「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【大阪杯】偉業に挑むグランアレグリア スロー傾向の大阪杯で初距離を克服なるか

2021 3/30 06:00高槻とおる
グランアレグリアに関するデータⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

グランアレグリアが優勝すれば歴史的な名牝に

昨年、無敗で三冠を達成したコントレイルが大阪杯でいよいよ始動。アーモンドアイ引退のあと、古馬最強馬としてGI戦線の主役を務めるためにも、ここは負けられない一戦になるだろう。もちろん、他陣営もコントレイルの優勝を指をくわえて見ているわけにはいかない。逆転の可能性を秘めた実力馬、素質馬の出走があり、見応えのあるレースになりそうだ。

コントレイルのライバル一番手として注目されているのは、安田記念、スプリンターズステークス、マイルチャンピオンシップと、古馬短距離GIを3連勝中のグランアレグリアだろう。ここ5戦中4戦で最速上がりを記録している切れ者牝馬。決め手勝負になれば、コントレイルをとらえ切るシーンまで期待させてくれる馬だ。

ただ、グランアレグリアの大阪杯優勝のハードルは相当に高い。歴代の強豪牝馬の成績を調べるうちに、あらためて実感してしまった。2011~2020年の過去10年間のJRA平地GIレースで、2歳、3歳の限定ではなく、牡牝混合レースで優勝を果たした牝馬は13頭。この13頭で計23勝をあげているのだが、これを芝2000m以上の条件に絞ると、その数はわずか8頭になる。

芝2000m以上の牡牝混合GIで優勝した牝馬ⒸSPAIA


10年間でわずかに8頭。牝馬が牡馬を相手に中長距離のGIを勝つことがどれくらい大変か、この数字を見るだけでも分かる。そして、この8頭に牡馬を相手に芝1600m以下の距離のGIを勝っている馬はいない。アーモンドアイでさえ安田記念で3・2着と勝ち星をつかむことができなかった。

牡馬相手の中長距離GIで好勝負できる馬は、そもそも牡馬相手の短距離GIを狙いにくることが少ない。短距離のスペシャリストを相手に、あえて厳しい条件を選択する必要はないからだろう。ところが、グランアレグリアはマイルGIどころか、1200mのスプリンターズステークスのタイトルもある短距離の実力馬。これで芝2000mの大阪杯で優勝すれば、まさに歴史に残る名牝といえるだろう。

内回りだが、大阪杯はスローの傾向

グランアレグリアにとって距離克服の壁が高いことは分かった。では、大阪杯のレース傾向や特徴は、グランアレグリアに有利に働きそうか、それともマイナスに出そうなのかを確認してみたい。GII時代も含め、過去10年のレースラップを検証してみよう。

阪神芝2000mの平均ラップ比較 2011~2020ⒸSPAIA


阪神の芝2000mは内回りコースを使ってレースが行われる。直線は外回りコースより100m以上短い356.5m(Aコース)だ。一般的に内回りや小回りのコースでは前有利の傾向になるので、後続も早めに動いていくものだが、阪神2000mでは前半の入りはゆっくりと、後半に速いラップが続くのが基本的な流れになるようだ。

過去10年のラップ、3Fの前後半差から大阪杯も先行馬有利の傾向が想像できるが、しっかりデータで確認してみよう。

大阪杯 3着以内馬の4角位置取り 2011~2020年ⒸSPAIA


30頭中20頭、全体の7割弱の馬が4角で6番手までのポジションを確保していた。10番手以下の馬も5頭いるが、このうち2015年1着ラキシス、2着キズナは不良馬場の開催での好走で、10年間で唯一の前傾ラップの年。大阪杯の中でも例外的なレースといえるだろう。

残る3頭は2011年2着ダークシャドウと、2012年1着、翌2013年2着のショウナンマイティだけ。GI昇格後は4角10番手以下のポジションを取った馬が3着以内に好走したことはない。先行力のある馬か、勝負所で仕掛けて好位まで進出できる自在性がないと、大阪杯での好走は難しいと考えた方がいいだろう。

自在性があるグランアレグリア

大阪杯の傾向はつかめたが、肝心のグランアレグリアの取捨をどうするべきか。今年のレースもメンバー的に速い流れにはなりそうもなく、レース後半に速いラップを刻む展開が濃厚だろう。スローの流れにグランアレグリアが戸惑ったり、掛かってしまう心配はないのか。誰もが気になるところだろう。

グランアレグリアは前走のマイルチャンピオンシップまで計10戦しているが、前半3Fと後半3Fで1秒以上後半の方が速かった後傾ラップを4レース経験している。その成績とレースぶりを確認してみよう。

グランアレグリア 前後半差マイナス1.0秒以上のレース経験ⒸSPAIA


強烈な決め手の印象が強いグランアレグリアだが、実は遅い流れのレースでは、素早く好位を確保する自在性も見せている。前半の流れが遅い傾向の大阪杯だが、スッと好位の3、4番手あたりをキープできる可能性は高いのではないか。

グランアレグリアが連対を外した朝日杯フューチュリティステークスとNHKマイルカップに共通することは、勝負所で揉まれて馬の気持ちが鈍ったこと。大阪杯がスローに流れてスムーズに好位のポジションが取れるなら、たとえ初めての距離でも、この馬らしい決め手を発揮してくれるのではないだろうか。

高松宮記念とスプリンターズステークスの前半の追走ぶりを見ると、1200mは決してグランアレグリアにとって適距離ではないはず。マイルでの強さなら、内回りの2000mは守備範囲だろうし、やはりこの大阪杯は偉業を達成する大きなチャンス。コントレイルは強敵だが、応援込みで、今回の舞台なら難敵を降しての偉業達成があると信じたい。

ライタープロフィール
高槻とおる
グリーンチャンネルで結果分析、レース分析番組の構成作家を担当していた。現在は経営者取材などライターとして幅広く活躍中。ラップを長年研究しているが、実は馬券はパドック派。

《関連記事》
【大阪杯】注目2強はグランアレグリア優勢も距離延長が鍵 当日まで覚えておきたいデータ
【ダービー卿CT】やっぱり難解! 狙いたいのは東風S惜敗組 当日まで覚えておきたいデータ
「ディープインパクト産駒」「友道厩舎」に注目 東大HCが阪神芝2000mを徹底検証