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【有馬記念】条件ピタリの大穴とは?2、3着の伏兵はステイゴールド系を狙え

2020 12/24 06:00緒方きしん
有馬記念の種牡馬系統別成績ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

近10年で3勝!有馬記念といえばステイゴールド

朝日杯FSはフランケル産駒グレナディアガーズが勝利。2着にはバゴ産駒ステラヴェローチェ、5着にはInvincible Spirit産駒ブルースピリットと、洋風な血統の好走が目立った。

勝ち馬グレナディアガーズの母はBCフィリー&メアスプリントと、実力は十分な血統だ。距離が延びてどうかという点はあるものの、スピード面では非常にポテンシャルを感じさせる1頭ではなかろうか。種牡馬としての活躍も見込める若駒として、来春の動向にも注目したい。

さて、今年の総決算・有馬記念。現役の三冠馬2頭は出走しないものの、十分に豪華なメンバーが揃った。注目される年末の大一番を、血統大好きライター・緒方きしんが診断する。

有馬記念といえば「ステイゴールド系が大活躍」というイメージのファンも多いのではないだろうか?それもそのはず、2011年〜2013年にはオルフェーヴル・ゴールドシップによるステイゴールド産駒の有馬記念三連覇が達成された。

同じ種牡馬による有馬記念3連覇というのは非常にインパクトのある戦績で、ここ10年で1番有馬記念を勝利しているのはステイゴールド系ということになる。戦績も[3-1-2-14]であり、勝率15%・複勝率30%は抜群の戦績。ここ10年で馬券圏内に6度食い込んでいるのは、単にたくさん出走しているからではなく、本当に「有馬で強い」からなのだろう。それを数字が裏付けている。

そんなステイゴールド系から今年はラッキーライラック・オーソリティといった実力派が出走するだけに、ファンの期待も大きいところだ。しかし、そんな彼らにとって逆風となってしまうデータもある。

意外に妙味がない?狙い方は一考

上述の通り、ステイゴールド系は、有馬記念で3勝をあげている。しかし改めて勝ち馬を振り返ると、オルフェーヴルとゴールドシップ。3勝とも1番人気なのである。

過去10年の有馬記念 種牡馬の系統別成績ⒸSPAIA


常識をひっくり返してきた血統だけに馬券的にも意外性を求めたくなるのが人情だが、単勝回収率は32%。有馬記念においては「超・堅実血統」というのが実情だ。馬券的な「オイシさ」という意味では少し物足りない回収率とも言える。

実際、単勝回収率32%は同じサンデー系のディープインパクト(47%)、ハーツクライ(39%)にも遅れをとっている。サンデー系で勝ち馬を探すというのであれば、データ上はディープ産駒のほうがいくらか見栄えがよい。

4番人気で制したジェンティルドンナ(父ディープインパクト)、2番人気で制したリスグラシュー(父ハーツクライ)と、決して圧倒的1番人気でなくとも勝ち馬を輩出してきたサンデー系だけに、少しだけ気にしたい傾向だ。

あくまでオッズと血統の関係性だが、圧倒的1番人気馬のステイゴールド系が不在なら、ディープ産駒から勝ち馬を探した方がオイシイ。今回ならワールドプレミア・ラヴズオンリーユーあたりが該当するだろう。

ただし、複勝となればイメージ通り、ステイゴールド系がディープ系・ハーツ系の回収率を上回る。有馬で真に狙うべきは、2,3着に食い込む伏兵のステイゴールド系か。

ナカヤマフェスタの再来!バビットの快走を狙う

今回の狙い目はバビット。父はステイゴールド産駒のナカヤマフェスタで、母の父はタイキシャトルという血統。

ナカヤマフェスタは、ゴールドシップやオルフェーヴルと比べるとやや物足りない種牡馬成績ではある。しかし数少ない産駒からは、万葉S(3000m)や札幌日経OP(2600m)を制覇しているヴォージュ、中山・日経賞(2500m)を制したガンコといったステイヤーが誕生している。

距離別の勝率を見ると、芝1400m以下が約2%、芝1400m〜1800mが約4%、芝1800m〜2200mが約6%と2%ずつ勝率があがる。2200mより長い芝レースでは約10%と、距離を延ばすたびに格段に成績をよくしている種牡馬なのである。

ナカヤマフェスタ自身も有馬記念出走こそないものの、中山のセントライト記念を制覇し菊花賞では12着、翌年には宝塚記念制覇・凱旋門賞2着という現役時代を過ごした馬。セントライト記念を制覇し菊花賞で10着に敗れたバビットと重なる部分がある。宝塚記念を8番人気で制覇した父の激走を、グランプリ・有馬記念で再現する可能性は十分にありそうだ。

一方、母父のタイキシャトルは歴史的名スプリンターであり、産駒にもメイショウボーラーやウインクリューガー、レッドスパーダといった快速馬が多く、種牡馬として人気を博した。それに応じるように、2006年に母父として最初の競走馬がデビューして以降、短距離馬が多く活躍。

母父として初めての重賞制覇は、2008年・ダンツキッスイのアーリントンC(1600m)。その後も函館2歳S勝ち馬ファインチョイスなど、快速自慢が活躍する。しかしその5年後、「母父タイキシャトル」のイメージをガラリと変える名馬が、暮れのラジオNIKKEI杯(2000m)を制覇。それがのちのダービー馬ワンアンドオンリーだった。以降、ポツポツと「中距離以上を狙う母父タイキシャトル」が登場してきている。

母父タイキシャトルの3歳馬では、バビットのほかにクリスタルブラックが京成杯を制覇している。こちらも中山の中距離レースで人気を覆す走りを披露したように、中山適性は高い。

バビットは血統的にも戦績的にも、中山という舞台は絶好。穴で一考する価値はあるだろう。また、オルフェーヴル産駒オセアグレイト、回避馬が出て出走枠に滑り込んだステイゴールド産駒クレッシェンドラヴあたりももちろん面白そう。

ステイゴールドファンにとっては、子孫による1〜3着独占も狙いたいところだろう。果たしてどのような結末が待っているのだろうか。目が離せない。

《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。レオダーバンの菊花賞をみて競馬の魅力に取り憑かれ、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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