超高額賞金の新ツアーに対抗、PGAの顔に
分裂危機の激動期にある米男子ゴルフの今季最終戦、ツアー選手権で33歳のロリー・マキロイ(英国)が2016年、2019年以来、史上最多となる3度目の年間王者に輝き、名実ともにPGAツアーの顔として存在価値を改めて証明した。
8月28日、アトランタのイーストレークGC(パー70)で第3ラウンドの残りと最終ラウンドが行われ、マキロイは通算21アンダーで6打差から逆転優勝。今季3勝で米ツアー通算22勝目を挙げ、優勝ボーナス1800万ドル(約24億8400万円)を獲得した。1打差2位にスコッティ・シェフラー(米国)と任成宰(韓国)が入った。
ここのところ、ゴルフ界はサウジアラビア政府系ファンドが支援する超高額賞金の新ツアー「LIV招待」がトップ選手を次々と引き抜き、新興勢力としてPGAツアーに対抗。「ロリー!」の声援が響く中、伝統と歴史を誇る米ツアーを支援する立場を強調してきたマキロイは、欧米メディアに「プロゴルフ界は今、確かに苦しい時代にある。それでも私はこのツアーの価値を信じているし、ここには最高の競争があり、最高の選手たちがそろっている。この優勝を誇りに思う」とコメントした。
平均飛距離2位、平均ストローク1位の底力
今季のデータを見ても、マキロイの底力と才能が証明されている。欧米では小柄な身長175センチの体でもティーショットの平均飛距離は2位の321.30ヤード。体幹がぶれない鋭いスイングで、平均ストローク数は68.67で堂々の1位だ。平均バーディー数は4位の4.53と相変わらず爆発力も秘めている。
2歳で40ヤードのショットを放った逸話を持ち、アマチュアで数々のタイトルを獲得して2007年にプロ転向。そして最大のターゲットとなるメジャー4大会全制覇の「生涯グランドスラム」は、マスターズ・トーナメントのタイトルを残すのみで王手をかける。
優勝トロフィーはお金以上に価値がある
ゴルフの専門チャンネルによると「お金はお金だ」とマキロイは言い切る。「私たちはプロゴルファーであり、生活のためにゴルフをしている。お金もその一部だ。しかし、私のキャリアはこの時点で、これまで成し遂げた勝利と道のり、感情にお金以上の価値がある」と優勝トロフィーを勝ち取るプライドを強調した。
2021年に開催された東京五輪ではアイルランド代表として出場し、銅メダルをかけて松山英樹ら7人によるプレーオフを戦ったが、4位に終わった。それでも炎天下で賞金ではなく誇りを懸けてプレーした経験は、元世界ランキング1位の胸に深く刻み込まれた。
超高額賞金の新ツアーに反対するマキロイはPGAツアーの将来も危惧する。それでも自らの研ぎ澄まされたプレーで最高峰のツアーに威信を守りたいとの思いは強い。来季のPGAツアーは9月15日に開幕。その心意気で再び頂点を目指す。
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