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【有馬記念】引退の花道は自ら飾るもの 「前走GⅠで1番人気」「5歳以下」などを満たすのは?

2020 12/23 06:00門田光生
有馬記念の前走人気別成績ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

有馬記念も豪華です

ホープフルSの翌日には、ドリームレースの第65回有馬記念が行われる。ジャパンカップのメンバーがあまりにも豪華すぎたので、有馬記念の出走馬に影響が出るのではないかとの不安はあったが、これまで主役を演じてきた牝馬たちを筆頭に好メンバーが勢ぞろい。今年は香港国際競走に渡航しづらい状況だったとはいえ、改めてJRA所属馬の層の厚さを知った思いだ。

牝馬の引退レースといえば、無事繁殖に上げるため目イチに仕上げてこないこともあったようだが、それも過去の話。2014年にはジェンティルドンナ、そして昨年はリスグラシューが見事ラストランを飾っている。今年はラッキーライラックがこのレースで引退を表明しているが、偉大なる先輩たちに続けるか注目だ。またラッキーライラックだけでなく、クロノジェネシスやカレンブーケドール、ラヴズオンリーユーなどの実力牝馬も参戦。これだけ多くの牝馬に注目が集まる有馬記念も珍しいのではないか。

終わりよければすべてよし。最後ぐらいビシッと当てて、いい形で来年につなげたいもの。今回も過去10年のデータを基にして検証し、勝ち馬をあぶりだしていきたい。

フィエールマンに危険信号?

有馬記念出走馬の年齢ⒸSPAIA
有馬記念出走馬の所属・性別ⒸSPAIA


まずは年齢から。ここ10年で連対した20頭は全て3~5歳。馬券に絡んだ30頭に広げても、やはり29頭が3~5歳馬。6歳以上の馬には分が悪いレースとなっているようだ。また、美浦所属馬に限ると5歳以上の連対馬もいなくなる。美浦所属の5歳馬といえばフィエールマンとブラストワンピース。この2頭を切ることができれば、予想がぐっと楽になりそうだが、さて。

所属別だと栗東所属馬が17連対、美浦所属馬が3連対。出走頭数は栗東所属馬の方が3倍以上多いとはいえ、中心は栗東所属馬と考えるのが妥当だろう。性別では牡馬16連対に対して牝馬は4連対。牡馬有利に見えるが、こちらは勝率、連対率を比べると牝馬の方が上。ただし連対した4頭の牝馬はいずれも栗東所属で、美浦所属の牝馬は馬券に絡んでいない。美浦所属の牝馬カレンブーケドールには嫌なデータとなっている。

有馬記念出走馬の前走着順ⒸSPAIA
有有馬記念出走馬の前走人気ⒸSPAIA


続いて前走着順。ここ10年の勝ち馬は全て前走で4着以内だった。1着馬を探すならこれは必須といえる。前走5着以下で連対した馬は5頭いるが、美浦所属馬で前走5着以下だと【0-0-0-17】と大不振。これに当てはまるのは穴人気しそうなミッキースワローが該当。ミッキースワローはコース形態が合うので個人的には面白いと思っていたのだが……。

また、前走で1番人気に支持されていた馬は、2番人気以下に比べて抜けて数字がいい。昨年は4頭いたが、今年これに該当するのはラッキーライラックだけだ。

有馬記念出走馬の前走クラスⒸSPAIA
有馬記念出走馬の前走ⒸSPAIA


ところでこの有馬記念、本来なら前走海外組が好成績を残しているのだが、今年は世界中がこういった状況だったので全馬が国内を使った馬となっている。前走国内組の比較ではGIを使ってきた馬が圧倒的に強いデータが出ており、GⅢを使った馬からは連対馬は出ていない。

前走を個別に分析すると、まず目がいくのは菊花賞組。勝率4割、連対率5割と抜群の強さを誇っている。このレースから馬券に絡んだ7頭のうち5頭が菊花賞馬で、残る2頭は着外からの巻き返し。今年は菊花賞馬が参戦していないので精度は落ちるが、このレースを経由している馬に限っては前走着外でも大きな減点は必要ないかもしれない。

連対頭数が最も多い前哨戦はジャパンカップの7連対で、3着まで入れると13頭が馬券に絡んでいる。このうちジャパンカップを勝って参戦したのは2頭だけ(1着降着のブエナビスタを含めると3頭)で、半分以上が着外(4着以下)からの巻き返し。うち2頭がふたケタ着順の馬で、ジャパンカップ組も前走着順はあまり関係ないようだ。

また、因果関係は分からないが、ジャパンカップから連対した7頭のうち5頭が、また3着以内13頭のうち8頭が3月生まれの馬だった。偶然にしても無視できない確率の高さだと思うが、今回のジャパンカップ組で3月生まれは何とゼロ。1頭ぐらいいても不思議ではないのだが……。

有馬記念出走馬の種牡馬成績


最後に有馬記念での種牡馬成績を。最多勝利はステイゴールド産駒の3勝。クレッシェンドラヴがこれに該当。また、孫(オルフェーヴル、ナカヤマフェスタ産駒)も参戦している。後継種牡馬の2頭とも産駒が有馬記念を走るのは初めてだが、ともにステイゴールドの特徴を引き継いでいる種牡馬に思えるので、きっとこの舞台にも適性があるはずだ。

逆にディープインパクト産駒は2勝で勝率が10%を切っている。ほかのGIの成績を考えると、有馬記念は苦手なレースと考えていいだろう。

心も懐も温かくなりますように

有馬記念の勝ち馬にふさわしいの(1)3~5歳馬(美浦所属馬は3~4歳)(2)栗東所属(3)前走4着以内(4)前走1番人気(5)前走GI(6)前走菊花賞、次点でジャパンカップ(7)父がステイゴールド系、の条件を満たす馬となる。特に強いデータは(1)と(3)。この2つはクリアおきたいところ。

(1)と(3)を満たし、かつ最も減点が少ないのはラッキーライラック。(6)以外は全てクリアして堂々のトップ通過だ。冒頭でも書いたように、牝馬のジェンティルドンナやリスグラシューが引退を飾ったレース。アーモンドアイもジャパンカップで見事引退レースを勝利しており、名牝が最終戦を勝つ流れができている。さらに父オルフェーヴルが有馬記念を二度勝っており、自身も大阪杯を勝っていて内回りコースへの適性も証明済み。

問題は【0-1-0-14】と結果が出ていないエリザベス女王杯組ということだが、これまでエリザベス女王杯から挑戦した馬の最高人気はモズカッチャン(2018年、8着)の4番人気で、大半はふたケタ人気馬。同馬のように主力級の人気を背負って走るのは初めて。また、唯一の連対馬である2017年のクイーンズリングだが、引退レースと表明していたこの有馬記念で激走。やはり有馬記念は、それまで競馬を盛り上げてきた馬が報われるレース。今年も感動のフィナーレが待っているはずだ。

続いてはバビット(減点3,4)。ほぼ必須である(3)を満たしていないのは痛いが、減点はそれと(4)だけ。未勝利から4連勝、さらにセントライト記念で好走→菊花賞大敗→そして有馬記念というのは2014年の2着馬トゥザワールドが歩んだ道とそっくり。一発あるならこれだ。

ヒモ候補はカレンブーケドール(減点2,4,7)、クロノジェネシス(減点4,6,7)、サラキア(減点4,6,7)、モズベッロ(減点4,6,7)、ユーキャンスマイル(減点3,4,7)、ラヴズオンリーユー(減点4,6,7)、ワールドプレミア(減点3,4,7)。

この中でほぼ必須の(3)で引っかかっている馬は厳しいとみて、カレンブーケドール、クロノジェネシス、サラキア、モズベッロ、ラヴズオンリーユーに注目。カレンブーケドールはここ10年で連対例がない美浦所属の牝馬。あのアーモンドアイですらその壁を破れなかっただけに厳しいかもしれない。

クロノジェネシスは【0-2-0-12】と苦戦傾向の天皇賞・秋組だが、2頭の2着馬は2018年、2019年に記録したもの。2年連続で連対ならトレンドの波は来ている。先日、姉が香港で快挙達成し血統的にも勢いありだ。

サラキアはさらに確率が落ちるエリザベス女王杯組で、父がこのレースを得意としていないディープインパクト。相手候補の中ではちょっと落ちる。モズベッロの問題は宝塚記念以来ということ。ここ10年の連対馬では2013年オルフェーヴルの凱旋門賞以来というのが最長。近年は久々でGI勝ちが珍しくないとはいえ、この馬の場合は当初からここが目標だったかは微妙。これもトーンは上がらない。ラヴズオンリーユーはサラキアと全く同様の理由となる。

クロノジェネシス以外はちょっと頼りないので、ヒモ候補に挙げた中から復活枠でワールドプレミアを。昨年の菊花賞馬で有馬記念3着馬。ここ10年、菊花賞を勝った年に有馬記念で馬券に絡み、翌年以降の有馬記念で再度馬券に絡んだのはオルフェーヴル、ゴールドシップ、キタサンブラックと3頭もいる。やはり菊花賞馬は強いのだ。

あまり手を広げても仕方がないので、今年の有馬記念はラッキーライラック、クロノジェネシス、そしてワールドプレミアの3頭で勝負したい。

◎ラッキーライラック
〇クロノジェネシス
▲ワールドプレミア

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
有馬記念は1年の総決算ということで自分の予想を振り返ってみると、サンスポさんで担当させて頂いている金沢競馬で本社パーフェクトを達成して、ひとつの目標をクリアしました。麻雀でいうと九蓮宝燈ぐらいの確率?(上がると死ぬ、という迷信があるぐらい成立しづらい役)。身の回りに何も起こっていないところをみると、どうやら九蓮宝燈よりは達成しやすいようです(笑)。


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