「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

武豊騎手は「前走2秒以上負けた馬」で複勝率61% 大敗直後の馬を狙える条件は

2021 1/20 11:00佐藤永記
前走2秒差以上で負けた馬の騎手別成績インフォグラフィックⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

着差は正直 「前走10馬身差以上負け」は連対率7%

3連単の登場を境に、競馬ファンはこれまでの予想の悩みとは別の悩みを増やすことになっただろう。それは「流す相手をどこまで絞るか」だ。単複や枠連、馬連の時代なら本命が来るか来ないかを考えるだけでOKだったが、3連系ともなるとそうはいかない。「相手抜けの恐怖」がまるで妖怪のように語り広げられている。

とはいえ広く流しすぎれば投資金額がかさみ、当たってもトリガミ、ハズレたら大損という結果が待っている。そこで今一度、データ予想の基本に立ち返って、消す馬の条件を整理し、その中で例外的に狙えるパターンも探してみよう。

データから読み取れる、「消せる馬」の条件について、昨年2020年の1勝クラス以上の全レースを参考に検証する。

まず明らかに結果に直結していたのは「前走着差」だ。当たり前といえば当たり前だが、同じ負けでも差がついていればいるほど次走も厳しいというわかりやすい結果である。

1勝クラス以上の前走着差別成績(2020年)ⒸSPAIA


2.0秒(約10馬身差)以上の着差で負けていると連対率は7%に。複勝率でも11.5%となっていた。「前走負けた馬」の平均連対率が14.1%、複勝率21.3%であることを考えると、2.0秒以上負けた場合、好走確率はほぼ半減していることになる。

この率を高いと考えるか低いと考えるかは人により意見が分かれるかもしれないが、少なくとも、“あえて前走2.0秒以上負けた馬を狙う”のであれば「それ相応の理由」が必要そうだ。

1レースに平均2頭はいる前走大敗馬

2020年の1勝クラス以上で前走2.0秒以上の大敗をした馬の出走はのべ3626頭だった。全体の14.0%に該当する数で、18頭立てなら2.5頭、10頭立てでも1.4頭いることになるので、結構な頻度でお目にかかることになる。そんな馬が複勝率11.5%。9頭に1頭は馬券になるということは、1つの競馬場でも1日に1回か2回は絡んでくる計算。そんなに薄い条件にも見えないかもしれない。

だが、その中でも馬券に絡んだ馬はやはり人気馬であることが多い。

前走大敗馬の人気別成績ⒸSPAIA


前走で2秒以上負けたにも関わらず1番人気に推された馬、の複勝率は67.6%と高い。2番人気で47.2%、3番人気で37.0%。前走大敗をした馬でもファンがわかる大敗理由があり、人気を得ていれば結果を出すということだろう。

以下、人気と連動して複勝率も下降していくが、よく見ると6~8番人気あたりの中位人気付近で複勝率が15%前後にこらえているところがある。「一部のファンがちょっと狙っている」あたりは、逆襲に期待できる理由を見定めることができれば、よい穴候補になりそうだ。

武豊騎手×大敗馬は狙い目

では前走大敗から巻き返す要因でわかりやすいデータはないか。調べてみると騎手に特徴が出てきた。

前走2秒差以上で負けた馬の騎手別成績インフォグラフィックⒸSPAIA


2020年に前走大敗馬での巻き返し1着を最多で数えたのは武豊騎手の7勝(7-2-2-7)。勝率38.9%、複勝率61.1%もトップだった。「前走2.0秒以上負けた馬に乗っていたらむしろ買い!」というレベルで結果を出している。前走大敗していても武豊なら関係ない、これがベテランの味だろう。

そしてもう一人、ベテランの味を出している騎手がいた。植野貴也騎手だ。障害を主戦とする騎手では最多の3勝(3-1-0-4)。植野騎手といえば一時期多くの馬の調教を任され、「ラスト・サムライ」ならぬ「ラスト・テキ」と呼んでもよいほど。障害初戦を植野騎手で走り、その後他の若手障害騎手へ乗り替わるという流れも存在した、隠れた名手である。

最後に覚えやすいパターンを紹介すると、「横山」騎手が良い。横山のうち誰でしょう? ではなく、全員だ。横山典弘騎手(3-3-0-10)、横山和生騎手(1-1-9-34)、横山武史騎手(3-3-3-28)と親子3人で巻き返し成績が優秀だ。馬を奮起させるベテラン騎手たちと、それを受け継ぐ息子騎手たちに巻き返しの穴を託してみるのは2021年でもオイシそうではないか。

<ライタープロフィール>
佐藤永記
20代を公営ギャンブラーとして過ごし、30歳から公営競技の解説配信活動を開始。競馬を始め多くの公営競技ファンに各競技の面白さや予想の楽しみを伝えている。現在はYoutubeで配信活動を続けながらライターとして公営競技の垣根を超えて各所で執筆中。

《関連記事》
【AJCC】「菊花賞組は未勝利」でアリストテレスは危険?超難解な一戦で覚えておきたいデータ
【東海S】「4枠が断トツの勝率30.8%」も意外な事実とは?インティ信頼で大丈夫?当日まで覚えておきたいデータ
昨年はキャリアハイ 福永祐一騎手の「買える条件・買えない条件」