新戦力が存在感
来年の東京五輪で2大会連続の団体金メダルを目指す体操ニッポン。大黒柱として日本を支えてきた30歳の内村航平(リンガーハット)や23歳の白井健三(日体大大学院)が代表を逃した世界選手権は9日、ドイツのシュツットガルトで男子団体総合決勝が行われ、新戦力が存在感をアピールして銅メダルを死守した。
日本は谷川翔(順大)谷川航、萱和磨(ともにセントラルスポーツ)神本雄也(コナミスポーツ)橋本大輝(千葉・市船橋高)の若手主体のメンバー構成で挑み、6種目合計258.159点で2年連続の3位。9大会連続で表彰台に立ち、2015年大会以来の世界一には届かなかったが、着実な進歩を示した。
昨年2位のロシアは合計261.726点で旧ソ連時代の1991年大会以来28年ぶり9度目の頂点に立ち、昨年優勝の中国は0.997点差で2位。8チームで争う決勝は各種目でメンバー5人のうち3人が演技。全員の得点を6種目で合計して順位を決めた。

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五輪V2ピンチ?
2016年リオデジャネイロ五輪の団体総合金メダルメンバーが全員代表落ちし、最年長でも神本の25歳と若いニッポンは世代交代の過渡期で伸び盛りのチーム。前半3種目をトップで折り返し、前回から2位との点差も縮めた。6種目中5種目で重圧のかかる1番手を務め、最終種目の床運動では最後を任された「ミスター・ノーミス」22歳の萱が安定した演技でチームの流れをつくった。
初代表で高校生の18歳、橋本も予選から大活躍。決勝でも跳馬で鮮やかな「ロペス」で14.900点をたたき出すなど4種目に臨み、持ち味の美しい演技で世界にアピール。予選でミスが相次いだ20歳の谷川翔も最初のあん馬でチーム最高点の14.533点を出し、個人総合で全日本選手権2連覇の意地を示した。
だが得点源として期待された23歳の谷川航が開幕直前に左足首を捻挫し、決勝で2種目しか演技できない誤算もあった。技の難度を示すDスコア(演技価値点)でロシア、中国、日本の上位3チームはほぼ互角。総得点も昨年の中国の優勝スコアを上回った。日本は後半の平行棒や床運動で姿勢のぶれなど細かいミスが続き、終わってみれば完成度に差が出た形だ。
ロシアとの差は約3.5点、最後にミスが出て2位に終わった中国とは約2.5点。東京五輪でのV2を見据え、技の出来栄えを反映するEスコア(実施点)で先に行く「2強」の背中はまだ遠いが、視界に捉えつつある。
秘密兵器は北園丈琉
日本の代名詞でもある「美しい体操」で技の細部までこだわる姿勢に変わりない。この1年は内村らの穴を埋めようと急ピッチで大技のDスコアを上げ、ロシア、中国と比べても遜色なくなってきたのは大きい。あとは技の出来栄えを示すEスコアでどこまで差を埋めるか。
今回、けがで万全でなかった谷川兄弟をはじめ、史上最多個人総合6連覇の実績を誇る内村や世界大会6年連続出場の「ひねり王子」白井らが切磋琢磨すれば、さらにチームは活性化するだろう。そして昨年の夏季ユース五輪で5冠の快挙を達成した高校2年の北園丈琉(大阪・清風高)も秘密兵器となる存在だ。
「美しい体操」で金メダルに輝くには引き続き技の難度向上に努め、さらに完成度を高めていくしかない。体操ニッポンに再びベテラン内村らが割って入るのか。あるいはさらに若い力が台頭してくるのか。東京五輪は今回の世界選手権より1人少ない4人の団体枠を巡る激しい競争となる。