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トランポリンの森ひかるが初の世界一、東京五輪のニューヒロインへ

2019 12/9 06:00田村崇仁
森ひかるⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

20歳のエースが世界選手権優勝

来年の東京五輪へ天真爛漫な笑顔が魅力のニューヒロインが現れた。空中に高く跳び上がって美しさや技の難易度を競う採点競技のトランポリンで20歳のエース、森ひかる(金沢学院大ク)が12月1日、世界選手権の個人決勝で55.860点をマークし、五輪種目で男女を通じて日本勢初の世界一に輝いた。

トランポリン世界選手権成績ⒸSPAIA

「空中の芸術」とも呼ばれる体操の1種目。会場は東京五輪テスト大会を兼ねて行われた東京・有明体操競技場でいわば「前哨戦」だった。最高到達点はビル3階に相当する8メートルといわれる高さまで跳び上がり、縦方向に3回宙返りする大技「トリフィス」を2回決めて得点が表示されると、跳び上がって無邪気に喜びを爆発させた。その天性の才能と実力は世界からも称賛の声が上がっている。

起源はサーカス芸人、競技時間20秒

トランポリンの起源は宙返りパフォーマンスが得意だった中世ヨーロッパのサーカス芸人の名前といわれる。米軍のパイロット養成器具としても活用され、戦後にレクリエーションとして全米から世界に広がり、五輪は2000年シドニー大会から初めて採用された。

競技時間わずか20秒。回転技やひねり技を次々と繰り出し、10回のジャンプで争う。競技用のトランポリンは縦4.28、横2.14メートルの大きさ。選手が弾む布の部分は「ベッド」と呼ばれ、高く跳べるように周囲にスプリング器具が付いている仕組みだ。

採点は技の難度や跳躍時間など4項目

採点は空中の姿勢や技の出来栄えを見る「演技点」、回転とひねりの数で算出する「難度点」、滞空時間や高さを計測する「跳躍時間点」、さらにどれだけトランポリンの中心で演技を行うかを評価する「移動点」の4項目を加算し、合計得点で順位を競う。

跳躍した分、体重の10数倍の負荷が掛かるとされる着地に失敗したら減点となる。1回の演技は200メートル走を全力で走るのと一緒とも言われている。

14歳で全日本選手権制覇した天才少女

一躍時の人となり、東京五輪代表に決まった森の競技との出会いは4歳。近所のスーパーの屋上にあったトランポリンの遊具だった。2011年世界選手権11・12歳の部で優勝すると、14歳で2013年全日本選手権を史上最年少制覇した「天才少女」の空中を支配する実力は本物だ。

中学時代から3回宙返りを2度組み込む高難度の構成をこなし、都立足立新田高1年の秋、石川県への「トランポリン留学」を決意。強豪・金沢学院大の付属校である金沢学院東高(現金沢学院高)に編入し、トランポリンが正式採用されたシドニー五輪で6位入賞の丸山章子監督に師事した。

金沢学院高では高校総体で2年連続3冠を達成。2016年リオデジャネイロ五輪は年齢制限で出場できなかったが、東京こそが悲願の舞台だ。2018年ジャカルタ・アジア大会では銀メダルと着実に実績を積んできた。

勝負ネイルと歌舞伎のレオタード

競技を離れても明るさ満点の森はネイルが趣味で、指先の輝きに「勝負ネイル」の決意を込めて集中力を高めている。世界選手権のレオタードは歌舞伎をイメージ。地元の五輪でも一気に人気者になる可能性が高まってきた。

トランポリンは2016年リオデジャネイロ五輪で男子の棟朝銀河が4位と健闘。メダルまであと一歩に迫った。

今回の世界選手権では森だけでなく、女子の土井畑知里(三菱電機)も銀メダルを獲得して日本女子は非五輪種目の団体とシンクロナイズドを合わせて3個目の金メダルに輝いた。男子は堺亮介(星稜ク)が日本勢最上位の5位となり、初の五輪切符を獲得。高く、美しく―。体操の伝統国でもある日本で目が離せない種目がまた一つ増えた。

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