馬場状態がカギか
3月7日(日)に中山競馬場で行われる弥生賞ディープインパクト記念(GⅡ・芝2000m)。上位3頭に皐月賞への優先出走権が与えられる最重要ステップレースに、今年は10頭が顔をそろえた。
無傷の3連勝でホープフルSを制覇した2歳王者・ダノンザキッドの始動戦ということで注目が集まるが、クラシックへの切符を狙う他馬にとってもここが試金石の一戦。圧倒的な実績の同馬を逆転する逸材は果たして現れるのか。また、穴馬の台頭はあるのか。
今週もデータを踏まえて検討していこう。はじめに、過去10年の傾向を分析する。

ペース配分という点では例年平均からスローで流れているが、極端に上がりが速くなることはないというのが近年の傾向。近2年がいずれも重馬場だったように、この時期は湿った馬場になりやすいことがひとつの要因だろう。執筆時点では金曜から土曜にかけて多少の降雨が予報されており、良馬場でも先週ほどの高速馬場にはならないものと見越したい。
17年のマイスタイル(8番人気2着)を除いて逃げ残りの例はないものの、16年のマカヒキを除いて勝ち馬は4角5番手以内の位置を取っていた。ただし、19年や15年のように馬場が悪化した状況では差し・追い込み勢の台頭もしばしば見られている点には注意が必要だろう。
こればかりは馬場コンディションを精査しないとわからないが、差し当っては前目で運べそうな馬を上位に評価するのが無難と思われる。
レース経験がものを言う
この時期の3歳重賞を予想するうえで、未勝利戦や条件戦を勝ち上がってきた馬とハイレベルなレースを経験してきた馬のどちらを重視すべきかが非常に悩ましいところ。
何といっても短期間で大きく成長する3歳馬のレースであり、出走馬の「格」がどのくらい信用できるのかは重要な論点だろう。

過去10年の出走馬のうち、重賞に出走した経験のある馬は【6-9-10-41】で複回収率118%を記録しており、オッズ上では過小評価されやすい傾向にある。ハイレベルなレースで結果を残せなかった馬は「頭打ち」といった印象が強いためか、次走で変に軽視されやすいのかもしれない。そのようなタイプこそ今回は狙い目だろう。
朝日杯FSまたはホープフルS(ラジオNIKKEI杯を含む)に出走経験がある馬は過去10年で【2-5-7-21】という成績だが、昇格前のレースを除いて「GⅠレース」の出走経験がある馬に限ると【2-3-7-8】で複回収率133%を記録しており、安定感が際立つ。大舞台の経験が評価できるという意味で、やはり「勢い」よりも「格」が重要なレースのようだ。
ここは相手探し
人気が集中することが予想されるが、やはりダノンザキッドには逆らえない。好スタートから好位で脚を溜めて末脚を伸ばしたホープフルSのレース運びはスキがなく、抜け出す脚にはまだ余裕があったようにさえ映る。馬場が極端に悪化するといった不測の事態がない限りここで崩れる場面は想定しにくく、今回はこの馬の相手探しとみる。
対抗にはタイトルホルダー。ここ2戦はダノンザキッドの後塵を拝しているが、見せ場ありの4着だったホープフルをはじめ、このメンバーのなかでは明らかに実績上位。脚質的に前に行けるのは大きな強みであるし、展開次第では好勝負も十分に期待できる。
3番手にシュネルマイスター。前走のひいらぎ賞は直線で突き放して0秒5差の圧勝であり、重賞初挑戦で好走するだけの地力はある。血統的にマイルがベストという印象も受けるが、好位で折り合う技術に長けたルメール騎手が鞍上ということで2000mまでなら十分にカバーできるとみる。
4番手にはテンバガー。京成杯はスローペースで勝ち馬と逃げた2着馬に及ばずの3着。4角で外を回らされたうえに直線の前半で少しスムーズさを欠いたのを思えば十分評価できる内容だろう。上積みに期待したい一頭だ。
そして最後にタイムトゥヘヴンを押さえておく。前走の京成杯は楽な展開に持ち込めたぶん勝馬にあっさり交わされての2着はやや評価しにくいが、ホープフルS同日の未勝利戦で見せたパフォーマンスが発揮できれば圏内は十分にあるだろう。
▽弥生賞予想▽
◎ダノンザキッド
○タイトルホルダー
▲シュネルマイスター
△テンバガー
×タイムトゥヘヴン
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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