理想はキャリア3~5戦
2018年生まれの牡馬クラシック、その第一関門がやってくる。昨年は牡・牝ともに無敗の三冠馬に沸いたが、さて今年はどうだろうか。この皐月賞を勝利しなければ三冠はなく、皐月賞を勝った馬だけが三冠馬の権利を得る。ホープフルS2着のオーソクレース、スプリングS3着ボーデンが回避、その権利を持った馬は早くも16頭に絞られた。
まずは昨年6月に開戦した2、3歳戦を勝ち抜き、皐月賞の出走枠に到達した16頭を称えたい。一口馬主やPOGを経験した人なら、いかに険しい道のりだったのかをご存じだろう。ではその皐月賞で好勝負できる馬はどんな馬なのか。オルフェーヴルが三冠への第一歩を踏み出した2011年(東京)を除く、過去9年分のデータを調べる。
1番人気は【3-1-1-4】勝率33.3%、複勝率55.6%は評価がわかれる。9回中4回は馬券圏外、勝利の確率1/3、皐月賞は下馬評通りになるとは限らない。7番人気で勝ったのは18年エポカドーロ、8番人気は16年ディーマジェスティ、9番人気での勝利は17年アルアイン。近年でも伏兵の一発は目立つ。1、2着は9番人気以内から出現、3着の最低人気は17年12番人気ダンビュライト。1~4番人気も堅実だが、8番人気【1-0-3-5】勝率11.1%、複勝率44.4%など馬券的には難解なレースだ。
皐月賞は昨年6月から続いた激戦の先にある最初の目標。それだけにキャリアも重要な要素になる。たどり着くまでに多くの戦いを経験した馬は苦戦傾向。8戦以上は【0-0-0-10】なので、やはり出走するまでに消耗すると苦しい。本番で好走した馬のうち、過去9年の最大キャリアは13年ロゴタイプの7戦。近年は馬の将来性を考え、各陣営の見極めはシビア。とにかく出したいという馬は減り、いかに勝ち負けに持ち込めるかという視点が重要。そういった意味でも皐月賞は、日本ダービーよりも混戦になりやすい。計画的ローテによって余力たっぷりの参戦、これが理想で、良績は3~5戦に集中する。
最高評価は共同通信杯
ではここからはトライアルを中心に各馬がたどった道のりをデータで振り返りたい。
前走レース別成績を見ると、着度数トップは共同通信杯【4-0-1-8】。エフフォーリアとステラヴェローチェが該当する。このローテは取り扱いに注意。この4勝は12、14、15、16年とデータの前半部分に集中。この時期に集中したことで「皐月賞は前走共同通信杯直行組を狙え」と言われはじめたが、それ以降は19年3番人気3着ダノンキングリーのみで近年は空振りが多い。エフフォーリアは久々の共同通信杯組の皐月賞馬になれるだろうか。
共同通信杯での着順別では1着【3-0-1-3】が断然。よってエフフォーリアは合格、5着だったステラヴェローチェは苦しいか。ちなみに共同通信杯経由で皐月賞を勝った4頭は、共同通信杯を1分47秒台で乗り切るか、最後の600m33秒台前半の決め手を繰り出していた。エフフォーリアの記録は勝ち時計1分47秒6、最後の600m33.4でこれを満たす。2着ヴィクティファルス、3着シャフリヤールは次走重賞V。レースレベルは3歳戦ではナンバー1だろう。
そのヴィクティファルスが勝ったスプリングSは皐月賞で【2-1-3-29】。トライアルのなかでは好相性。その着順別成績をみると、
こちらは3着以内に優先出走権が与えられるが、そのボーダーラインである3着は【0-0-0-6】と厳しく、1着【1-0-2-5】、2着【1-1-1-5】が好走ライン。1、2着ヴィクティファルス、アサマノイタズラは評価したい。
そのスプリングSは雨の重馬場で行われ、1000m通過1分2秒5、後半800mは12.5-12.4-12.1-12.5。13年ロゴタイプや18年エポカドーロのように前半が締まった流れを先行するか、後半600mを連続11秒台(15年2、3着リアルスティール、キタサンブラック、20年3着ガロアクリーク)が好走パターン。重馬場だったことを割り引けば記録は悪くない。良馬場予想なら、決め脚比べになったときの適性を見極めたい。
2歳GⅠホープフルSを勝ったダノンザキッドが当てはまる前走弥生賞ディープインパクト記念(以下、弥生賞)は【0-4-2-31】。近年勝ち馬が出ていない点は気になる材料ではあるが、好走する馬は少なくない。
こちらは不思議と2着だった馬が【0-0-0-8】でさっぱり。1着【0-2-0-6】、3着【0-0-2-6】、4着【0-2-0-2】、2・4着馬は出走しないので、1着タイトルホルダー、3着ダノンザキッドが候補だが、データではダノンザキッドは3着が精一杯となってしまう。14年2着トゥザワールドを除くと、好走馬を出した年は後半1000m区間で200m11秒台というラップを2~3回連続で記録していた。今年の弥生賞は最後600m11.6-11.0-11.9だったので、好走ラインには入っており、弥生賞組は軽視できない。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。
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