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【ホープフルS】ダノンザキッド快勝も、2021年クラシック牡馬戦線は混戦模様に。その理由とは

2020 12/28 10:53勝木淳
2020年ホープフルSのレース展開ⒸSPAIA

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明暗わけた2戦2勝馬

ホープフルSがGⅠになった17年以降、2戦2勝という戦歴がキーポイントになった。17年は3頭2、4、14着、18年1頭1着、19年4頭1、2、3、5着。18年サートゥルナーリア、19年コントレイルと2年連続クラシックホースが誕生したため、黄金ローテとなりつつある。

その影響もあるだろうか、今年はオーソクレース、ヨーホーレイク、ランドオブリバティ、ダノンザキッド、アドマイヤザーゲと5頭もエントリーした。裏を返せば、この世代は好素材がそろっているともいえる。

結果は1、2、3、10、競走中止と明暗くっきり。19年同様に上位3頭を独占。2戦2勝はホープフルS必勝パターンと化した。

中山芝2000mはスタート直後の正面直線部分が長く、皐月賞のように多頭数では先行争いが激しくなることがある舞台。だが行きたい馬が不在、押し出される形でランドオブリバティがハナへ。1角でラチ沿いに入れず、大きく外を回ったあたりは4角逸走への伏線だったか。

2戦2勝ながらどのレースも外へ行く癖をみせていた同馬は最悪な形を露呈してしまった。3角から気難しいバニシングポイントが外に並びかけ、ラチ沿いに押し込められる形になったものの、同馬が4角で手応えを失うと、外の壁が消え、飛んで行ってしまった。GⅠで1000m通過1分1秒9というこれ以上ない展開に持ち込んでいただけに三浦皇成騎手、悔しさしか残らない。

勝ったダノンザキッドは東京スポーツ杯2歳Sの回顧で評価を保留にした馬。前半は緩い流れのなか馬群の外を追走したため行きたがる素振りを見せつつも、4角はランドオブリバティの逸走も手伝い、大きく外を回った。それでいてインをすくったオーソクレースを退けたあたりに能力の高さをみせた。

失速ラップは馬場やアクシデントの影響だったのか

中山競馬場の芝は冬らしく上がり時計を要する状態だったからなのか、前半を考えれば後半1000m1分0秒9は評価しにくい。後半1000mで11秒台が記録されたのは残り1000~800m区間の一度きり。ランドオブリバティにバニシングポイントが並びかけた地点でのものだった。

後半600mは12.0-12.2-12.6の失速ラップ。馬場状態にプラスして4角のアクシデントも影響したかもしれないので、コントレイルの昨年(12.0-11.9-12.5)と比較するのはいささかかわいそうな気もする。ただ年明けに怪物レベルが出現しない限り、2021年クラシックはここにそろった馬たちが中心になるだろう。ダノンザキッドを中心に考えつつも、2着以下からの巻き返しも十分頭に入れておきたい。

川田将雅騎手は安田隆行厩舎所属だった、忘れられがちなこの事実をレース後のインタビューで思い出した方も多かったのではないか。ダッシャーゴーゴーでの斜行降着、ダノンスマッシュでの惜敗など川田騎手の心中にあった引っ掛かりが外れたようだ。クラシックに向けて克服する課題も多く、奥手なジャスタウェイ産駒らしく馬体も未完成、今後の成長を楽しみにしたい。

2着オーソクレースはこの中山開催のポイント血統であるロベルトの血を持つ馬。馬場の悪い内を苦にすることなく、経済コースを通って抜け出した点は覚えておきたい。やや重の宝塚記念を勝った母マリアライトにロベルトの血、時計を要する馬場への適性は世代屈指であり、馬場状態次第で一発大仕事をする可能性は高い。こういった適性は忘れるべきではないだろう。

3着ヨーホーレイクは緩い流れを考えると、上位2頭とは前半の位置取りの差のみだろう。デビュー2戦は7、5頭立てで多頭数競馬はキャリア初。内枠から無理せず、プレッシャーを受けないように走らせた印象で、最後の中山の坂でしっかり伸びた点を評価したいものの、評価はまだまだ難しい。クロウキャニオン一族のなかでは切れ味がありそうで、クラシック向きではある。

2020年ホープフルSのレース展開ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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