中山芝1800m重賞攻略のコツ
春の中山は芝1800mの重賞が集中している。開幕週の中山記念やこの中山牝馬S、翌週のフラワーC、スプリングSの4レース。秋や冬の中山には組まれておらず、重賞攻略という意味では、2回中山は芝1800mの攻略がカギを握る。
このコースは正面直線の急坂が立ちあがる付近からスタート、最初のコーナーまでの直線距離が短い。坂でダッシュがつきにくく、コーナーが近いため、外枠に先行馬が入った場合など、先行争いが1、2コーナーまでもつれることもあり、中山記念のように思わぬ急流になる可能性もあるにはある。条件戦ではダッシュ力、つまり先行力の差が如実に出るため、隊列がすんなり決まり、芝2000m戦より先行馬が優位に立つ。
だが、重賞となれば各馬の力量は接近、先行力を備えた馬も多く、中山記念のように締まった流れになる。中山で行われた過去9年(2011年は代替阪神)で逃げ馬【2-0-0-7】、先行馬【1-4-1-25】。先行馬が勝ちきれず、中団から差した馬が【6-5-4-39】と優勢。発馬直後の先行争いに参加せず、一歩引いた馬に利がある。重賞と条件戦では傾向が異なることは多く、頭の切りかえを求められる。
8番人気以内は互角
それでは中山牝馬Sの傾向について中山で行われた過去9年のデータから考えてみる。
中山牝馬Sは昨年14番人気2着リュヌルージュなど伏兵が激走するイメージが強い。1番人気【1-2-2-4】勝率11.1%、複勝率55.6%はそんなイメージ通り。2番人気【0-2-0-7】も含め、頼りない。勝ち馬は8番人気以内から万遍なく出ており、このバラつき感が難易度を物語る。
牡馬よりも世代間の新陳代謝が早い牝馬らしく、8歳馬の出走はなく、7歳も【0-0-2-9】でそもそも出走数が少ない。
4歳【3-3-1-36】、5歳【5-4-3-33】、6歳【1-3-2-23】の3世代が主軸。6歳は11番人気3着(12年エオリアンハープ、19年アッフィラート)と穴も出すが、上位人気の好走が中心。穴っぽいのは単複回収値123の5歳だろう。
狙うなら愛知杯4着以下
ここからは各馬の戦歴が中山牝馬Sの傾向に合致するかどうか詳細にみていくことにする。まずは前走クラス別成績から。
まず気になる指標として、前走GⅠが【1-1-0-18】と冴えない点をあげる。勝率5%、複勝率10%とさっぱり。ちなみに中山記念の前走GⅠ組は【6-5-3-24】勝率15.8%、複勝率36.8%なので、天と地ほど差がある。ここが中山牝馬Sのポイントだろう。1番人気は16年2着ルージュバック1頭だが、2番人気が4頭出走して5、10、4、14着と壊滅状態。前走GⅠに出ていたからといって飛びつくのは早計だろう。リアアメリアはこのデータを覆せるだろうか。
一方、好走ゾーンは前走GⅢ【5-5-5-58】、オープン【2-1-1-17】あたりだろう。GⅡ【1-0-1-4】は今年該当する馬がいない。ではここからは前走GⅢ組についてさらに詳しくみていく。
愛知杯【3-2-3-27】、ターコイズS【1-1-1-6】、京都牝馬S【1-0-1-12】など同路線の牝馬限定重賞が並ぶが、牡馬相手の東京新聞杯【0-1-0-1】(シャドウディーヴァが該当)も見落とせない。
一方、デンコウアンジュとフェアリーポルカが該当する小倉大賞典は【0-0-0-7】。これは出走間隔の違いも影響したものだろう。前走が牡馬相手の芝1800m戦だったからといって手を出すべきではない。次は前走愛知杯組について。
愛知杯での着順と中山牝馬Sでの結果を調べると、愛知杯3着以内は【0-1-2-9】なので、悪くはないが、愛知杯4着【1-1-0-0】、6~9着【2-0-0-8】など勝ち馬は敗退組が出ている。ランブリングアレーよりアブレイズ、サトノダムゼルに妙味がありそうだ。
ターコイズSは2018年に重賞昇格したレースなので、サンプル数は少ないが、いまのところ、愛知杯とは反対に凡走馬の巻き返しより好走馬の連続好走がパターン。8着だったスイープセレリタスより東風Sと両にらみの4着シーズンズギフトだろうか。
もっともターコイズSの6~9着馬は出走ゼロなので、スイープセレリタスが好走する可能性はないとはいえない。
自在性あるドナアトラエンテ
ではここからは前走オープン特別組について詳しく分析していこう。
前走オープン特別組の距離別内訳をみると、1600m【1-1-0-11】と2000m【1-0-1-2】が好走馬を出している。2000m組はいないので、今年は1600m組だろうか。
オープン時代のターコイズSを除くと、好走は洛陽S【1-0-0-2】のみ。インターミッションが該当するニューイヤーSは【0-0-0-3】と数は多くないが、気になる数字だ。しかし、今年のニューイヤーSは勝ったミッキーブリランテが、次走阪急杯も2着。インターミッションは中山3勝のコース巧者だけに必要以上に軽視すべきではない。
残るはドナアトラエンテが当てはまる3勝クラス【0-2-1-9】。同馬は3勝クラス昇級後、レインボーS(中山芝1800m)、ユートピアS(東京芝1800m)連続2着、そして中山牝馬Sと同舞台の初富士Sを+14キロで勝利。前2戦は中団からの競馬だったが、前走は3番手追走から抜け出し、イメージを一新した。2、2、1着で3勝クラス突破は、まさに本格化気配。相手関係次第で先行、中団兼用の自在性が武器だ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
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