トラブルは起こるもの
ゴルフにトラブルはつきものだ。その時にどういう判断を下し対処するかはスコアに大きく影響する。林の中に入った時、グリーン方向に動かせない障害物がある時、木の根元やバンカーのへりにボールが止まっている時など、想定とは大きく異なるマネージメントを強いられる。
狭過ぎるスペースを狙ったり、イレギュラーな状況から高度過ぎるテクニックを使おうとせず無理をしないということが前提となるが、無理をしないだけでなく、もう一歩踏み込んだコースマネージメントをすることでより良いスコアを出しやすくなる。
次のショットのことを考える
例えば、林の中からのショット。グリーン方向にスペースはあるものの、無理をしないという基本に沿い、より広い横のスペースを狙うことを選択したとする。ここで、林の中から脱出した後のショットのことを考えたい。次のショットはどこから打つとグリーンやピンを狙いやすくなるのか、という点だ。
フェアウェイに出すにしても、フェアウェイの左と右では、次のショットの打ちやすさや狙いやすさが大きく異なる場合がある。グリーン上の右サイドにピンが切ってあり、グリーン右手前に池がある場合であれば、フェアウェイ左サイドからショットした方が基本的には狙いやすい。林の中から脱出するショットでは、30ヤード飛ばして脱出するのと、60ヤード飛ばして脱出するのとでは、次のショットの狙いやすさが異なる場合があるのだ。
バンカーのアゴの近くにボールが止まった場合は、脱出するだけでなく、どの方向にどれだけの距離を出すと、次のショットでグリーンやピンを狙いやすくなるか考えたい。場合によっては、ピンまでの距離が遠くなる地点を狙うことが最善の選択になる場合もある。
ダイキンオーキッドレディス 西郷真央の最終日18番ホール
3月に入り日本女子ゴルフツアーが開幕。昨季、未勝利ながら賞金ランキング4位の西郷真央が、開幕戦のダイキンオーキッドレディスでツアー初優勝を飾った。
首位で迎えた最終日、パー5の18番ホール。2オンを狙ったショットはグリーン左手前のバンカーにつかまった。そして無情にもボールはグリーンに近いサイドのアゴに近いところに止まった。アゴに当たってバンカーから出ないというリスクを承知で、グリーンを狙うという選択肢もあった。
だが、西郷はリスクを避けグリーン左奥を狙い、4打目のアプローチ勝負を選択した。そして、マネージメント通りにグリーン左奥にボールを運び、4打目のアプローチショットを見事に約30センチにつけてパーをセーブ。2位を1打差で振り切った。
この時の4打目のアプローチショットは簡単ではなかった。グリーン入り口からピンまでの距離は短く、やや下り。フェースを開いてボールを高く上げる必要があった。それをプレッシャーがかかる中、成功させた。
ただ、ウィニングショットとするべきは4打目ではなく、3打目のバンカーショットだ。バンカーからグリーン左横に出すだけではなく、左奥の地点までボールを飛ばした。グリーンの傾斜的には、バンカーから出てすぐのグリーン左横の方が、4打目は易しかったが、左横はラフが長く、狙い通りの距離を打つことが難しいライ。左奥の方がラフが短かく、ライはこちらの方が易しかった。
グリーン左横と左奥。グリーンの傾斜と、ライの難易度を天秤にかけた結果、左奥を選択。適切な判断と、バンカーから狙い通りの距離を出すテクニック。優勝を手繰り寄せる大きな一打となった。
フルショット以外の練習を
トラブル時には、飛距離だけでなく球の高さも考慮する必要がある。どのクラブでどれぐらいの距離を打った時にどれぐらいの高さになるのか、といったことを把握しておくと適切な対処をしやすくなる。
練習場では各番手のフルショットだけでなく、ハーフショットなど小さめの振り幅のショットも練習しておくと良い。ミドルアイアンやウッド系のクラブでの小さめの振り幅の練習は意欲的にしにくいかもしれないが、コースラウンドで役に立つことがあるはず。スイング作りにも効果があるので一石二鳥だ。
また、バンカーから難なく脱出できるのであれば、高さや距離を調整する技術獲得を目指すことで、コースマネージメントの幅が広がるだろう。
地味ながらも意味ある一打を積み重ねて、好スコアを狙いたいところだ。
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