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【有馬記念】大混戦も終わってみればクロノジェネシス。有馬記念の謎を解くカギとは

2020 12/28 11:20勝木淳
2020年有馬記念のレース展開ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

なぜ舞台は中山芝2500mなのか

1956(昭和31)年、当時の日本中央競馬会理事長・有馬頼寧氏が東京競馬場の日本ダービーに匹敵する目玉レースをと提案、プロ野球のオールスターを参考に出走馬をファン投票で決定するという方式が採用され、中山グランプリが誕生した。第1回中山グランプリが開催された直後に有馬頼寧氏が急逝、第2回中山グランプリからその名称を有馬記念と改めた。有馬記念がグランプリといわれるのは中山グランプリの名残りである。

第1回から続くファン投票、その第1位で有馬記念を勝ったのは64回中たった15頭。第65回有馬記念ファン投票1位クロノジェネシスは16頭目の1着馬となった。牝馬の春秋グランプリ制覇は19年リスグラシューに続く2年連続2頭目の記録だった。

有馬記念は1966(昭和41)年から今日まで条件は中山芝2500で変わらない。3角手前に置かれたスターティングゲート、コーナー6度、非根幹距離の2500m、これほど難解なコースでわざわざ行われるのはなぜだろうか。それは有馬記念がどの馬が強いかといった能力比べ以上にファンのための馬券妙味たっぷりなドリームレースだからではなかろうか。

2020年最高級の謎解き、その答えとは

2020年を象徴する3頭が不在だった第65回有馬記念は史上最大級の難易度だった。2020年最後にして最高級の謎解きに競馬ファンは挑んだわけだ。

この一週間は至福の時間だった。ペースはどうなる。キセキとバビットの位置関係はどうか、中山未経験のクロノジェネシスに適性はあるのか。フィエールマンの19年4着をどう評価するのか。3歳オーソリティ、バビットはデータ通り好走するのか、ドラマチック有馬にふさわしく引退レースのラッキーライラックではないか。無数の憶測がクリスマスムードの向こう側で飛び交った。これを幸せと呼ばずして競馬ファンは務まらない。競馬ファンは毎週末、懲りずに名探偵を気取るものだ。

その答え合わせが1着クロノジェネシス、2着サラキア、3着フィエールマンだった。的中された方、おめでとうございます。最難関の有馬記念で馬券が当たった方はスゴイです。

答えの正否を握ったのは展開だった。ここ4年の有馬記念は900m通過55秒を切る活気ある流れ、19年はアエロリットが飛ばして52秒3、こうなると中距離適性よりスタミナがいきる。対照的に55秒以上かかる静かな前半戦になると、中距離向きの切れ味が通用する。

ジャパンCを1000m57秒9で逃げたキセキとバビットのマッチアップ、自然とペースは上がると読むもの。ところがキセキが昨年と同じくゲートで遅れ、バビットの単騎逃げ。前半900mは55秒8(同日グッドラックHC56秒0)の静かな前半戦。残り1000m、バビットが12秒8→11秒8と一気にラップをあげ、緩い流れが一気に厳しい形になった。

残り800mからのロングスパートはクロノジェネシスがもっとも得意とする形。4角、馬群の大外を馬なりで回った地点で勝負はあった。宝塚記念1秒差圧勝が証明するように力のいる馬場でロングスパート合戦になれば敵う馬はいない。さて、これからどういった道を歩むだろうか。

5回中山は冬の開催だが、秋季番組の最後、かつ最終レースが早めに沈む西日の都合からダートで施行できないこともあり、下級条件の芝のレースも多く組まれる。4週間すべてAコース、馬場は自然と痛み、時計がかかった。

フィエールマンにとって悪条件が重なった。まして急坂が苦手で、坂を上がって再加速するといった特徴もあった。それでも3着に来たからルメール騎手は恐ろしい。こういった特性を頭に入れた上での早めスパートだった。坂下でクロノジェネシス以下にどれだけリードをとれるか。ルメール騎手はここに賭けた。サラキアに捕まったのはこういった作戦ゆえのもの。来年6歳なのでその去就は不明だが、古馬の牡馬ナンバーワン、その意地を見せた。

フィエールマンを捕らえて2着だったサラキアは11番人気。ラッキーライラックが注目を集めたが、こちらも引退レース。かつて道悪が苦手だった馬が府中牝馬Sで一変したあたりから生涯最高潮にのぼりつめたのだろうか。900m通過55秒以上になるとこういった中距離型の切れ味を武器にした馬が一発穴をあける。来年まで覚えておこう。前半控えて4角で外から仕掛ける、今年もっとも躍進した松山弘平騎手の手腕も光った。

4着ラッキーライラックはサラキアと同じくこれが引退レース。中距離型で馬場が悪い2500m戦はスタミナ的に厳しかったものの、最後に年下のカレンブーケドール、ワールドプレミアを封じた場面は胸が熱くなる。

有馬記念が終われば、次は東京大賞典があり、年が明ければすぐ金杯が待っている。週末名探偵のみなさん、まだまだ謎解きは尽きません。キラリと光る名推理で馬券的中、ひと儲けといきましょう。

2020年有馬記念のレース展開ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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