レースを左右したダノンザキッド
日本ダービーで皐月賞組は【8-7-5-68】(過去10年)。皐月賞での着順別成績をみると、1着【3-2-1-4】をはじめ、5着以内が【7-6-2-28】。皐月賞好走はすなわち日本ダービーへの登竜門。皐月賞の予想は「皐月賞であれば」という馬ではなく、日本ダービーまで展望できる馬を考える、これが鉄則だ。そう考えれば、2番人気1着エフフォーリアは、スケール感という意味では合格ラインにあった。共同通信杯の回顧でかなり高評価を与えてしまい、言い過ぎてしまったかもしれないと反省したわけだが、ひとまず皐月賞を勝ってくれてよかった。
そもそもこの世代、弥生賞ディープインパクト記念(以下、弥生賞)までは群雄割拠ではなかった。サートゥルナーリア、コントレイルと似た道程を歩むダノンザキッドが、先輩2頭と同じ道をたどるものと思われていたからだ。ぶっつけではなく、トライアルに出走、それも3着に敗れ、一気に混戦になった。その間に登場したエフフォーリアが勝った共同通信杯は、勝ち時計、最後の600mタイムともに秀逸、負かした馬たちが次走で重賞を勝ったことでその評価は上昇。それでも最終的には1番人気はダノンザキッドだった。この世代の中心はまだこの馬ということか。
レースを左右したのもダノンザキッドだった。田辺騎手らしくスローに落とそうと、しれっとハナを主張したタイトルホルダー。その内からワールドリバイバルが先頭を奪い、1コーナー。ダノンザキッドは外目で折り合えずにコーナーを迎えた。これは弥生賞で残した宿題だった。12.1-11.7-12.5-11.9-12.1、前半1000m通過1分0秒3はタイトルホルダーが弥生賞で作った1分2秒6より厳しく、折り合いが難しいダノンザキッドには幸いした。
ところが、3コーナー手前から逃げたワールドリバイバルがペースを上げられず、タイトルホルダーがそれを利用して動き、福永騎手のレッドベルオーブがさらに動いた。外からタイトルホルダーの直後につけたことで、ダノンザキッドの進路を塞ぐ形になった。ダノンザキッドは包まれることを嫌い、外にいたアサマノイタズラと接触しながらも進路を作りにいった。ここで馬にスイッチが入ってしまった。弥生賞で仕掛けがやや遅れ、タイトルホルダーの逃げ切りを許した経験から仕掛けざるを得なかった。外のアサマノイタズラも呼応、結果としてレースを早めに動かした。
ラップをみると、残り1000m標識通過後から3コーナーにかけて11.4-11.9。力のいる馬場でこのラップを刻み、コーナーも外からまくる形では厳しかった。ダノンザキッド15着、アサマノイタズラ16着。そう考えると、真っ先に番手からレースを動かしたタイトルホルダーの2着は特筆もの。スタミナや高次元での持続力を証明しており、弥生賞勝ちをフロック視された8番人気という評価は、日本ダービーでは大きく改めなければいけない。















