桜花賞出走をかけたハイペース
同日アネモネSとともに桜花賞への最終切符をかけたトライアルレースは、今年も25頭がエントリー、オープン馬は8頭、1勝馬17頭が10頭分の抽選に挑んだ。除外馬7頭のうち、ベッラノーヴァとスマイルアモーレがアネモネSに再投票した。生涯一度きりの桜の舞台、その道のりは過酷だ。
フィリーズレビューで優先出走権を獲得したのは1着シゲルピンクルビー、2着ヨカヨカ、3着ミニーアイルの3頭。さあ、このなかに桜花賞で勝負になりそうな馬はいるだろうか。
レースの主導権を握ったポールネイロンは、後続のプレッシャーも厳しく、3コーナー手前まで鞍上が促し気味。コーナーでようやく息を入れる態勢をつくるも、前半600mは12.1-10.5-11.1で33.7。こういった急流は、フィリーズレビューでは発生しがちで、スローペースが多いチューリップ賞とは対照的である。4コーナーでは外からスティクスが進出し、急流に食らいつく馬と耐え切れない馬が交ざりあった。
桜の舞台を目指すカオスな状況からヨカヨカがいち早く飛び出した。阪神JFでも逃げて見せ場十分だった実力馬が、九州産馬初のGⅡ制覇(ゴールドイーグルのマイラーズC、サンケイ大阪杯はグレード制導入前)を目指して先頭へ。
シゲルピンクルビーは道中インに潜み、直線に向いて、ゴチャつきを交わしながら前に並ぶ馬たちの外へ出した。好発から馬群に入り、脚をため、直線で待たされる形になったことが幸いし、ヨカヨカを捕らえた。
半姉シゲルピンクダイヤは、古馬になりゲート入りを嫌がるなど気難しさを見せるが、3歳時はチューリップ賞、桜花賞連続2着の桜血統。姉と同じ渡辺薫彦調教師、和田竜二騎手のコンビで勝ったシゲルピンクルビーは、姉の雪辱を果たせるだろうか。
評価ポイントは後半600mにあり
勝ち時計1分20秒7はレースレコード。ハイペースが多く、上がりがかかり、1分22秒台の決着が多いレース。例えば20年は前半600m33.4-後半600m36.0で1分21秒0、18年が33.7-36.1、1分21秒5、17年33.5-35.5、1分21秒0。近年では17年が優秀な記録で2着レーヌミノルは桜花賞を勝った。
今年の後半600mは35.5(11.5-11.8-12.2)なので、前後半600mは33.7-35.5。ハイペースでも後半600mをまとめたといえる。2着ヨカヨカのベストは1400mだが、桜花賞でバッタリ止まらない可能性はあり、阪神JFより上位馬との差を詰めてきそうだ。そのヨカヨカを7番手から馬群をさばいて捕らえたシゲルピンクルビーも価値ある走りで、桜花賞で期待してもよさそうだ。
過去10年、前走1200m【0-0-0-33】というデータを覆した3着ミニーアイルだが、後方でためて大外一気、一発勝負で出走権利を狙った作戦がハマった印象。フィリーズレビューにありがちなパターンであり、桜花賞では上位2頭より評価を下げるべきだろう。
ヨカヨカと同じような位置にいた良血・アンブレラデートは4着。自己条件に戻れば、今回の走りを評価され、上位人気に推されそうだが、ヨカヨカとは最後の伸びに差があり、ハイペースを好位から粘ったと額面通りに受け取らない方がいい。
1番人気オパールムーンは9着。発馬後手から18番手追走。ハイペースとはいえ、先行勢に後半600mをまとめられては物理的に厳しかった。大外から最後の600m、最速34.5を記録したものの、ファンタジーSをピークに徐々に爆発力が劣り、全体的なパフォーマンスを落としている印象で、桜花賞での巻き返しは厳しいか。

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ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
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