稲見萌寧と古江彩佳の一騎打ち
最終戦ツアーチャンピオンシップリコーカップが終了し、2020年6月のアース・モンダミンカップで開幕した今季の日本女子ツアー全日程が終了した。
今季も昨季同様、最終戦までもつれこんだ賞金女王争いは、稲見萌寧がトップでゴール。古江彩佳が10月の富士通レディスから4戦3勝して、一時、約400万円差まで猛追してきたが振り切り、2007年の上田桃子に次ぐ史上2番目の若さでの賞金女王となった。
2020年を除いた今年に限れば出場34試合で8勝、トップテンが21回。勝率が約24%でトップテン率が約62%。年間を通してほぼ毎試合優勝を争っているような強さだった。
圧倒的ショット力
今季の稲見のゴルフを支えたのがショット力だ。昨季に続きパーオン率が1位で、昨季6位だったボールストライキング(※)も1位。平均パット数(パーオンホール)も1位だが、これはショットの精度の高さにより、他の選手よりカップまで近い距離のファーストパットになる傾向があるからだろう。
※ボールストライキング:トータルドライビング順位と、パーオン率順位を合算した値。
トータルドライビング:ドライビングディスタンス順位とフェアウェイキープ率順位を合算した値。
日本女子ツアーナンバーワンのショットの精度を出せている理由の一つが、豊富な練習量だ。それもあってか、今季終盤は腰痛に悩まされた。10月のマスターズGCレディースでは、腰痛をおして出場したものの、最終日のスタート前にプレーできないほどに悪化して棄権。次の三菱電気レディスを欠場することになった。
しかし、そこからの立て直しが早かった。復帰初戦のTOTOジャパンクラシックで2位。翌週の伊藤園レディスでは2位に9打差で優勝した。痛み止めを飲みながらのプレーで「スイングに違和感がある」と語りながらの圧勝劇。
本調子でなくてもスコアをまとめる方法を、今季つかんだのかもしれない。
永久シード獲得か米ツアー挑戦か
銀メダルを獲得した東京オリンピックでは、フェアウェイキープ率が2位に10%以上の差をつける85.71%を記録。ショットの精度が世界基準であることを証明した。
実績を積み重ねたことで得た自信が、今後米ツアー挑戦へと気持ちを向かわせる可能性は大いにあるだろう。ただ、現時点での本人の目標は、日本ツアー30勝で永久シード獲得のようだ。
米ツアー挑戦の場合は普通、永久シードの目標を封印することになる。しかし、稲見が来季以降も今年のペースで勝利を重ねた場合、あと3年で永久シードを獲得できる。今年以上のペースであればあと2年だ。24歳か25歳まで絶対的な女王であり続け、永久シードを獲得してから米ツアー挑戦。そんなストーリーも描ける強さが今年の稲見にはあった。
2000年代前半に絶対的女王として君臨していたのが不動裕理。2000年から6年連続賞金女王で、中でも2003年の強さは際立っており、24戦10勝、トップテン20回。勝率が約42%でトップテン率が約83%。「出場した試合ほぼ勝っている」と感じるほどの強さだった。
次々に新しい選手が出てくる女子ゴルフも面白いが、絶対的な女王が君臨している女子ゴルフも面白い。来季の稲見には「出場すれば勝つ」という印象を与えられるほどの強さで、女子ゴルフ界をリードしていってもらいたい。
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