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稲見萌寧と西郷真央、両者異なるスイングの特徴とは 一般ゴルファーが意識すべきスイングはどちらか

2022 3/24 11:00akira yasu
稲見萌寧(左)と西郷真央,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

目標は永久シード

3月、日本女子ツアーが開幕した。例年通り開幕戦となったダイキンオーキッドレディスで優勝したのは西郷真央。悲願の初優勝となった。さらにその後の2試合でも2位タイ、10位タイ。昨季は未勝利ながらも賞金ランキング4位に入ったが、今季も常に上位に顔を出す安定感抜群のプレーを見せてくれそうだ。

昨季賞金女王で、東京オリンピックでは銀メダルを獲得した稲見萌寧は、順調なスタートとはならなかった。開幕戦が10位タイで2戦目が32位タイ。3戦目は初日終了後、体調不良を理由に棄権となった。

稲見は昨季も腰痛で棄権した試合があった。まずは体のコンディションを整えることが最優先。そのために、稲見は今季から新たにトレーナーをチームに招き入れた。体調が戻れば、再び稲見らしいプレーが見られるだろう。

今季もしのぎを削りあうであろう西郷と稲見の目標は、ともに30勝で得られる永久シード。米ツアー挑戦の目標を口にする選手もいる中、日本ツアーで圧倒的な強さを発揮することを目指しているのだ。そんな共通の目標を持つ二人だが、スイングのタイプは異なる。

稲見萌寧のスイングの特徴

稲見は完璧主義者。完璧なスイングやプレーを目指して長時間の練習を自身に課している。そういった姿勢が結果に表れており、昨季はパーオン率が1位、トータルドライビング順位とパーオン率順位を合算したボールストライキングも1位だ。

ショット練習では片手打ちの練習から始めるなど、手と体の同調について細かな確認を怠らない。試合でも手と体の同調の確認を徹底。打つ前の素振りでは、バックスイングからダウンスイング、そしてフォロースルーで、手と体とクラブの同調意識を高めている。

手と体の同調意識が高いので、常に手が体の正面をキープ。もちろん、ダウンスイングではクラブヘッドを加速させるために、下半身、上半身、腕、クラブと、時間差を作ってスイングしているため「同調」には見えない。ただ、これは結果的にそうなっているだけで、スイング中は終始、同調を大切にしている。

また、両膝は適度に伸ばしながら使う。バックスイングでは右膝を軽く伸ばすことで体を右に回しやすくし、ダウンスイングからフォロースルーでは、左膝を軽く伸ばすことで体を左に回しやすくしている。

西郷真央のスイングの特徴

西郷のショットの精度は稲見に負けないぐらい高い。昨季はトータルドライビングが1位、ボールストライキングも稲見とともに1位だった。

バックスイングもフォロースルーも体全体をコマのように回転させる稲見に対して、西郷はバックスイングで下半身をあまり回さない。右足に体重を乗せながらも右膝の角度をキープ。下半身との捻転差を作るように上半身をねじってクラブを上げていく。

ダウンスイングでは下半身リード。両膝とも伸ばしきらずに左サイドを切れよくターンさせている。左足に強く踏み込みながらも、フィニッシュでも左足が不動でずれない。

西郷はジャンボ軍団だ。師事しているジャンボ尾崎は門下生にクラブを強く振る大切さを説いている。西郷に対しても同様で、尾崎手作りの素振り棒を贈り、スイング強化を促している。その素振り棒でのトレーニングの成果もあり、元々強かった西郷のダウンスイングからフォロースルーへの振り抜きはさらに強化され、ジャンボイズムを感じさせる。

一般ゴルファーが意識するべきスイング

スイングのタイプが異なる両者。稲見は膝を伸ばしながらその場で回転する「回転系」、西郷は膝を曲げて力をためる「捻転系」だ。

両方を比較した場合、優劣をつけることはできない。人それぞれ合うスイングタイプがあるし、どのスイングタイプにもメリットとデメリットがある。

ただ、一般ゴルファーが意識するとしたら、稲見のスイングの方が良いかもしれない。膝を適度に伸ばしながらスイングした方が、体への負荷を抑えてスイングバランスを崩さずにスイングしやすい。無理に膝の角度をキープしようとすると、バックスイングで腰が右に流れたり、ダウンスイングで背骨が右に大きく傾きやすい。

意識して取り入れるとなると難易度が高い動きになるが、飛距離アップやスライス抑制を目指すゴルファーは、稲見のような右膝の動きを意識してみるときっかけをつかめるかもしれない。胸椎の柔軟性や体幹の強さが高い水準であれば、西郷のスイングを意識してみても良いだろう。

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