダートグレード戦線は着実に地殻変動が起こっている。
下剋上の象徴である桶狭間から戦国時代になりつつあるダート戦線に名乗りを上げる馬はどの馬だろうか。そう、今年は中京ダート1900mが舞台。京都の平安Sのデータは使えないので、今回はコースのデータをとりあげる。データは中京改修以降、2勝クラス以上のダート1900m戦、30レースを使用する。
1番人気は【7-5-3-15】勝率23.3%、複勝率50%。同じ条件の1800m(74レース)は【25-9-6-34】勝率33.8%、複勝率54.1%なので、複勝率ベースでみるとあまり差異はないが、勝率に開きがある。穴の定番・6番人気【6-1-2-21】勝率20%、複勝率30%など中穴が多い傾向はあるものの、10番人気以下は【1-1-3-172】と振るわない。このコースは大振り禁物だろう。
種牡馬別のトップ10を出すと、ハーツクライ、ゴールドアリュール、ディープインパクト、ステイゴールドとダートっぽい種牡馬とそうではない馬が入り混じる。またトップ10で5位キングカメハメハ、7位ブライアンズタイム、10位ルーラーシップ以外はサンデー系が占める。やや芝のレースっぽい傾向がある。また、ブライアンズタイム産駒はJRAにおらず、残るはキングカメハメハとその子ルーラーシップ。これも芝っぽい。
ちなみに同条件の1800mトップ10には1位キングカメハメハ、4位シニスターミニスター、7位フレンチデピュティ、8位クロフネ、9位エンパイアメーカー、10位アグネスデジタルとサンデー系以外が半数以上を占める。中京ダート1900mはダート1800mとは異なり、芝っぽい血統が走るという点は覚えておきたい。
狙うなら、距離短縮組!
さらに中京ダート1900mの傾向をとらえるために前走距離に注目し、深掘りしていきたい。
前走距離と比較した成績をみると、前走が1900mだった馬は【4-8-6-36】勝率7.4%、複勝率33.3%。好走はするが、勝ちきれない。1900m戦はメンバーレベルが一枚落ちるレースも多く、そこからの臨戦は成功しにくいという事情があるようだ。勝率なら前走が1900m超だった馬、いわゆる距離短縮が【10-5-8-77】勝率10%、複勝率23%で強い。ダートの長い距離は1900mと同じくメンバーの質が落ちる傾向があるが、距離短縮で息を吹き返す馬が多いようだ。
なお、1900m未満だった馬は【16-17-16-242】勝率5.5%、複勝率16.8%。1900m以上と比べてレース数も多く、質が高い1800mがここに含まれていることを考慮すると、過信禁物ということだろう。前走がフェブラリーSだったオーヴェルニュを筆頭に、マーチS組のアメリカンシードやスワーヴアラミス、アンタレスS組のロードブレスなど距離延長組の取捨は慎重にいきたい。
具体的に前走距離別でみると、1800mは【16-12-15-177】勝率7.3%、複勝率19.5%と案外な結果。2000m【4-3-2-29】や2100m【5-2-3-27】が勝率10%以上、複勝率20%以上でいい。
では1800m組が含まれる距離延長組の前走着順別成績はどうだろうか。1着【6-3-3-46】を筆頭に掲示板を確保した馬の成績がよく、延長組は前走好走が条件といっていい。該当するのは、アンタレスS3着ロードブレス、5着アルドーレや新潟ダ1800mの吾妻小富士Sを勝ったサトノギャロスなど。1800m以下の重賞で大敗した馬は過信禁物だろう。
では前走が1900mだった馬はどうだろうか。同じく着順別成績をみる。1着【0-1-2-9】、2着【0-2-0-3】と連対馬が勝てていない点は、1800m以下の傾向とは異なるので、注意したい。3着以下は確率に差が少ないものの、3着【2-0-0-3】、4着【1-0-2-2】、5着【0-2-1-1】と掲示板以上だった馬は見逃せない。同舞台の鈴鹿Sを勝ったドスハーツは複穴候補としては面白い。
最後に短縮組の傾向をみよう。1着【0-1-2-11】は同距離組以上に物足りない。エンプレス杯を勝ったマルシュロレーヌや春光S(2100m)を勝ったヴェルテックスはコース傾向からは控えたいところ。2着【1-1-3-6】、3着【1-2-1-0】あたりがいい。除外の可能性があるものの、ブリリアントS3着サクラアリュールが該当。4着以下も悪くなく、ダイオライト記念4着だったマスターフェンサーはデータ的に面白い。米国遠征からの帰国初戦だった犬山特別(中京ダ1900m、2勝クラス)圧勝があり、コース適性も高い。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。
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